若手作家が集う異色の展示が11月26日よりスタート。「眺めのよい部屋」が映し出す夢の国の光景とは。

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「眺めのよい部屋」とはいわずもがな国立近代美術館にある同名の部屋からつけられたタイトル。美術館の一角にある本当に眺めのよいその部屋から映し出される光景はとても奇妙で、時間の静止したよう見えるその漠とした様子は、どこかこの日本そのものを象徴しているような感じを受けます。

本展はその「眺めのよい部屋」を、芸術鑑賞という行為への問いかけとして、展示の形で再構成することを意図するものです。そのため、本展では展示会場自体には入場することができません。鑑賞者は展示室に通ずる1つの窓から見える光景を、鑑賞するという形となります。

参加作家は同世代の若手たち。その共通点は、消費されるためのイメージが氾濫するGUIネイティヴの時代にあって、改めてイメージを作り出すことを問い直すというアティチュードにあると思います。

そこで導入された方法が「俯瞰」という鑑賞方法なわけですが、おそらくそれは作品自体ではなく、作品を含んだ空間、それがある風景そのものを作品化しようという試みであると想像します。それが、この日本の風景自体を作品として描き出す本家の「眺めのよい部屋」(実際にはただの休憩室ですが)に繋がってくるわけです。しかしそれがはたして本当に既存の芸術鑑賞の形式を更新することになるのか、この段階では未知数だと感じます。

メディアの進化は私たち自身のものの見方自体を変化させてきました。けれども今美術という空間の「遅さ」と、デジタルな領域におけるテクノロジーの進化の「速さ」の間にある隔たりも大きくなりつつある気がします。また一方で、その差異によって引き起こされる衝突の結果、火花のように新たな作品や概念が生み出されつつあるともいえるでしょう。

それがふたたび長いスパンを持った歴史の目で問いなされるとき、どのような姿に見えるのでしょうか。美術を志す若者たちの目を通して、それを確かめてみたいという気がしました。

出展作家/森田貴之、鷲尾怜、森野大地、石毛健太、布施琳太郎
企画/森田貴之、メインビジュアル/hakke
日時/11月26日(土) – 12月3日(土) ※日曜日は休み AM11:00~PM19:00
最終日12月3日17:00からレセプションを行う予定です。
会場/ターナーギャラリー 1階
〒171-0052 東京都豊島区南長崎6-1-3 都営地下鉄大江戸線 落合南長崎駅 A2出口より徒歩10分 西武池袋線 東長崎駅 南口より徒歩8分

http://nagameno-yoi-heya.tumblr.com/

「ゴンドラから夢の国を俯瞰する」とは何か。
それは、簡単に言えば、「現実のような虚構」を「現実」から見るということです。夢の国をゴンドラから俯瞰することは、現実の中から「虚構」を見ることになります。しかし、例えば、夢の国にいる時は、それを現実だと思い込みます。それはなぜでしょうか。夢の国が、強力な物語を作り出しているからです。「テーマ」や「物語」の装飾が、訪れた人を没入させる空間にしているのです。そして、その没入を助けているのは、俯瞰の視点を排除している点です。夢の国には遊園地にあるはずの観覧車がありません。しかし、夢の国が徹底して排除した俯瞰の視点が、2キロ先の場所に存在しているのです。夢の国の「内部」にいる人は、いまここを「虚構のような現実」として実感しますが、「外部」から夢の国を覗いた人は、いまあの場所を「現実のような虚構」として感じられるはずです。私たちの作品はテーマパークのアトラクションのように配置されます。作品は「内部」にあり、私達は「外部」からそれを覗きます。「眺めのよい部屋」から見る風景は、どんなリアリティをもたらすのでしょうか。

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森田貴之 「夏に僕の町に東京ができる。」(2014)

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鷲尾怜 「私はこの桶をAmazonで購入した」(2016)

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森野大地 「爪を切る夜」(2016)

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石毛健太 「Seven days without water make one week(weak)」(2016)

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布施琳太郎 「不誠実な声帯」(2016)