現行カセットテープ入門というかんじですすめていますけれど、もう3ヶ月目、これを読んで1本でも現行のカセットテープをきいてみてくれた方がいたならうれしいです。

UK、USときたので、つぎはカナダへ。カナダにもモントリオールとバンクーバーを中心にたくさんのレーベルがあってUSとおなじ雰囲気がありながら、やはりもうすこし地下なかんじがします。そのなか、今月取り上げるのはバンクーバーの〈1080p〉

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2013年にニュージーランドからバンクーバーへ渡ってきたRichard Macfarlaneが立ち上げたレーベルで、ここ2年くらいのあいだで最も成功したカセットレーベルです。〈100% Silk〉の人気がすこしおちついてきたころで、そのままおもしろいハウス、ダンスミュージックの流れを引き継ぎ、おしすすめた印象があります。〈100% Silk〉もカセットのリリースにおいてはいまもすばらしいですけど。

ここの特徴といえば、統一感のないところ。毎リリース、Jカードのデザインをがらりとかえてと統一感のないアートワークはこれまでのカセットレーベルのイメージを変えてしまいました。そしてリリースする人選も、はじめからバンクーバーのローカルなシーンをすくい上げるだけでなく、〈Exo Tapes〉などからギタードローンを主に発表していたブルックリンのM/Mによるテクノ名義を発表したり、ドイツ、オーストラリアなど各国のポップなかんじと地下なかんじの絶妙なところを拾ってきてリリースします。いろいろと地下な方面を追っているこちらでさえまったくきいたことないなまえもかなりあって、しかし、どの作品も絶妙にポップでゆがんでいて、常にあたらしい発見をあたえてくれます。

そしてここのすばらしいところは、毎月リリースを欠かさない事。カセットレーベルを追っていておもうことは、勢いのあるところは、とにかくたくさん、休みなくリリースします。そういうカセットレーベルならではの身軽さを存分に使い、つぎからつぎに新しいひとを出してくるのが、追っていてたのしいです。

1年に1度くらいなにかしらの記念なときにBandcampでそれまでリリースしたデジタルな音源をname your priceで放出したり、オランダのSubbacultcha! にコラムの連載をもったりと、もともと音楽ブロガーであった主宰者によって、奔放でいて戦略的にじぶんたちの音楽を広めてゆき、2015年からは12インチも着実にリリース、日本のクラブでもここのティーシャツをきていたりバッグをもってるひとをちょこちょこと目撃するくらいにまでなりました。そして初期にリリースされたものは、discogsで高値で取引きされることもあったり。

これまでのリリースで気に入ってるものは、このレーベルの代表作となったMood Hut直系ハウスなProject Pablo、ことしに入ってかなり多くのメディアに取り上げられているニューヨークの女子DJ集団Discwoman主宰なひとりUmfang、おなじくニューヨークのゆがんだ邪悪ハウス女子Via App、モントリオール地下女子代表なRamzi、Health GothはきたのかこなかったのかなMagic Fadesなど、地下加減とポップさのバランスがすばらしいです。

ほぼ新人ななか、〈Software〉との共同リリースなCo Laに、Torn HawkLuke Wyattによるアンビエント名義なInfinite、〈NNF〉からリリースしていたGolden Donnaによる別名儀Auscultationと、これまで活動していたひとの実験的な場としても機能していて、そういうところもおもしろいです。

UKのカセットレーベルでのテクノの勢いがすごくなってきたのと同時に〈1080p〉がもうすこしポップで、でもすこしヘンなダンスミュージックを出し続けて人気を得てゆくという、あまりDJでつかわれることのないカセットという媒体でそういう音楽が中心となって人気をひっぱってるというのが、ここ2年ほどのあいだでおもしろい流れだとおもっています。

部屋でひとりラジカセを通してハウスをきくたのしさ、安ラジカセのこもった音でじゅうぶんなので、みなさんもこのレーベルからぜひ。

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3月で好きだったものをいくつか。

ペルーのリマ出身、ロンドン在住のデビューカセット。ブラックメタル出身で、終始飛び交うノイズと、呪術的な雰囲気、変調声、そしてときおりなビートと、かなり内容がつかみどころないんですが、Pod Blotzに続いてゆくような暗黒な雰囲気があってよいです。まだまだ情報がすくなすぎて、マスクに紋章のようなものがかかれている写真や廃墟でのライブ写真など、見た目もかっこいいです。こういう女子が日本からもでてきてほしいです。

