Interview with Green Music

私たちは音楽を聴いている時に、色を感じているだろうか。また感じているとすれば、そこには一体どんな色が宿っているだろうか。Tomoko SauvageとFrancesco Cavaliereの2人のアーティストから成るプロジェクト『Green Music』は、「緑」という色彩をコンセプトに、ガラスや鉱物、植物やいくつものオブジェクト、彩られた楽器を用いながら、視覚的に空間をその色に染め上げ、私達の内側に、静謐な穏やかさと、色彩と音楽が結びついた、新しい聴取/体験をもたらす。今年2017年の夏に行われたアート・フェスティバル『インフラ INFRA』でも、素晴らしいパフォーマンスとインスタレーションを披露してくれたのが記憶に新しい。今回、Shelter Pressから新作「Musique Hydromantique」がリリースされたばかりのTomoko Sauvageに、『Green Music』について、そして彼女のソロでの活動について、話を伺った。

トモコさんはパリで、フランチェスコはベルリンと、それぞれ別々の場所に住んでソロとして活動されていらっしゃるお二人が、共にプロジェクトを始める何かきっかけはあったのでしょうか。

Tomoko Sauvage(以下T) ベルリンは昔からよく行く機会があり、2009年にモーマスと森本誠士さんと一緒にベルリンで演奏をした時に、フランチェスコが展示をしないかと声をかけてくれたのが始まりです。彼はGRIMMUSEUMというギャラリーでサウンド·アート関連のイベントをキュレートしていて、私の楽器にはビジュアル的な要素があるから、展示をやるべきだと話してくれて。それまで視覚を意識して音楽制作を行ったことはなかったのだけど、氷が溶けるタイミングでランダムなパーカッションが鳴るインスタレーションを展示用に考案しました。ビジュアルを含めた制作の方向に行くようになったのは彼のおかげとも言えます。そのときの展示は、フランチェスコが全面的に手伝ってくれて、遊戯的で、ファンタジーに富んだ彼の制作プロセスと姿勢に大きく影響を受けました。そうした繋がりがあり、一緒に音楽を作るようになりました。

『Green Music』というプロジェクトにある、コンセプトやバックグラウンドについて教えてください。

T ある日、小杉武久さんが書かれた『音楽のピクニック』という本で、フルクサスのアーティストであるヘニング·クリスティアンセンの「緑の音楽」の存在を知りました。この「緑の音楽」のアイディアをフランチェスコにもちかけて、私たちなりに再解釈したものが『Green Music』です。ヘニング·クリスティアンセンというアーティストは音楽や生活を含め、あらゆる行為を緑という色彩に結びつけようとした人物です。例えば楽器を緑に塗ったり、耳を緑に塗ったり、緑の光をあてた空間のなかで演奏したり、緑色の絵画やインスタレーションを発表したり。本を読んだ時は彼の音楽にスコアがあると思っていたのですが、その後ご子息さんとコンタクトをとって、彼にまつわる話を色々聞いて、楽譜はないと知りました。クリスティアンセンは緑という色彩を用いて、音楽の中に自然を取りこもうとしました。実際に緑の楽器に囲まれていると、自然と音楽が融和していくかのような感覚になり、まるで森や山を眺めているかのような鎮静作用や効果がある。自然の力を引きつけるような力があるんですね。

そうしたクリスティアンセンのオリジナルなアイディアに影響を受けながら、お二人は緑にまつわる、様々なエピソードやオブジェクトを集めているとお聞きました。

T 演奏旅行をするたびに、各国で自然に、偶発的に、緑にまつわる迷信や民話を収集するようになりました。例えばフランスで劇場に緑色を用いるのは不吉だという言い伝えがあります。演奏直前にそのことを言われて困ったこともあったんですが。また香港にツアーで行った時、フランチェスコが緑色の帽子をかぶっていたら地元の人にとても驚かれたんです。香港では「緑の帽子」=「奥さんが浮気をしている」という意味らしくて、間男を指すらしい。なんでも二つの単語の発音が類似しているらしいのが由縁みたいで。そうした興味深い緑にまつわる迷信や民話は文献などを通して自分たちでリサーチすることもあるけれど、どちらかというとツアーなどで訪れる時に、地元の人たちが教えてくれることの方が多くて。その方が意外性があって面白いですね。そういう偶然、ひとつのミラクルとの出会いを大切にしています。だから演奏会場に事前に緑色のものを用意するように頼んでおいたり、お願いしなくても観客の方が緑色の服装やアクセサリーを身につけて来てくれたりします。『Green Music』の活動では、音楽を超えたさまざまな生活や状況、環境とのインプロヴィゼーションが、アウトプットのアイディアを生み出すうえで大きな役割を果たしていると思います。

F 「インプロヴィゼーション」という言葉は、予期していないものとの遭遇、という意味でもある。例えばレストランに入って、隣の席で誰かが緑にまつわる話や噂をしていれば、私たちは熱心に耳を傾けて、ノートを取るでしょう。それが自分たちの音楽にとって、大きなインスピレーションになるかもしれませんからね。

フランチェスコさんは「緑」という色彩に関して、どのような印象をお持ちでしょうか。

Francesco Cavaliere(以下F) 緑に対する印象といえば、まず最初に独特の湿り気や、苦味が思い浮かびます。小さいときにトスカーナで、新芽の茎をいつも食べていたからです。緑を思い浮かべると、ジューシーだけれど、まだ熟れてはいなくて苦味のある、そんな不思議な味が自然と思い起こされます。吸血鬼がリンパ液を好むみたいに、緑の味の中毒になっていました。音楽についていえば、グリーン·ミュージックには自分の中にあるイメージや心象風景がはっきりあって、それを具現化するのは困難だけれど、彼女といっしょに緑の音色を探し、捨象しては選び直したり、楽器や物を作ったり、どうやってオーガナイズするかを学んできた。シンプルなチューニングと音の動きが、この音楽におけるバランスの中でとても重要。そこから生じる豊かな流れのようなものが緑という色彩にはあって、その色彩に容易にチューニングできるようになった自分たち自身に時々驚かせられることがある。まるで陸と水中を行き来しながら自己の状態を常に変化させている両生類のように、沼のような陰の要素をもちつつ、同時に明るくしたりしながら、自由自在に色を操ることができるんです。

