Dirt on Tape Vol.02

カセットテープコレクターDirty Dirtがマンスリーでお送りする、連載第二回。カセットテープに関するあれやこれやをご紹介します。

Text: Dirty Dirt, Title Logo: ancco

前回は、UKで現行のカセットテープの流れを引っ張っている〈Where To Now?〉についてかかせていただきましたが、今回はUSです。あちらは現行なシーンとは関係なく、エクスペリメンタル、インディ、パンクなどさまざまなジャンルで数は減っても地下では出され続けてはいたので、現行のシーンとの線引きはすこしむずかしいけれど、いまの流れにつながって、引っ張るレーベルのことを。

USでは〈Orange Milk Records〉がずっとすばらしい。2011年発足、当時Tiny Mix Tapesでライターとしても活躍していたGiant ClawのKeith “Kawaii” Rankin、そのKeithとのCream Juiceというユニットでも活動するSeth Grahamのレーベルで、Giant Clawがおととしに人気なので、知っているかたもおおいのでは。でも、ここはカセットテープがずっとすばらしいんです。はじめはSean McCannHobo Cubesなど、当時のエクスペリメンタルなものをだすレーベルとおなじならびというイメージがありました。といっても、ドローンやサイケデリックなシンセのというよりもすこしひねくれてはいましたが。カセットテープを中心に自身のレコードなどもときおりリリースしながら、2013年。

なんといってもカセットテープといえばな、〈Tabs Out〉。その月よかったカセットテープを流すポッドキャストに、購読者のみへの限定なカセットリリース、そして2015年の1年のあいだにきいた現行のカセットテープは1000本を越えていてと、世界一な現行カセットテープの情報量とカセット愛がつまったところなんですが、そこの2013年年末リストでCream Juiceが1位に選ばれ、おなじ年にリリースされた食品まつりもおなじくカセット界隈各メディアにとりあげられていてと、そこからこのレーベルの勢いがついた気がします。

2014年にはGiant Clawによる “DARK WEB” が日本盤もでるほどの人気に。その印象がつよいので、どうしてもインターネット的なという並びで語られがちだけれども、Keith本人は新作からもわかるように根っからのシンセシストだし、Sethは立体音響コラージュとアンビエントで、あたらしい音楽への探究心を反映しながら、彼らのポップミュージックへの愛、そのバランスが絶妙なリリース群で。

2015年は主宰のふたりそれぞれのソロ作品にくわえて、食品まつり aka FOODMANのこれまでのおいしいところが選び抜かれた “COULDWORK”、ライターでもあるオーストラリアの立体音響ニューエイジからネオンまたたくシンセにビートにといまな音楽をこれでもかとうまく整理し完璧にしあげたNico Niquo、本人自体も熱心なカセットテープコレクターであるドイツのニューエイジ作家Gora Sou、ヴェイパーの蒸気を振り切るかのような熱いディスコミュージックTendencies、変異ジューク/フットワーク女子Machine Girlなど、国もジャンルもさまざまだけれど、どれも実験性とポップな要素を併せ持っていて、主宰者たちの意志がみえるところがよいです。

Bandcampのならびをみると、統一感があり、SethとKeithがそのほとんどを手がけていて。こういうのもたのしいところで。最近ではもうすぐリリースな〈DFA〉からのGuerilla Tossのアートワークなどほかのレーベルのアートワークも担当していたりと、Keithはそちらでも活動の幅を広げています。おなじころに活動していたUSのレーベルがリリース数を減らしてきたり休んでしまったりするなか、彼らは休まず、軽快にリリースしてゆくさまと、どんどんと更新してゆくかんじはすばらしいです。

そしてことしの2月にはKeithとおなじくライター出身なDJWWWWと、JESSE RUINSのSakuma NobuyukiのソロCVNをいっしょにっていう日本のかっこいいところをなぜ知ってるのかっていうかんじのリリース。Sethのほうがむかし日本に住んでいたことの影響もあるんでしょうか、Keithともどもな日本への愛。そろそろ日本へきてください!

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2月にきいたカセットテープのなかで、いくつかよかったものを。

Angels USA “XILF:STIKKLEMUZICK” (Hundebiss)
https://angelsusa.bandcamp.com/album/xilf-stikklemuzick

Esra PadgettはChicklette(きょねんのカセットはわたしのなかベスト1でした)として、Mark IosifecuはFarewell My Concubineとして、おたがいソロ活動をはじめてもう解散かとおもっていたら、ひさびさの復活です。ラジオのショーという体裁で、おたがいに声色かえながら朗読、トツゼンすぎる歪んだギター、変異電子音の飛び交いに、また朗読なやりとりが。あまりにぐだぐだで、A面で止めてしまおうとおもうも、B面になると慣れてきたのか、たのしくなってきてしまいます。誰かしらがふざけて録音したカセットテープを拾ってきいてしまったかんじで最高です。

Micromelancolié “Low Cakes” (Speaker Footage)
http://speakerfootage.bandcamp.com/album/low-cakes

デンマークのアンビエントを主にだしているPhineryがはじめた姉妹レーベル〈Speaker Footage〉。きょねんからことしにかけてかなりの本数を出していて、その人選もよいんですが、Micromelancoliéはアンビエントなイメージのひとだったんですが、いつのまにやらフットワークに、スクリューにコラージュなかんじに変化していました。さらにNico Niquo、RKSS、Ovis Aurumといまのカセット界隈でおもしろいひとがリミックスで参加していて、そちら側もかなりたのしいです。

Ekin Fil “Heavy” (No Kings)
http://nokings.bandcamp.com/album/heavy

イスタンブールのEkin Üzeltüzenciによるドローンフォーク。けっこう活動も長く、Grouperっぽいっていってしまえば説明がついてしまうんですが、その靄の濃さ、声とギターとノイズのバランスが年々深くなっていってます。No KingsのJカードのリゾグラフ印刷がカセットレーベルのなかでいっとうといってもよいくらいにうつくしいので、ここのはぜひひとつもので買ってみてはとおもいます。

Ariisk “Mode Bionic” Nostilevo
http://nostilevo.bandcamp.com/album/mode-bionics

現行ノイズを代表するLAのレーベルから、Rolan VegaによるAriisk。暗闇のなかミニマルに響くシンセと、このレーベルにぴったりながびがびに腐食したヴォーカル。Instagramなど、アートワークもサイバーなかんじがあって、かっこいいです。ライブではゴス感あふれる女子も参加しているようです。

Ondness “Quase Driven” (Segrave)
http://seagrave.bandcamp.com/album/quase-driven

〈Where To Now?〉がUKレーベルの表の顔なら裏側はSeagraveな印象で、そこからリスボンのOndnessがリリース。フィールドレコーディングやサンプリングに電子音が沈殿してゆくアンビエントな印象でしたが、フィールドレコーディングの重なりの靄が濃ゆく、その靄をコラージュのような電子音が悪夢的にかきまわしてて、かなり攻めてきています。このひとはたくさんなレーベルから多作なのでことしもたのしみです。

Dirty Dirt
現行のカセットテープコレクター。2015年は450本購入。カセットテープに関するブログ、zine、雑誌への寄稿、たまにカセットDJなど、現行のカセットテープのことならなんでも。 http://dirtydirt2.blogspot.jp