2014年の6月、グリッチをテーマにした「Glitch @TOKYO解放区」が伊勢丹新宿店のTOKYO解放区にて開催され、それに合わせてJeff Donaldsonが来日した。僕は2011年にTumblrを通じて彼と連絡を取り合うようになり、実際に会うのは2度目になる。伊勢丹での企画に参加したのはJeffのGLITCHAUSの他にGlitch Textiles、bodysong.、Nukeme and Ucnvで、特にucnv氏には企画の段階からアイデアを出してもらった。日本の百貨店で、グリッチに関する企画が開催されたのは、おそらく初めてのことだろう。Jeffの活動は音楽、映像、テキスタイルと多岐にわたり、その作品形態の変遷自体がひとつの歴史になっている。今回は、彼のコンセプトがどういったところから来ているのかについて話を聞いた。

Read Error
Motif designed by displaying programs at the wrong resolution. 150x100cm. 50/50 merino wool/acrylic. 2015

今回、日本の伊勢丹百貨店で作品を発表し、どんな印象を持たれましたか?
伊勢丹百貨店で僕の作品を発表できたことを嬉しく思っているよ。また、他のアーティストの作品を見られたこと、僕の作品が世界中のアーティストに囲まれて展示されたことに興奮した。展示の仕方もとても素晴らしかったね。

伊勢丹は、日本ではとても有名な百貨店のひとつです。百貨店でのグリッチ作品の展示は初めてですか?
そうだね。僕は主に美術館やギャラリーで展示を行っていて、ベルリンでインターネットヤミイチにも参加したよ。このような有名な百貨店で展示できたことを誇りに思っている。来日する機会を与えてもらえて本当に嬉しいんだ。

日本に来たのは2回目ですね。
初めて来日したのは2011年で、Koenji HighでBlip Festivalに出演したんだ。僕の好きな場所のひとつだよ。

あなたの経歴について教えて頂けますでしょうか?
僕はテキサスで生まれ、親の仕事の都合でハワイやミシガン州などいろいろな場所で暮らした。これまでの大半をアメリカの東海岸で過ごしたよ。1980年代は、スケートボードとビデオゲームに夢中だった。ニューヨークに行く前、ボルティモアで9年住んでいて、バンドでギターを担当していた。2001年、大学で作曲を勉強するかたわら、エクステンデッドミュージックの技術をビデオゲームに取り込んだんだ。このビデオ作品は、僕のテキスタイルデザインのコンセプトに繋がっている。2007年にスカーフを発表して、2011年にGlitchausスタジオレーベルを立ち上げたんだ。

クラシックギターを弾いていたのですか?
ジャズギターとクラシックギターの両方を学んでいて、いろいろなバンドで弾いていたよ。直近のバンドはボルティモアでやっていた時のものかな。

バンド名は?
ひとつはインストゥルメンタルでプログレッシブロックの The French Mistake。1990年代にツアーをして、7インチレコードを〈Vermin Scum records〉からリリースした。もうひとつは、Wzt Hearts。2004年から2008年まで活動して、フリーインプロビゼーションでノイズ系のバンドだった。「Wzt Hearts」 では2枚のレコードが〈Carpark and Hoss Records〉からリリースされてる。

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Gradient
Chance based motif generation designed by diffuse dithering a gradient image. 185x150cm. 50/50 merino wool/acrylic. 2014

グリッチの制作プロセスはどのようなものでしょうか?
いくつか異なるプロセスを使っている。一つ目は、おそらく一番知られている方法だと思うんだけど、任天堂のゲーム機の回路基板にワイヤーを加えてわざとショートするように改造するプロセス。僕はこのプロセスの結果を Notendo と呼んでいる。いろんな人に、サーキットベンディングとして参考にされているテクニックだ。サウンド系のおもちゃのバッテリーをサーキットベンディングしている人がよくいるね。僕が2001年にしたことは、それをビデオ機器に応用することだったんだ。
二つ目は、データベンディングとして参考にされているテクニックと、データをビジュアル化するテクニックだ。データベンディングは初期のグリッチアートのテクニックで、ファイルデータの操作を含む。僕はこれを16進数で操作するのが好きなんだ。またこのテクニックは、例えばノートパッドかテキストエディターのテキストを画像ファイルとして開くことが可能になる。結果は同じだよ。僕はこのテクニックを千鳥格子のスカーフに使った。
データをビジュアル化するプロセスは、 Data Knit に使った。バイナリデータをグラフィック化できる ソフトを使ってね。