確かにお二人の『Green Music』に現れる「緑」には、色々なバリエーション、グラデーションがあり、とても繊細で微妙な変化があるように思います。

F さっきの比喩の続きで言えば、両生類がある一定の時間が立つと陸地から水中に戻らなければならないみたいに、私たちの音楽もいつも色彩を変化させているのです。その変化は音楽のハーモニーに必要なもの。自分の意識より先に、脳がこれから起きるであろう出来事を事前に察知するかのように、その変化の必要性を感じ取っています。時には演奏中、とてもディープなゾーンに入り込む時もあるけれど、一箇所に偏りすぎないように、ある程度幅を持ったエリアの中で常に変化し、流動し続けることが大事なのです。

では『Green Music』において、実際にどのように音を具現化していくのか、そのプロセスのようなものがありましたら教えてください。

T あらかじめ決められた演奏というのはないですが、完全に即興というわけでもありません。 作曲された部分と新しい素材を即興的に組み合わせていくことが多いです。事前にファイルの交換や話し合いである程度お互いが準備している音の素材は把握しているんですが、サプライズとして、新しい音を現場で相手に与えたりすることもあります。既存の要素にぶつけたりくみあわせることで、そこにライブ感がでて、その場での偶発的な勢いや驚きや集中力が生まれます。緑が偶然を必然に変えてくれるという意味では、「楽器」の緑色が果たす役割は大きいです。たまたま緑色だったために手に取った事物、オブジェクトから新しい音が生まれたり、その土地の緑色にまつわる伝説や言い伝えなどから私たちの音楽のストーリーを発展させることがプロセスの中心となっています。マイクという楽器が、アコースティックな音を拾うという現象には、脆さと同時に未知という可能性を含んでもいる。不確定な部分をあえて設けながら、お互いが信頼によってその未確定な箇所を補完していくことで私たちの音楽は成り立っています。私たちの関係はどちらかというと、もちろん直接的な意味ではありませんが、カップルのようなものに近いかもしれない。私たちは住む国が違うので、直接会って制作を進めるということは出来ないけれど、離れているからこそ良い面もある。プロジェクトを進めていくには、お互いの深い内側へのエンゲージメントや信頼、それをうまく作用させていくための努力が必要。またそれぞれがソロで活動している私達にとって、共同で制作をするという行為は、お互いのエゴを乗り越えるための機会でもある。『Green Music』は対話とスピリチュアル·ファイト、つまりエゴとの軋轢をなくして、対話と相互間の信頼によって、オープンな心を開いて、最大限の自由を得るための闘いでもあるんです。

F コラボレーションでの音楽制作は、2010年からはソロでのプロジェクトに専念してきた私にとってはスペシャルなもの。「じゃあ一度、気軽に一緒に演奏してみて、そこから作っていこうか。」というわけではなく、形にする前に時間をかけて話し合い、互いのアイディアやアティトゥードを深くシェアする必要がある。また実際の制作やコンサートなどの演奏においては、常に相手の視点に立ちながら、柔軟な考えを持たなければいけない。自分ではない他人と時間を共にし、相手の内側に入り込むということは素晴らしいこと。また私たちの場合、母国語ではない言語で自分の気持ちを伝えあうという点でも、学ぶところが多いとも言えます。

トモコさんにお聞きしたいのですが、ウォーター·ボウルズという珍しい楽器を使うようになったきっかけはなんだったのでしょう。
 
T もともとジャズピアニストを目指していたのですが上手くいかなくて、自分なりの音楽を探っていた時に、アリス·コルトレーンやテリー·ライリーの影響でインド音楽に傾倒していったんです。そこで南インドの伝統楽器であるジャラタランガムに出会って、とても感銘を受けました。それにハイドロフォン(水中マイク)を組み合わせて、今の自分がメインで使用している「ウォーター·ボウルズ」という楽器に発展しました。「ナチュラル·シンセサイザー」と呼ばれることもあります。私の音楽は実験音楽やアンビエントとカテゴライズされることが多いのだけれど、ジャンルは全く意識せず、どちらかというと「ウォーター・ボウルズ」という楽器の可能性を追求したいという思いで音楽制作をしてきました。

私たちにとってありふれた「水」という物体を、楽器という媒介物として用いるということはとても興味深いです。

T 「ウォーター·ボウルズ」は完全にコントロールできないという点で、とても難しい楽器。水が蒸発すると周波数がすぐ変化してしまうので、決められたチューニングはできない。また水の揺れやボウルのもつ倍音、演奏する空間によって実際に出力される音は大きく左右されます。時間をかけて一定のコントロールはできるレベルになったのだけど、半分は環境下の偶然性や成り行きに委ねられているので、そのバランスポイントを探るのが私の役目。だから、音楽の主体はあくまで「ウォーター·ボウルズ」という楽器であって、演奏を行う「私」ではないです。自分がこのような音を出したいというより、どうすればそれが空間にうまく適合して響くかを調整するためにいるというか。役割としてはある意味、シャーマンのような媒介者に近いかもしれませんね。

新しいアルバム『Musique Hydromantique』は、英語では「Hydromancy」といって、古代に行われていた、水占いを意味します。例えば水面に石を投げて、その波紋の数や水の色で明日の天気や、戦争の状況などを占っていたようです。その考えに通じる点は多くて、「ウォーター·ボウルズ」という楽器が、部屋の湿度や温度、建築的構造、周りにいる人々などの影響を受けた音響を通して、偶然から必然を生み出すというような性質をもった不思議な楽器だと思っています。そういえば新潟で行なったコンサートでは、共感覚を持った人が来てくれて、私たちのパフォーマンスの感想を色々教えてくれました。彼女は聴覚と視覚が交感した、つまり音が実際に「視える」タイプの共感覚者で、演奏中楽器から鳴らされた音が、水やセラミックといった物質に還元していくように「視えた」らしいんです。自分は共感覚者ではありませんが、そういう共感覚者的な複合したイメージにはインスパイアされます。