 

CAO “Marginal Virgin” (Opal Tapes)
https://opaltapes.bandcamp.com/album/cao-marginal-virgin

自主リリースを重ねてBrad Roseの耳にとまりDigitalisからもリリースしていたAdam KeithによるCubeの11作目の自主リリース。自主でどんどんだせるあたりがカセットテープのよいところで、でもそんなのばっかり追ってたらキリはないんですけれど、直接なやりとりがたのしかったり、追ってたひとがすこしだけ有名なレーベルからっていう瞬間にたちあえるのはうれしかったりします。Babe, TerrorやM/Mと知ったころがいっしょだからか近い印象があって、曲ごとに雰囲気ががらりとかわりながら、全体的にすこしゆるい雰囲気が漂っていて。新作ではすこし尺の長いノイズをまき散らしたテクノの印象が強く、Containerよりな素直なかっこよさ、とおもいきや、やっぱりその裏で暴発するゆるい電子音。レコードもでるみたいなんで、ことしは飛躍してくれれば。

Cube “803-206-0028” (Self Release)
https://soundcloud.com/adamkeith-1

今回の〈Orange Milk〉のバッチはすべてよいです。先月、DJWWWWとCVNについてはすこしかかせていただいたので、もうひとつのお気に入り。ロシアのNV。Kate Shilonosovaによるソロデビュー作です。自由にはねまわるリズム、ポップな音のつらなりの端々には細やかな音の遊び、そしてそこに重ねられるささやきに近い声や、曲名の日本語を使ったりInstagramにときどきあがる写真から日本のこと好きなんだろうなって伝わってくるんですけど、80年代な日本のポップなメロディな歌がものすごくよいです。ことしこの子の人気がでないならカセットにもロシアにも未来はないくらいによい。きょねんから、ロシアがくるっていう雰囲気でしたけれど、音だけでなく、キリル文字を使った服だったりといま本格的にきてますよね。

NV “Binasu” (Orange Milk)
https://orangemilkrecords.bandcamp.com/album/binasu

ベルリンへうつった〈Total Black〉からスウェーデンのVargとSARSによるユニット。これもタイトルがキリル文字です。このJカードの文字と絵をあしらったティー・シャツもつくられてて、買えばよかったです。Vargの鋭く冷たい打撃の連打と、ニューエイジなシンセによるアンビエント、そしてノイズとVargな雰囲気そのままですが、そこに女子の声が重なるんだから、よいに決まってます。ケースがおもいっきり砕けて届きました。よいテープはたいがい砕けて届きます。

Född Död “он не может любить тебя больше” (Total Black)
https://totalblack.bandcamp.com/album/-

UKのふたり組。今月かいた〈1080p〉の初期にもリリースしていたころはヘンなハウスのひとたちというイメージでしたが、きょねんの〈Opal Tapes〉ので、暗黒な四打ちのうえでたゆたうシンセのゆらめきがものすごくよくって、新作ではOpalでの実験的な空気から四打ちへうつってゆく構成力もすばらしいです。〈Seagrave〉は〈Opal Tapes〉、〈Where To Now?〉 に続くUKテクノの注目レーベルです。A i w A、Broshudaとそれぞれ密接につながりながらも、それぞれの色がでていて、やはりUKはおもしろいなとおもいます。

Perfume Advert “Foreverware” (Seagrave)
https://seagrave.bandcamp.com/album/foreverware

デンマークの〈Phinery〉姉妹レーベルから。覆面をかぶっていて素性がわからないポーランドのふたり組。これでもかと打ち込まれる打撃音と、不穏に飛び交う電子音、オリエンタルな雰囲気のある音のつらなり、黒く粗っぽい空気をふりまきながらもクリアな電子音も重なりながら、ただただ突っ走るかんじ、かっこいいです。かぶっている覆面にも美意識があらわれていて、ライブをみてみたいです。

RSS B0YS “B0DY FL0W” (Speaker Footage)
https://speakerfootage.bandcamp.com/album/b0dy-fl0w

Dirty Dirt
現行のカセットテープコレクター。2015年は450本購入。カセットテープに関するブログ、zine、雑誌への寄稿、たまにカセットDJなど、現行のカセットテープのことならなんでも。 http://dirtydirt2.blogspot.jp