Interview with toiret status

実験の極北が反転したポップ。toiret statusの作り出す独特のグルーヴ、
そして未知の表現が持つ美しさとエネルギーについて。

Text: Yusuke Shono

Sorry, this entry is only available in Japanese. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language.

Sorry, this entry is only available in Japanese. For the sake of viewer convenience, the content is shown below in the alternative language. You may click the link to switch the active language.

トイレの水がカラフルな音響とともに流れ出すイントロから、畳み掛けるように襲いかかる未視感の連続。変転していくリズム、引き伸ばされ縮められたサンプル音、予想のできない展開が、ダイナミックなうねりを生じさせる。三半規管がかき混ぜられるようなその独特のグルーヴを作り出すのは、山口県在住の今最も注目を浴びているトラックメーカーtoiret status。〈Orange Milk〉よりリリースされた「◎omaru◎」は、独特の表現が凝縮した傑作というべきアルバムだ。硬質なプリセット音を盛り合わせて作られたデジタルな色彩を持ったその豊穣なサウンドは、未知だけが持つ美しさと、突き抜けたエネルギーを内包している。実験の極北が反転するとポップになるという証明そのもののようなサウンド。そんなアルバムをリリースしたばかりの彼に、toiret statusやxPhone tweeted hatenaなどのプロジェクトについて聞いてみた。

toiret status “◎omaru◎”

まずは活動歴的なところからお聞きしたいと思います。toiret statusの前はバンドをやられていたそうですが、どんなバンドだったのでしょう?

いろんなバンドで活動していました。もともと高校時代にメロコアバンドのドラムを始めたのが最初なんですが、そこからいろいろと音楽を聴くようになって。ベースとドラムの二人組で即興ノイズバンドや、ギターとドラムの二人組でマスロックみたいなことをやったり。The shaggsみたいなスカムバンドをやったり、大所帯のノイズバンドでドラム叩いたり、ジャンクでハードコアなバンドでドラム叩いたりしていました。影響を受けたアーティストはいろいろいますが、特にLIGHTNING BOLTのBrian Chippendale、HellaやDeath GripsのZach Hill、Aids WolfのYannick Desranleau、この三人のドラマーの影響が大きくて、どちらかというと激しくてうるさいバンドばかりやっていました。

そういうバンドの活動から、今のような実験的なトラックメイキングをやりはじめたのは、なにかきっかけがあったんですか?

今まで自分が聴いたことない音楽をはじめて聴いたときの感動が大好きで、自分も誰も聴いたことがないような音楽を作りたいと思うようになったのがきっかけです。ノイズバンドをやりはじめた当初は本当に無知で、こんなバンド世界で自分たちしかいないと思ってたんです。田舎に住んでいるので、周りに前衛的なバンドなんて全然いないですし。でもあとから、実は自分たちよりももっとすごいノイズバンドが昔から沢山いることを知って…。なんだか悔しい気持ちになったことを覚えています。

それでバンドをやりつつも何かしら新しい音楽を作りたいなぁとずっと思ってて。ひとりでサンプラーとドラムを同期させてソロでライヴをやってみたり、サンプラーだけで曲っぽいものを作ったりしていました。バンドマンだったので、DTMに対する憧れみたいなのがあったんです。それで去年から本格的に作曲を始めてみたところ、楽しくて楽しくて、一番自分に合う表現方法だと気が付いたんです。

特に三半規管を揺さぶるような変化していくグルーブ感がtoiret statusの特徴だと思うのですが、制作においてビートやリズムの構造というのはどれぐらい意識していますか?

toiret statusではかなり意識していますね。もともと僕はドラムしかできず、コード進行とか音楽理論とかも理解していないので、ビートを作るときも何かのメロディを作るときもiPadを直観的に叩いて作ることが多い。iPad上のドラムもキーボードも打楽器みたいにしているので、そういう意味では全てのトラックがリズムとして機能しているのかもしれません。あと、リズムやビートだけでなくてポップであることも意識してます。最初に例に挙げたLIGHTNING BOLTなどのバンドは前衛的で実験的だけど、どのバンドもとてもポップなんです。僕はそういう人やアーティストが好きで、toiret statusでもポップと実験性のバランスを大切にしています。

今回の〈Orange Milk〉からリリースされた「◎omaru◎」も実験性とポップさが両立したアルバムだと思います。しかもさらなる音楽性の広がりも感じました。よければこのアルバムの制作のプロセスについて教えていただけますか?