演奏中に用いられるフィードバックとは、具体的にどのような手法なんでしょう。

T フィードバックは日本語でいうハウリングと呼ばれる現象。ハイドロフォン(水中マイク)とスピーカーとの間に生まれるハウリングを、音の周波数を水の量でコントロールし、また音の大きさもミキサーでコントロールして演奏します。それぞれ水の量でチューニングされた水の張ったボウルが相互に作用し、倍音同士が作用しあったり、また部屋のアコースティックに非常に左右されます。このハイドロフォン·フィードバック(ハウリング)は音響学的には、世界でもユニークなテクニックだと自負しています。身体の動きを通して音を変化させるという行為は大変な集中力が必要で、反復性も相まって、瞑想に近いと思うことがある。とあるフランス人のタオイズム研究家が、瞑想は内的アルケミー(魔術)だと言っていたこととも深く通じる気がします。

フィードバックの音を録音することは、まるで幽霊を写真で撮影するかのように難しい。専門家に一度聞いてみたいのですが、私の素人としての考えでは、骨に直接振動する音を聞いているので、通常の耳を基調とした音の捉え方とはまた別なのでは、と思っています。その場では音が大きく出ているのに、マイクで出力すると非常に小さな音量だったりする。音も電気も目に見えないものなので、フィードバック(ハウリング)には幽霊的なものを感じます。扱いづらい楽器ではありますが、空間に応じてとても綺麗なフィードバックが出る時があって、その奇跡のような瞬間、私のコントロールと偶然が重なった際に生じる調和を探しています。また演奏の際には、音がもつ「彫刻性」を意識しています。具体的には自分の手を使って水位を変化し、水の動きの「フォルム」をボウルの中で変化するさせることによって、音のカーブやフォルムを描き、空間を揺れ動く水の(音響的)彫刻を形成する、というイメージを持って演奏しています。言葉では言い表しにくいのですが、一種のカリグラフィー、書道の考えに近いかもしれません。

ではここで、少し個人的な話に移らせてください。トモコさんはフランスに移られて長いと思いますが、アーティストという視点から、日本人としてのアイデンティティを感じることはありますか?

T 向こうにいるときに普段意識することはあまりないけれど、こうして日本に帰ってきたときにやはり「自分は日本人だな」と実感することはあります。ただどちらかというと自分が属する音楽シーンのコミュニティーで培われている、たくさんお人の関わり合いから生まれる「私」としてのアイデンティティが大きく、よりマルティカルチュラルな考えを持っています。でもよくよく考えてみると、私のやっていることはやはり非常に日本的、東洋的なのだと思います。2つのカルチャーを比較してみると、西洋人は理性的で、全てを言葉に変換して理解しようとする。それが良い意味で現れているのが政治です。健全なディスカッションがあり、デモクラシーがある。日本は感覚的で、言葉にしないことを美徳とみなす曖昧な観念があるので、そこに集団主義が加わって、論理的ではない出来事が政治の世界で平然とまかり通っています。政治の世界ではその日本人らしさがマイナスになっているけれど、芸術や感性の面においては、深みになっていると思います。自然との官能的な関係性を日本人はとても大事にしますよね。月を愛でたり、虫の音色を音楽として捉えたり、食文化や温泉の文化、アニミズム、擬人化、といった風習は日本独特の風習です。両者の良いところ、東洋的感性と西洋的理性 から影響を受けられたら最高だと思います。

インターネットを介して、そういった日本の美的感覚が若い人たちの世代で、世界で共有されるようになっていますね。国を隔てても、色々な日本の文化が思わぬところまで拡がっていたりします。アートはやはりまだ西洋文化的ですが、音楽という分野においては、どちらかというと感覚的なものなので、普及しやすいような気がします。

T 色々なジャンルがミックスし合う文化や、マルチなプラットフォームが世界では増えてきています。世界の色々なところで、東洋と西洋、南と北がどんどん近づいていると感じるし、また、ジェンダーも最近の大きなテーマとなっています。そういったことが、アートや音楽シーンをとてもエキサイティングにしています。日本は東洋文化の代表として大きな存在感をこれまで世界に示してきましたが、それ以外の周辺の国々の文化にもフォーカスが当てられるようになってきています。

アーカイブ、環境がインターネットによって整いましたからね。しかし無限に音楽を発見できる環境は、すべての価値観が相対化されてしまったので、メディアの存在意義を考慮すると、そういった音楽を言葉で発信することがとても難しくなってきています。スターの登場が必要ないので、これまで通りのやり方ではない音楽の伝え方を探さなければいけません。

T そうですね。また私は、そうしたインターネットの登場という転換期だからこそ、フィジカルな、交流し合える「現場」の必要性を人々がとても求めていると感じます。今回呼んでいただいた『インフラ』でもそのことを痛感しましたし、とても重要な場所だとも思いました。

震災以降、日本にはインタラクティブな現場が少なくなってしまったと私は感じていたのですが、今回の『インフラ』のように、また色々な分野や界隈の人々がマルチに交流し合えるような場所が、アンダーグラウンドなシーンにおいてまた現れはじめました。

T そういう状況を踏まえても、私はアーティストの役割として、「コネクト」することに大きな意義があると思っています。人と人だけに限らず、場所と場所、自分たちの音楽やアートにおける素材と素材であったり、アイディアとアイディアであったり。広い意味での結びつけと共有が自分の貢献できることのひとつかなと。ミュージシャンとして色々な国を訪れる機会があって、世界中に素晴らしい活動を展開する人々がいることにいつも感銘を受けています。それぞれの国に私を呼んでくれる人々と、お互いのつながりを実感しますし、よりその輪を広げるための努力をしないといけないと思います。

アーティストは自分の関心をつきつめることも必要だけど、現代的、同時代的な問題をいち自分の問題として捉え、考えるも大事。20世紀のアートはaesthetic、21世紀はethicであると誰かが言っていました。私自身もコラボレーションやコミュニティといった倫理的な美を追い求めているけれど、それも一つの芸術の形態だと思っています。現在、世界はキャピタリズムを中心に回っていて、さまざまな弊害が生じている。インディペンデントのシーンが互いにコネクトしながらそれに対抗し、お金以外での別の価値観をきちんとシェアし、発信することが自分とそこに所属している人々にできることだと思うのです。アーティストと、それを愛する人、両方が情熱を持って活動し、ポジティブな雰囲気を生み出せるコミュニティを作っていくことに大きなパワーを感じています。

