Interview with Ultrafog

身体が奏でる自由なエレクトロニック・ミュージック。
都内で活動する音楽家Ultrafogのこれまでと現在。

Text: Kazunori Toganoki, Photo: Yusaku Arai

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水面下で漂う薄白い光の群れを頭上に、粒子状の音たちは波の振動を受けながらそのリズムと融解し、海底へと潜り込んでいく―昨年solitude solutionsからリリースされた、Ultrafogによるカセット作品『Faces, Forgotten』は、そうした深海に誘われるかのようなイメージを彷彿とさせる、瑞々しさに溢れるアンビエント・ミュージックだったが、ジャンルに規定されることのない彼の自由な音楽性は、ライブ・パフォーマンスを一見すれば分かるだろう。テクノやエクスペリメンタルといった強度のある要素を内包しながらも、「踊らせる」ことには偏向せず、モジュラーシンセとエフェクターを操りながら、偶発的に音を紡ぎだしては、異なる感触をもったレイヤーを重ね合わせていく。瞬間的に更新されては姿形が変化していく場で、私たちは適度な緊張感を味わいながら、全方位的に向けられた不確定な電子音の流動と、その発生との遭遇に高揚を覚える。
今月にはスペイン・バルセロナのレーベルangoisseからスプリット作品のリリースもひかえるUltrafogに、インタビューを試みた。

音楽活動をはじめたのはいつ頃からなのでしょうか。現在のUltrafogに至るまでの自身の遍歴を教えてください。
 中学2年の時に所属していたサッカークラブをやめて、近所の友達と適当にバンドを始めたのが最初ですかね。最初は主に90年代の日本のロックを聴いていて、それからソニック・ユースやダイナソーJR、マイ・ブラッディ・バレンタインみたいなオルタナティブ・ロックに夢中になりました。バンドではギターを弾いていました。大きな変化だったのが、大学の時に入ったサークルです。僕は神奈川の海老名市出身で、高校生の時は周りに音楽の話をできる人があまりいなかったんです。おそらく同じような環境で高校時代を過ごした人たちがそこに集まっていて、みんな僕の知らない音楽をたくさん知っていて、その中でバンドを組んでは自分たちで曲を作って、を繰り返す感じでした。そこで過ごした時間は大きかったです。色々なことをやってみたんですが、人と音楽を作ることが自分には向いていないかもしれないと感じるようになって、最終的にDAWを買って一人で音楽を作り始めました。制作を始めた頃はBurialとかAndy Stott、Onepoint Ohtrix Neverとかにハマっていて、本当に漠然としたイメージからのスタートでした。大学を卒業すると、音楽を披露する場所が無くなって、同期だった友人が誘ってくれたのがきっかけでIN HAというイベントを始めました。同じ大学だったMari Sakuraiと、BOMBORIというバンドで当時はギターを弾きながらエレクトロニック・ミュージックを作っていたRaftoを誘って、今はその3人で不定期的に開催しています。僕はスタイルを定まらないままINHAという場所を先に作って、そこで色々な人と出会って影響を受けたり悩んだりして、最近やっと今のスタイルに落ち着きました。

昨年の12月にリリースされた作品『Faces, Forgotten』について聞かせてください。これはあなたにとって初のフィジカルリリースとなりますが、普段のUltrafogのライブ上のスタイルとは異なる、静謐なアンビエント・ミュージックですね。ただテープで聞くと、曲の背後にあるヒスノイズや音粒の粗さがしっかりと意図して曲に組み込まれていて、その相互の響きが非常に面白かったです。作品のコンセプトやイメージのようなものがありましたら教えてください。
 
あのEPは、「記憶」に関する漠然とした感覚のかけらと考察のようなものがテーマとしてありました。人間の記憶は何を残しておくか自分で選択できないし、実際の出来事とは必ずズレが生じると思っています。僕の中にある主観的な「記憶」をもとに、ある特定の場所やある日の出来事とか思ったことから曲のタイトルをつけて、それを音にしようと意識して作りました。どんなに素晴らしいことや悲しいことが起きても、すごく好きな人と出会っても、また新しい出来事や出会いがあって、どんどん忘れていくし、人って都合のいいように解釈していくと思うんです。何か作品を作るって行為はその勝手な超個人的な感覚を形にすることなのかもしれない。だから「忘れる」ということが前提としてあって、人は何かを残そうとするのかなと思いました。サウンド的にはちょうど作る曲がどんどんぼやけた音像のものが多くなってきて、僕が考えていたことにフィットしたような気はしています。

https://solitudesolutions.bandcamp.com/merch/kdk-11-ultrafog-faces-forgotten

モジュラー・システムを用いたライブセットが特徴的ですが、この機材がメインになるのに何かきっかけはあったのでしょうか?また作曲のプロセスやライブのパフォーマンス上で、何か変化はありましたか?
 