誰かと制作するとき以外は基本的にコンセプトやテーマを決めずに作っていくので、曲ごとでやりたいことをやったり、いろいろ試しながら作りました。曲作りの際には、「この小節ではキック3発まで」とか、「ビートより先にメロディを作る」とか、曲ごとに謎の自分ルールを決めてから作っています。昔からチマチマした作業にぼーっと熱中するのが好きなので、ルールを決めることで作曲を作業的にして、深く考えずに制作できるようにしてるんです。あとついつい曲の展開を多くしてしまうので、ルールを決めることで曲としてのまとまりが出るんじゃないかと。

ちなみに曲作りはどのようなセッティングで行っていますか? サンプリングと打ち込みの比率はどのような感じでしょうか?

toiret statusの作曲はiPadのアプリ「GarageBand」だけで作ってます。ミックスダウンとマスタリングはAbleton Liveでやっていますが。比率は曲によってサンプリングの音ばっかりだったり、その逆もあるのですが大体はサンプリングした音が8割で2割がプリセットの音って感じですかね。omaruに収録されている曲の生ドラムやギター、ピアノなどの音はGarageBandのプリセットを使ってます。打ち込みの比率に関しても曲によってそれぞれなんですが、iPadの画面を叩いて録音したものをそのまま使うときもあれば、ポツポツと一から打ち込んで作っていくこともあります。飽きっぽい性格なので、曲ごとに違うルールを設定し敢えて作り方を変えるようにしています。

Elevation X Toiret Status “T​.​D​.​I​.​M”

xPhone tweeted hatena名義は携帯で曲を作っているそうですが、ほんとうですか?

ミックスとマスタリングはtoiret statusと同じようにAbleton Liveを使っているので、携帯だけで作っていると言えばウソになっちゃうんですが、作曲はiPhoneのGarageBandのみでやってます。iPhoneとiPadのGarageBandはほとんど機能的には変わらないんですが、携帯さえ持っていれば曲を作れることが面白いと思って始めたプロジェクトで。いつでもどこでもフィールドレコーディングして作曲に使えるし、なんならトイレで用を足してるときにも制作できるし。携帯で音楽を作れるのって今では当たり前でも、ひと昔前からしたらすごいことだなあと。携帯でこんな曲作れるのか?って聴いてくれた人にビックリして貰いたくてやっています。あとxPhone tweeted hatenaではtoiret statusと比べて、より実験性に特化した音楽を作ろうと思ってます。

〈PEDICURE RECORDS〉の1st EPからわりととんとん拍子でさまざまなレーベルからリリースされていますね。今回の〈Orange Milk〉のアルバムでも共演されていますが、Lil $egaさんとの出会いはどのようなものでしたか?

〈PEDICURE〉に参加したある日、Lil $egaくんがメッセージを送ってくれて、それがキッカケでいろいろと一緒に制作をするようになりました。彼のことは知り合う前からメディアや音楽を見て一方的に知っていたので、メッセージを送ってくれたのがとても嬉しかったことを覚えています。当時はtoiret statusが山口を拠点にしていることも、名前も明かしていなかったのですが、山口県の二人をアメリカの〈PEDICURE〉が繋げてくれたことは面白いと思うし、すごく感謝しています。

そんな〈PEDICURE〉から1st EPをリリースした後の夏に、Lil $egaくんとToiret $egatusというユニットを組んで、彼のレーベルである〈Wasabi Tapes〉からアルバムをリリースしたことも自分にとってはかなり大きかった。こういう形でふたりでひとつの作品を作るのははじめてだったので、バンドとはまた違った共作の楽しさを感じました。そのアルバムをリリースしてすぐにSmokeのdagshenmaさんや〈Orange Milk〉のKeithとSethからリリースのオファーが来たので、自分でもものすごく驚いたし、本当に感謝と嬉しさで一杯になりました。

山口県はどんなところですか? 音楽の制作も含めて、どんな生活を送っているのでしょう?

山口県はその名のとおり、山ばかりです。自然が豊かで、萩とか角島の海とか本当に美しいところなので、ぜひ訪ねてみて欲しいです。ただ若い人たちはどんどん街からいなくなっているので、周りはおじいさんとおばあさんばかりですね…。生活は仕事から帰ってきたら曲をつくる。というのをずっと繰り返してて、仕事以外はタダの引きこもりって感じです。でも田舎に住んでいるほうが、外からの誘惑がないので制作に集中できるし、ネットで自分の作品をどんどん発表できるのでなんだかんだで今の生活を楽しんでいます。といってもやっぱり刺激が足りないので、もっと沢山面白い作品を作って自分の作品が自分をもっと面白いところに連れていってくれたらなあ、と妄想する毎日です。

この先のリリースの予定はありますか?

いつリリースされるかハッキリは分かりませんが年内にxPhone tweeted hatenaのアルバムと、toiret statusのEPをリリースする予定です。あとToiret $egatasの2ndアルバムも制作中です。それからYoshitaka Hikawaさん、Nozomu Matsumotoくん、Kenji Yamamoto(Lil $ega)くん、僕の四人でミクステを制作中です。これもいつリリースになるか分かりませんが、みんなに刺激を貰いながらゆっくり制作を進めています。

tumblr_nr25dwac721rt8mxzo1_1280

tumblr_nmwf711ffu1rt8mxzo1_1280

toiret statusこと、Yorichikaさんのアートワーク。

Isamu Yorichika
toiret status / xPhone tweeted hatena / yolichika / Toiret $egatus
http://isamuyorichika.tumblr.com