Tomoko Sauvage
https://o-o-o-o.org

Francesco Cavaliere
https://soundcloud.com/f-cavaliere

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Vapor Aesthetics: A look back at 2017

“Vaporwave Is Dead” アンダーグラウンド的な本質は死してなお生き長らえるVaporwaveの「今」を観測し続けたこの連載、今回はその総括として2017年を振り返ってみよう。

まずは先日、Vaporwaveコミュニティが大きく湧いた出来事から。ゲームスタジオDynamic Media Triadが現在開発中のビデオゲーム『Broken Reality』のデモバージョンが、新たなトレーラーと共にリリースされた。

近年ではVaporwaveデザインにインスパイアされたゲームが数多く生み出されている。ドイツのゲームスタジオSupyrbがiOS向けに開発中のゲームアプリ『M Δ R B L Θ I D』、オーストラリアのゲームデザイナーDan Vogtが開発したゲームアプリ『DATA WING』などが著名であるが、『Broken Reality』はその先駆けであった。蒸気の美学に満ち溢れた三次元空間を自由自在に行き来し、探索をしたり、友だちを作ったり、ソーシャルランク向上のため有象無象に「いいね」を押して回ったり、消費活動に勤しんだりすることを目的としたアドベンチャーゲームだ。あらすじはこうである。「あなたのコンピューターおよびインターネットを始めとするほとんどのデジタルサービスは『NATEM』という大企業の管理下におかれています。『NATEM』はさまざまなテクノロジーサービスをよりよく統合するため、インターネットを現在の2Dから3次元コンピュータグラフィックスへ変換。ユーザーは、物理的な空間と化したウェブサイトを自由自在に移動できるようになり、コンピューターから得られる体験はもはや現実となりました。あなたも『NATEM』の世界を体感しませんか?」

『#SPF420』以来、インターネット上で不定期に行われてきたVaporwaveフェスにもリアリスティックな潮流が。VR(ヴァーチャル・リアリティ)だ。Esprit 空想ことGeorge Clanton率いる〈100% Electronica〉は、VaporwaveをモチーフとしたVRムービーを数多く手掛けるYoutubeチャンネルUnreality Journeysと共同したライブストリーミングイベントの告知を行なった。出演はEsprit 空想、『Deep Fantasy』で知られるS U R F I N G、新人作家Satin Sheetsの三者。詳細について〈100% Electronica〉はこう記述している。「誰もが2Dのコンピューター上でYoutubeやFacebookを見たりチャットをしたりできますが、VRヘッドセットでは3Dを楽しめます。100人もの人々がこのVR世界を訪れて探索でき、グランド・セフト・オートのようにリアルタイムでパフォーマンスと対峙することができます。バーチャルミュージックフェスティバルとして想像してみてください。 あなたは、アプリでVRの世界で自由に歩き回ることができます。」先着100名に専用のアプリが配信され、VR世界でライブ体験ができるという画期的なこのイベントに、多くの好事家たちは画面に釘付けとなった。しかしモニターはローディング画面を保ったまま、およそ三時間が経過。現地では夜も更けた頃、機器の不調だとGeorge Clantonは申し訳なさそうに詫びた。その日、VR世界への扉が開かれることはなかったが、100% Electronicaは後日改めてライブパフォーマンスを行うと告知している。インターネットの仮想現実、というまるで虚構のような世界で得た体験は、果たして現実となるのだろうか。

初期のVaporwaveも、もともとは別名義の乱用の上に成り立つ虚構だった。それが今、良くも悪くも現実のムーブメントとして成り立っている。シーンが形成される以前よりVaporwaveスタイルの音楽活動を続けてきた骨架的は、4年ぶりに新作のアルバム『Opal Disc』『Sunset Melody』を2作同時リリース。そこで7年もの間「vaporwave」というタグを付けることを頑なに拒んでいた彼は、今年すべてのアルバムにそのタグを冠した。初期Vaporwaveの意匠が顕現したとても重大な出来事と言っても過言ではないだろう。

またVaporwaveはカセットテープやレコードという実体を伴った物理フォーマットとなって当たり前に手元に届いている。インターネット上で生まれたにも関わらず、Vaporwave作品の多くはカセットテープを筆頭に、レコードやCDといった物流フォーマットとなってリリースされることが非常に多い。去年はおよそ700以上もの作品がカセットテープとなって世に放たれた。年が明けてその余波は、日本のディスクユニオンにてVaporwave中古カセットコーナーとなって観測される。それほどまでに現行のVaporwaveシーンではフィジカル至上主義的な思想が蔓延っている。そしてそれは年々エスカレートしており、今年がその最たるものだったように思う。アーティストが新作の告知を行えば、必ずと言っていいほどカセットテープについてのリプライが飛び交う。Facebookのコミュニティ『Vaporwave Cassette Club』の参加者は今年7300人を突破するなどの熱狂ぶりだ。〈Olde English Spelling Bee〉からはMacintosh Plusの『Floral Shoppe』がLPとなってリリースされ、〈Hologram Bay〉からBlank Bansheeの全作品がCD、カセットテープとなって。〈Neoncity Records〉からはマクロスMACROSS 82-99の『Sailorwave』『A Million Miles Away』がCD、カセットテープ、LPでリリースされるなど、今年1年だけでVaporwaveの金字塔とも言うべき名盤たちが相次いでフィジカルに姿を変えた。しかしその反面、Macintosh Plusの『Floral Shoppe』のカセットがDiscogsで10万円近い値で取引されるなど高額転売の横行(最悪なことに、レーベルオーナーまでもがマニア向けの法外なマネーゲームに手を出している。)、それに手が出せないコレクターたちによって密造されたブートカセットの蔓延など様々な弊害を生じさせている。〈Dream Catalogue〉を主宰するHKEやOneohtrix Point NeverことDaniel LopatinもTwitterで苦言を呈したほどだ。今年〈New Masterpiece〉が発刊した『蒸気波要点ガイド』すらもコミュニティ内でPDF化され、質の悪いブートとなって出回った。また、〈Olde English Spelling Bee〉の『Floral Shoppe』のLPについて沈黙を貫いていたVektrodは「このフィードで共有されていないのならば、それは非公式だ」という趣旨のツイートを残し自身のBandcampページから『Floral Shoppe』『札幌コンテンポラリー』の2作をリムーブ。何やら物々しい動きが見られる。そんな不穏な話はさておき、カセットテープリリースが盛んな去年を経て、今年は新たな試みがあちこちで行われた。レコードの帯をカセットテープ用にリアレンジした「Obi Strip Cassette(Obi付きカセットテープ)」が猫 シ corp.によって発明されたり、仮想夢プラザの超大作Vaporドローンは〈Ephemera Archives〉によってカセットテープ16本に収められ、〈SEA OF CLOUDS〉によるフロッピーディスクでのリリース、またMDフォーマットを採用した〈Crystaltone〉、さらにLuxury Eliteの『Fantasy』や、death’s dynamic shroud.wmvの一員として知られるJames Websterの映像作品がビデオテープでリリースされ〈Baudway Video〉というVHS専門のレーベルが誕生するほどだ。Vaporwaveシーンが日々進化(深化)を続けるのに伴って、フィジカル部門も独自の生態系を築き上げている。