作品を作るに当たって、影響を受けたものはありますか?
最初に影響を受けたのは、2001年に見た夢なんだ。任天堂のゲーム機でアブストラクトなアートをつくっている夢を見た。だから、目を覚ました時、やり方を思いついた。ジョンケージは、もちろん、作曲やエクステンディットテクニックを勉強していた時に大きな影響を受けたよ。“prepared”って用語は、彼の“prepared piano”から拝借した。僕がどんなことをやっているかを表現するためにね。その用語がしっくりきたんだ。ジョンケージが機材を使ってピアノを改造して音色を変えたように、僕はワイヤーを加えて従来ビデオシステムがするべきことを変化させた。
そのプロセスを開発している時、結果を見て北米や南米で発見されたモチーフに似ていると気づいたんだ。それ以来、ファイバーアートの歴史に興味を持って、そこに影響を受けた。
あとは映画と音楽にも影響を受けたよ。2001年はコンテンポラリージャズをよく聴いていた。ジャズのインプロビゼーションのフリーフォームから受けた影響は、僕のライブビデオ制作でのアプローチに出ているよ。

グリッチという手法に惹かれる理由は何でしょうか?
始めた頃から 僕が魅了されているのは、アートフォームの自然性、偶発性なんだ。いつも驚かされるよ。期待するものをアイデアにすることは可能だけど、実際できるものはいつも異なるから。

スカーフ作成の目的は?エキシビジョン、それとも販売用ですか?
2007年のスカーフは、改造したNESで作った初めてのテキスタイル作品。それは、僕のコンセプトである、グリッチがトラディショナルでコンテンポラリーのテキスタイルデザインに似せることができるかをテストしたものなんだ。スカーフをつくってみて、グリッチがファッションのアイデアになると思った。僕は、自分のテキスタイルを着るのと同様に展示できるものだと考えているよ。

どのように販売したのですか?
インターネットとビデオパフォーマンスで販売した。何人かの友人も買ってくれたよ。

グリッチという手法を最初に認識したのはいつ頃でしょうか?
グリッチを最初に認識したのは、1980年代にビデオゲームをしていた時だった。僕はそれが「グリッチアート」ということを2004年まで知らなかったんだ。知ったのはAnt Scott と Arcangel Constantini にコンタクトを取った時だった。ほどなくして、僕は改造したNESとSEGAでの作品を展示し始めたんだ。

やはりパイオニア的存在ですね。
僕はグリッチをカタチにしたパイオニアたちの一人だよ。メキシコシティのArcangel Constanini と僕は、最初にビデオゲーム機材をショートサーキットさせたんだ。僕はまた、「グリッチアート」をテキスタイルデザインに初めて取り込んだ存在でもある。

Data Knit
Motif designed by visually rendering binary data of the Windows Explorer executable. 145x17cm. Acrylic. 2015

あなたが好きなのは、新しいデザインの方法を見つけることですか?
僕は、新しい方法を見つけるつもりはないよ。僕は自分の直観に従っている。僕は自分が始めたことをやり続けることが好きなんだ。

1988年からスケーターのビデオを撮っていたということは、スカーフの制作よりも、音楽やまたは映像の方が歴史が長いということですよね。一番興味があるものは何ですか?
僕は全てのことに平等に興味がある。僕の音楽はビデオ映像に繋がっているし、それらはテキスタイルのデザインに繋がっている。すべては繋がっているんだ。