2016年の夏ぐらいに、これまで作曲の中心に使っていた機材をDAWから全てハードウェアに乗り換えました。以前は毎回ライブの度に、ループやセットをPC上で準備してライブに臨んでいたんですが、元々ギターを弾いていたというのもあって、自分がループやサンプルを再生するっていう行為にずっと曖昧な違和感を抱いていました。ちょうどその時誘われていたイベントで、その違和感が頂点に達して、急遽持っているシンセとシーケンサーとペダルだけでプレイをしてみたら、自分の中で手応えがあったんです。それで”感覚的に電子音を出せる楽器”が自分には必要だなと思って、モジュラーシンセを導入することにしました。僕はライブにおいては偶発性とか、反射性が欲しいんです。その場で生成された音がやっぱり好きで。

作曲に関してはライブとは違って、だいたいハードウェアにMIDIを流しこんでから、それぞれの要素にDAWで手を加えて、重ねてまとめていきます。ライブのように即興性や偶発性みたいなものを重視していませんし、決まったやり方も特にありません。iPhoneで野外の音を録って使ったりもします。組み立て方の違いはありますが、ハードウェアを使うようになってから共通して変化したことは、自分の音のソースが限定されたところです。ラップトップの中でのソフトシンセやサンプラーを使った制作は、いってみれば無限に選択肢があると思うんです。僕の場合は、出せる音を縛ることで、自由すぎることの束縛から逆に自由になったというか。今のやり方は自分にとってはバランスが良いですね。
 

音楽活動を行ううえで、何か大事にしている姿勢のようなものはありますか?
 
いろんな意味で小さくまとまらないことですかね。記号にならないように。実際、僕はアンビエント作家にもモジュラーシンセ奏者にもなりたくないです。見つかりそうで見つからないものをすごく長いスパンで探すようなイメージで活動しています。海に落としちゃったものを素潜りで探す感じとか。見つけたと思ったら違っていたり。視界が悪い中で真面目にずっと探す。それがUltrafogっていう、なんとなくつけた名前の意味なのかなと今は思っています。それでもちゃんと爪痕と足跡は残せるように。
 
次回作の予定などはあるのでしょうか。

次はm dooというアメリカ・カンザスのアーティストとのスプリットEPが、バルセロナのangoisseというレーベルからカセットで出ます。彼はRyan Leockerという本名名義でStrange RulesやLillerne Tapesからもリリースしていて、今回のレーベルのangoisseでもm doo名義で最新作の『id static』をリリースしています。サウンドクラウドで連絡が来て、一緒にやろうとのことだったのですぐにOKしました。やりとりしていく中で分かったんですが、彼は1221というレーベル、というかコミュニティのオーナーで、僕はその周辺の音楽にはとても影響を受けていました。カンザスのローカルなアーティストたちを中心に、これまで4枚のコンピレーションをリリースしています。NYのアーティストたちも参加しています。umfangとかNick Kleinとかgaul plusとかvia appとかdreamcrusherまで。angoisseのオーナーのDavidと僕はネットで繋がっていて、彼のレーベルで出したいと言ってくれてタイミングよく進んでいきました。 angoisseはバルセロナを拠点にしながらいろんな国のアーティストの作品をリリースしていてすごく挑戦的なレーベルだと思います。日本から少し前にCVNが、僕と同じタイミングでKazumichi Komatsuくんのカセットも出ます。今年は別のレーベルからもう一作出す予定です。

最近のお気に入りのアルバムなどありましたら、いくつか教えてください。

Various ‎– bblisss
M. Geddes Gengras ‎– Interior Architecture
CAN – SOUNDTRACKS
Mud Honey – Superfuzz Bigmuff
Autechere – Amber
Tim Hecker – Harmony in Ultraviolet

です。

ultrafog: https://soundcloud.com/ultrafog