国内での動向についても振り返ってみよう。Vaporwaveは2012年から2013年にかけて日本でも話題を席巻したものの、それ以降ブームは終わったものだと多くのリスナーは見切りを付け、シーンは瞬く間に縮小していった。一方で海外では人気が途絶えることはなく、今年〈New Masterpiece〉から世界初のVaporwave専門Zine『蒸気波要点ガイド』が登場するなど日本でも当時とは異なる形で大きく盛り返すこととなった。それに伴ってVaporwaveに対する解釈も日に日に拡大していく。9月には「Vapor地獄」という個展が開催され、多くのイラストレーターや彫刻家、写真家、映像作家などが各々の解釈によるVaporな作品を展開した。日本のニコニコ動画界隈のコミュニティにおいても、もはや記号と化したヘリオスの胸像がイラストとなって意味もなく登場することも珍しくなくなった。80-90年代へのノスタルジア、レトロな家電広告、インターネットアート。もはや「Vaporwaveっぽい」の一言に該当する別文脈の諸々をもスクリューしながら肥大していくVaporwaveというミーム。アメリカでは5万人以上もの生徒数を誇る名門大学ニューヨーク大学がウェルカムウィークに際して制作した公式ビデオにおいてもVaporwaveの意匠が用いられている。また、去年韓国のアイドルグループNCT DREAMの『Chewing Gum』のミュージックビデオにおいてパステルカラーを基調としたVaporwave風デザインが採用されて以来、K-POPなどにもVaporwaveの美学が散見されるようになる。今年はDIA「Can’t Stop (듣고싶어)」、GIRIBOYの『Whyyoumad』、さらにはサウンド面からVaporwaveにアプローチしたようなJazzyfactの『하루종일』、CLCの『어디야? (Where are you?)』が話題となった。消費社会と企業文化の残滓をこねくり回して創り上げられた初期Vaporwaveの美学が、今や大企業によって再び消費され始めているというシニカルな現象が各所で起きている。

そんな中、今年起きた最も大きな動きといえば「#takebackvaporwave」というハッシュタグをきっかけに巻き起こった一連の運動だ。Esprit 空想ことGeorge Clantonは、InstagramなどのSNSにおいてハッシュタグ「#vaporwave」が心無い人たちによって荒らされ、Vaporwaveと何ら関連のない画像が溢れかえるばかりに留まらず、人種差別や誹謗中傷といったヘイト活動に用いられていることについて言及。彼の一連のツイートを発端に、懐かしさとシュールレアリズムに満ちたかつてのVaporwaveの原風景を取り戻そうという運動が「#takebackvaporwave」というスローガンを込めたハッシュタグを掲げてスタートした。が、現状が変わることはなかった。このタグはもはや忘れ去られようとしており、結果的にVaporwaveの無力感を露呈する結果となる。今年1月、Vaporwaveの手法を非人道的なプロパガンダに流用した”Fashwave”や”Trumpwave”が大きな議論を巻き起こす。対抗するようにアンチ・トランプをテーマに掲げたアルバム『Fire Wall』が企画され、参加者を募ったもののプロジェクトは頓挫。12月、FCC(米連邦通信委員会)は「ネットの中立性」を撤廃することを決定。冷徹な現実世界と呼応するように、Moshe LupovichことwosXが提唱するHardvapourが〈H.V.R.F. CENTRAL COMMAND〉を泉源に毒ガスのように噴出し、硬質なビートが緩やかな蒸気の波を埋め尽くそうとしている。La Mano Friaの主宰するレーベル〈Sud Swap〉からリリースされた築地市場の豊洲移転問題を題材にしたToyosu Tekko VisionsによるVaporwaveアルバム『築地』に代表されるように、リアリズム志向な作品も数多くリリースされた。Google翻訳のリアルタイムカメラ機能が、画面ごしの現実世界を不自然な日本語で埋め尽くしたVaporな出来事から幕を開けた2017年。この年を表象するのは「現実」そして「拡張」というふたつのキーワードであろう。蒸気の波は、もはや現実へと漂い始めている。

最後に、そんな2017年を象徴するベストディスク5枚を選出した。上半期ベストと内容が被るものもあるが、ぜひ2017年の終わりに耳を傾けていただきたい。

2017 BEST DISC 5

Vektroid – Seed & Synthetic Earth

Ramona Andra Xavier、常にアップデートされていく彼女を未だにVaporwaveの枠組みに収めて語るのは極めてナンセンスではあるが、彼女がかつてMacintosh PlusやNew Dreams Ltdなどの名義で打ち立ててきた金字塔、そしてヒューストンのラッパーSiddiqとの共作『Midnight Run』を始めとする近年の諸作、それらの根底に共通して根付くのものは、きっとギークなアウトサイダーなりの解釈によって再構築した「ポップさ」だと思う。Vektroidによる最新作『Seed & Synthetic Earth』は、そんな彼女なりのポップネスが突き抜けたような快作。躍動感あふれるメロディがMIDIな音色を引っさげて飛び跳ねていく疾走感、織り成されるグルーヴはむせ返りそうな程にエモーショナル。思えば、彼女が今年9月にFACT Magazineに提供したMIXはこのリリースへの布石だったように思う。蒸気のミームに毒されたナードたちを置き去りに進化を遂げていく最新鋭のVektroidを聴くべし。