クリエイティブなインスピレーションはどこからやってくるのですか?スケーター、音楽、他にどんなものがありますか?また、そこからなぜ着るものをつくろうと思ったのですか?
僕は世界中の古代のアートにインスパイアされている。その技術は本当に目を見張るものばかりだ。どの作品もとても繊細で意味がある。僕はそれがとても美しいと気づいたんだ。僕の姉は花嫁衣裳と映画の衣装デザインのビジネスをやっていて、それにすごく興味があった。1990年代にはジャン=ポール・ゴルチエが大人気だった。映画「コックと泥棒、その妻と愛人」のゴルチエの衣装にすごい影響を受けたよ。

映像はファミコンでつくっているけど、スカーフはどのように作っているのですか?
改造した NES で作った スカーフのモチーフを映像に記録して、そのビデオのフレームから静止画を 選んでいる。それから、画像を編集し、1ピクセルごとに編みこんでくれる編み機へデータを送るんだ。

スカーフを作る時、ファミコン以外で作ることはありますか?
僕は2007年からドイツで 編み機でつくっている。クオリティが素晴らしく、安定感がある。また、ブラザーの編み機を使っているよ。家に一台持っていて、改造した FTDI ケーブルを使って、ノートパソコンのおUSB経由でモチーフを送っているんだ。

グリッチで大切なのは、偶然性?一番興味があることは、偶然の結果を得られることですか?
そのとおり。僕は偶発性に興味がある。予想できないからね。もちろん、そこから偶発性を作品の形にしていくんだけど。偶発性がなかったらグリッチは存在しない。

Read Error
Motif designed by displaying programs at the wrong resolution. 175x25cm. 50/50 merino wool/acrylic. 2012

スカーフを発表した以降2008年頃、いろんな人のグリッチ作品を見たと思うのですが、その時どう思われましたか?
Melissa Barronは、僕と同じコンセプトでテキスタイルデザインを発表していた。2010年、シカゴでの GLI.TC/H カンファレンスの時にMelissa に会ったよ。僕はすぐに彼女の作品を気に入り、コラボレーションしないか、ってオファーしたんだ 。Melissa は僕のRead Error モチーフを織ってくれて、僕はそれを2011年ブルックリンで開かれたBent Festival での展示作品の一つに加えたんだ 。ヌケメ氏のGlitch Embroidery とニットレースは最もオリジナリティーがある作品で、しばらく見入ってしまったよ。彼の作品は個人的に好きだよ。また、UCNV/Bodysong コラボレーションも好きだね。とても美しかったよ。

グリッチは、他の人やっても同じ結果が出るものですか?
「グリッチアート」を見ればどんなテクニックが使われているかを知るのは簡単だよ。だから、デザインにとってコンセプトこそが一番大切だと考えているよ。

アイデアとコンセプトは大切。スタイルは簡単ということでしょうか?
スタイルをまねるのは、コンセプトをまねるよりはるかに簡単だと思う。

グリッチアーティストですが、その技法を使わずに何かを作りたいと思いますか?
僕はグリッチとエラーが作り出すもの、例えばテキスタイル、ファッション、インテリアデザインなんかに興味がある。また、アナログエラーも好きだよ。僕は、Electronic Textile Institute Berlin で、織物の見た目が破損してしまったブラザーの編み機を使っていた。これは画像ファイルの代わりに 、編み機のエラーをモチーフに編むことを可能にしたんだ。僕は今もなお、探し続けている。僕はまだ始めたばかりのような感覚なんだ。すべてのことに興奮をおぼえるよ。

今ではさまざまな手法のグリッチが出てきていますが、そのスタイルの違いについてどう考えていますか?
僕は、色々なスタイルがあることは大切だと思っている。その方がおもしろいからね。

Jeff Donaldson プロフィール
2011年より、Notendo、Glitchaus。Glitchausなどの名義を用いて活動。今後はGlitchausの1本にしていく予定とか。 Glitchausの「haus」は、ドイツ語ではfromの意味。グリッチから発信するという意味合いが込められている。

Jeff Donaldsonによるグリッチニットのはこちらで購入可能。

Glitchaus http://glitchaus.com
Notendo / Jeff Donaldson http://notendo.com