Nmesh – Pharma〈Orange Milk Records

サンプリングミュージック史に刻まれるべき傑作。

Psychic LCD – FACADE〈Ailanthus Recordings〉

Lasership StereoやDiskette Romancesなどの名義でも知られるPsychic LCDによる4年ぶりの新作『FACADE』が〈Ailanthus Recordings〉から。2013年に〈Fortune 500〉からリリースされた前作『Nexxware』で発揮されていた審美性はより研ぎ澄まされ、展開されていくのはヴァーチャル・リアリティ空間に溶け込んでいくようなサウンドスケープ。アンビエントの再評価の著しい昨今、ぜひ耳を傾けていただきたい一作だ。Psychic LCDはもともと、Lasership Stereo名義で『Soft Season』『Meet Local Singles』の2作を同レーベルから発表しており、本作『Facade』によって6年ぶりに〈Ailanthus Recordings〉へと復帰を遂げることとなった。6年もの間最前線でシーンを牽引する〈Ailanthus Recordings〉には心から大きな賛辞を送りたい。

Various Artists – Memories Overlooked: A Tribute To The Caretaker

Leyland KirbyのプロジェクトThe Caretakerのトリビュートアルバム。キュレーターはNmesh。およそ90名以上ものVaporwave作家陣が参加する大ボリュームのアルバム。デジタルはアルツハイマーの支援団体に寄付されるとのこと。V/Vmなどのエイリアスで法外なサンプリングを繰り広げていたLeyland KirbyとVaporwaveが結びつくのはとても面白い現象。 実際、NmeshのもとにLeyland Kirby本人から好意的なメッセージが届いている。

chris††† – social justice whatever

現行Future Funkシーンの代名詞的な存在である〈Business Casual〉を主宰し、今年はさよひめぼうといった多くの先鋭的な才能を見出してきた凄腕のレーベルオーナー、chris†††ことJohn Zobele。SNS上では自身の存在すらミームと化し、圧倒的な存在感でVaporwaveシーンに君臨するインターネットミームの権化による最低最悪のミックステープ『social justice whatever』が自身のBandcampからリリース。彼自身も「the worst album ever.」と称すように、その内容は、商業的にヒットを収めた往年の名曲や、著名なインターネットミーム動画をmp3でぶっこ抜き、歪ませ、切り刻み、その断片を繋ぐというよりも雑多にぶちまけたかのような驚愕の内容。用いられている楽曲はスクリューによって捻じ曲げられ、原型を留めていない。この時点で元ネタへのリスペクトは皆無であるが、極めつけは、再生されている音楽は、聴いている最中にまるで飽きたとでも言わんばかりに突如としてスキップされ、次の曲、次の曲へとせわしなく転換していく点だろう。アメリカのレコメンドエンジンEcho Nestは、膨大なビッグデータをもとにSpotifyユーザーの視聴傾向を分析したところ、48.6%のリスナーが音楽が終了する前にその音楽をスキップしているという結果を発表。カット&ペーストされたEDM楽曲のドロップ部分のみが寄せ集められたジャンクフードのような動画が無数に蓄積するYoutubeチャンネル、その対極に位置するLorenzo SenniによるMIX、おびただしい数の情報が流れ行く濁流のフィードに乗ってWebブラウジングをしていくような不健全さ、それによって生じる多幸感。これは大量消費社会への賛美歌なのか? はたまた鎮魂歌なのか?

2018年、Vaporwaveはどこへ向かうのだろう。

捨てアカウント
島根県出雲市在住者。2015年ごろからリビングルームとインターネットを拠点に活動開始。〈New Masterpiece〉が発刊した史上初のVaporwave Zine『蒸気波要点ガイド』やニューエイジ・ディスクガイド『NEW AGE MUSIC DISC GUIDE』などに寄稿。レーベル〈Local Visions〉を主宰。すぐに捨てるはずだった使い捨てアカウントに愛着が湧いてしまい、捨てられないまま現在に至る。

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食品まつり a.k.a foodman × SUGAI KEN

現代アンビエント/ニューエイジにおいて、新しい価値観と美学をもたらしたVisibel Cloaksの11月日本ツアーを目前に、最終日28日の東京公演に出演する食品まつり氏とSUGAI KEN氏による、異色の対談が行われた。今回が初共演となる2人の音楽性は、一方はアンビエントの「静」、一方はダンスミュージックの「動」を軸としながら、独自の「和」の感覚を作曲の内に取り入れており、彼らのアップデートされた新鮮な電子音楽は、国内/外を問わず人口に膾炙している。
普段は異なるフィールドで活動を行う2人だが、対談からいくつか意外な共通点が明らかに。お互いが思う「日本」について、現在のシーンについてなど、あれこれ話してもらった。

SUGAI KEN(以下S 最初からいきなり重いかもしれませんが、今日は食品まつりさんに質問を考えてきたんです。「10年後まで音楽を続けるには何が必要ですか?」という質問です。

Foodman(以下F もう亡くなっちゃったのですが、ススム・ヨコタさんが大好きなんです。トレンドを押さえてはいるんだけど、そこに入り込み過ぎない絶妙なポジションをずっとキープし続けているのがすごいなと。

S 「付かず離れず」ですかね。

F 何かに巻き込まれて消費されるというのではなく、適当な感じで「いる」みたいな。たまに若者の感覚も取り入れつつ、おっさんの部分もあるからそこから離れてみたり。

S 食品さんはオープンマインドに活動されているのに、打ち出す作品で物議を醸したり、そのバランスがすごいですね。

F 自分のミュージシャンとしてのスキルは結構低いんですよ。で、その低さがアウトプットされるので、自分の感じにならざるをえない。真似できないんですよね。その部分でいえば、スガイさんも日本のものを解釈して自分なりに表現するという楽しさを追求している人ですよね。他にやっている人もあまりいないし。

今のスタイルにいく何かきっかけはあったんですか?

S もともとは高校生の時に、地元の友達と一緒にヒップホップ・グループを組む、みたいなところから始まって。そこで順当な流れでサンプリング手法を知って、ソウルとかを聴いて、「海外の人はルーツとしてこういう音楽を選んでいるけれど、自分達は何ができるんだろう?」って考えるようになり、次第に日本の古いもので使えるものはないかと、今の自分の音楽の背後にあるようなものに目を向けるようになりました。 

F スガイさんの視点は結構ドープというか、キマりたい聴き方をする人だと思っていて。やっぱりヒップホップのバックグラウンドがあったんですね。そこは嬉しい。

ということは、今のご自身の音楽の手法も、どちらかというと、「ネタ」として音源を掘っている感覚に近いんですか?

S そうです。日本の音楽でいえば、由緒正しいところから出ている訳ではなく、「この音ヤバいな」という感覚が初めにあります。何度かアカデミックな分野の方とご一緒したことはあるんですが、基本自分はボンクラなのでその人たちには出せない感覚をベースにしつつ、そのコンプレックスもバネにしつつ、という。部外者、片足突っ込むくらいの感覚です。

F スガイさん今おいくつですか?

S 37歳です。

F 僕は36歳で早生まれなので、同世代ですね。当時聴いていて、同じ影響を受けたものがあるかもしれないですね。ちなみにヒップホップは最初、何を聞いていたんですか?

S Native tonguesとかです。食品さんて今横浜に住んでますよね。実は僕、地元が横浜なんです。

F 関東に来る前は名古屋にいたんですが、横浜と名古屋ってヒップホップのつながりがないですか?こっちに引っ越した時に、似た印象を感じました。

S 名古屋にはいかつい、ウェッサイなイメージがあります。

F 実際ここでは言うのも憚ってしまうような人もいらっしゃいましたね。口にするのも恐ろしい。危険な香りがあってもちろん怖いんですが、それが逆に面白いというか。今にはない異世界感がありました。

S 行く時、気合いを入れないといけないようなね。

F あと最近はめっぽういなくなってしまいましたが、普段何をしているのか全くわからないような、世捨て人がいっぱいいましたね。Forestlimitとかに行くとたまに見かけますけど。ああいうのを見ると「変なとこに来た」ってなって、楽しい感じになるんですよ。

S あのポジション、僕は必要だと思うんですよね。そういえば前にコンビニのビニール袋かぶって踊っている人をForestlimitで見て、「いいな」と思いました。

F そういうのが許容されている方がいいですよね。みんなで相互監視していても楽しくないですし。

ではスガイさんも、もともとはヒップホップとか、そちら側のシーンにいらっしゃったわけですね。

S 細々とやっていました。横浜の、外人とグラマーなお姉さんしかこないような、テリの強い人がたくさん集まる場所があって、そこでインストゥルメンタルとかをかけていたんですけれど、案の定オーナーに「ちゃんとしろ」と詰められて。自分はキャラクター的に論破するようなタイプではないですし、怖かったですね。

F そのときはラップのトラックを作られていたんですか?

S というよりは、インストを試行錯誤して作っているだけでした。

F じゃあそれが回り回って、今につながっているのかも?

S そうかもしれないですね。

F 確かに、今回のアルバムにもヒップホップ的なところがあって、嬉しくなりました。ビートはないけれど、ビートを感じました。

S そういう風に感じとっていただけるのは、自分の出処が現れていて嬉しいですね。実は自分がアンビエントと括られるのに違和感があって。Los Apson?の山辺さんが付けて下さった“和”ンビエントというワードは個人的に記念になっていますが、多分自分からそう名乗ったことはないはず。だからアンビエントと思って買った人が、「全然アンビエントじゃないじゃん」ってなるのが申し訳ないなって(笑)。

本人としては、「アンビエント」的なカテゴリーに属している訳ではないと。

S そうですね。

今回の作品『Ukabaz UmorezU』も含めてなのですが、スガイさんの制作におけるプロセスや手法を教えていただけますでしょうか。

S 最近の作り方なんですが、一つは、俚伝や郷土物から得たぼやっとした視覚的イメージをもとに、音で近づけていきます。絵画のような感覚です。二つ目は、俚伝や郷土物の中で要素分解すると数値化やパターン化できるモノを探し出して、別の音に当てはめるプロセスがあります。これは工作のような感覚で、ミュージック・コンクレートや「見立て」の概念に近い。ミュージック・コンクレートの手法はヒップホップの人たちに響くと思うんです。なぜならあれはサンプリングに近いから。

F その「見立て」とは…?

S 例えばこの携帯を「携帯」として見ずに、別のものとして流用するみたいに、対象を他のものになぞらえて表現することを「見立て」といったりしますよね。考えとしてはこれもサンプリングに近い気がして。例えばトランペットの吹く音を録音して、それを別の用途、スネアとか、全然違う用い方をしたり。本来の役目じゃない役目をさせる、というか。そういうのを考えるとコンクレートにもつながるし、サンプリングとも親和性を感じるんですよね。

F なるほど。自分もサンプリングでいえば、「この音いいな」って思ったのを使ってやる、というポイントではスガイさんと同じで。それと、これを入れると崩壊してしまうような音をあえて入れるようなことも好きですね。美しいピアノにおっさんの声をいれるとか、おかしなバランスだけど、これはこれでありなのかもしれないみたいな。

S 僕の音楽はあまリアルタイムで経験していない古きイメージとしての日本ですが、逆に食品さんは駄菓子みたいな、日常に根付いたリアルな日本感がありますよね。

F やっぱり日本は不思議な国ですよね。クリスマスやハロウィン、正月が一緒くたにあって、なんでも取り入れるし、気が強いようにみえて、実は弱かったりするし、器用だけど、そうじゃなかったり。世界のなかの不思議ちゃんですよね。だからモチーフにするものはたくさんあるんですよ。トラディショナルなものも、今のものも。「抹茶カフェ」とかやばいですね。あの同列してる感じが。昔のこととかはほぼ想像と推測で話していますが、縄文とか弥生時代にはどんな音楽があったんだろうって、勝手に想像して。

S 実は江戸とかって、僕たちが知らないだけで、今でいうパーティー感覚な人たちがたくさんいたから、今のフェスとかとあんまり違わない気がするんです。徹夜で踊り続ける郡上おどりとか、トランス感のあるものにヴァイブスを感じるんですよ。僕が祭りとかでドープを感じたのが、以前に友達と熊野古道に行った時に、それは世界遺産になった以降なんですけど、夜に八咫(やた)の火祭りをやっていたんですよ。30メートルくらいある、大きな鳥居が広大な田んぼの中心にぽつんとあって、そこでやっていて。子供が唄っている声も聞こえて、なんとも言えない感じで飛ばされて。あれがひとつの大きい経験ではあります。

F それはすごそう。

S 農村のサイケデリック感、みたいなのが好きです。あとは農村独特の「いなたさ」も好きですね。70過ぎたおじいちゃんがお祭りで、毎年仕方なくやらされている感。実際動きとかぎこちなくて、リズムもとれてないし、すごく下手なんですけど(笑)。うまくないほうが絶対いいんですよ。洗練されてないほうがエグい。個人的な考えですが、今の自分たちが欧米に憧れるように、当時の人はきらびやかな中国に憧れていて。で、食品さんの音楽にはその中国の絢爛豪華さがあると思います。

F 自分の母ちゃんが石垣島出身で、南島のカラフルな感じが好きなんですよ。沖縄も面白くて、明るくて開放的なのに、暗さも同時にあって。実際に病む人が多くて、もちろん過去も絡んでいると思いますが、自殺率も高いみたいです。

S なるほど。あと、最近の自分の経験則から見えてきたのが、僻地の芸能は情報が遮断されている分、面白いものがありますね。

F それでいうと、5年くらい前に、カラオケのデータを作る仕事をしていたときがあって。たまたま演歌歌手を手掛けていたんですが、Kプロダクションていう事務所の所属芸人がすごかった。スガイさんのいう、農村のサイケデリック感があります。YouTubeで探したんですけど、全然でてこなくて。

S それがまたいいですね。こういうの僕らがまだ発掘しきれてないだけで、いっぱいあるのかも。

F もうひとつの日本のやばさですね。今少子化じゃないですか。だから逆に上の世代の文化を取り入れていかないと、先は厳しい。演歌とかね。あれもやばいって言われているでしょう。カラオケのデータをみても、音の作り方にアンビエントっぽさがある(笑)。なにかが入ったらなにかが抜けてを繰り返していて。三番まで絶対にあって。カラオケだからMIDI音源で、アップデートされてるところも格好良いし、ビートもレゲエぽいノリが腰にくるところもあって。そこに細川たかしみたいな声がのっかってきて。彼の、あの「カァーン」とした声、大好きなんです。

S マイクなくてどこまで届くんだ、みたいな。

F こう、竹を「コーン」と叩いたときの、気持ち良さがある音なんですよ。

S もう5年後とかに、普通に演歌の人たちと一緒にやっているかもしれませんね。

F ありえますよ。それこそSonarみたいな海外のでかいフェスで出れば、会場の全員を完全にロックすると思う。声だけで全部もってかれる。細川たかしはケミカル・ブラザーズとか、それこそOPNとかとやってほしいですね。

S 自分たちみたいなアングラの場所にいると、ポップスなんてってなりがちですけど、曲作りの面でいうとレベルが雲泥の差じゃないですか。

F クラブミュージックもよいけれど、細川たかしも同列に好きです。音楽のパワーですよ、やばいものはやばい。やっぱり聴くと自分を騙せないですね。

これからそういうふうに変わっていくかもしれないですね。自分たちの世代はとにかく舶来ものに弱いというか、洋楽絶対主義だった。でも今は自分たちのものを外に出さないといけなくなってきているし、ローカルな面白さを自分たちの音楽から作っていかないと面白くない。同じ質ではないですが、食品さんもスガイさんも「和」の要素がある部分は共通してはいますよね。

F 日本の中に「和」を受け入れられる受け口があるのが面白い。

DJ krushのアルバムの漢字2文字が格好良いみたいな時がありましたよね。ほかのアジア国に目を向けると、Howie leeや、Do Hitsの周辺とか。伝統的な面をギリギリに出しながら、良い個性をだしていて。

F 同時代でいうとメキシコのN.A.F.F.I.とかもね、あの自然とでているローカルさが良いですよね。最高です。

S デジタル・クンビアとか、シャンガーンとかもですね。

F これまでよいとされてきた欧米の良さが絶対的なものじゃなくなっていて、それが痛快ですね。

海外に発信するという点からいえば、食品さんは海外でツアーをされる時に、日本人のアーティストとして見られていると意識することはありますか? あるいは演出されるとか。

F 極端に演出されることはあまりないですかね。単純にみんな音を求めて来ているっぽい。

スガイさんはバックグラウンドの部分やアートワークを含め、海外などでそこを求められそうですね。

S そうですね、自分は今こういう風に装っているので、間違った風に受け取られて、自爆する確率は高いと思います。

Rvngから今回の新作を出される際、何かレーベルから注文みたいなものはあったんですか?

S 全くなかったです。分かりやすい和楽器が入ったほうがいいのかな、とか思ったんですけれど、レーベルの意向を汲み取りながら、やりたいようにやっても大丈夫かなと。

F あからさまな和のテイストは今回のアルバムにはないですよね。

S 全くないと思います。あと日本人って僕自身もそうですが、パターン的に和のモノを使うと、「ウッ」となるじゃないですか。そこにもどううまく踏み込んでいけるかっていう、まだ正解でてないですけど。ただわかられるのも悔しいし、分かってくれないのも不毛だとは思うので、どうむっつり仕込んでうまく漂わせられるかが、今後の課題です。まあ細く長くやっていくスタンスなので、付かず離れずの距離感を維持できれば、自分の最初の質問じゃないですが、「10年後まで音楽を続ける」ことがもしかしたらできるかもしれません。

RVNG Intl. Japan Showcase Tour 2017

本誌でも以前にインタビューを掲載したVisible Cloaksの初来日となる〈RVNG Intl.〉のジャパン・ツアーが11/24~28に開催される。今回対談に登場していただいたSUGAI KENがツアーに帯同、28日には食品まつりも参加する。オルナタティブな電子音楽の傑作をリリースしてきた〈RVNG Intl.〉のショーケースということもあり、現在のアンビエント、アヴァンギャルドシーンのエッセンスを感じられる貴重なツアーであることは間違いない。是非見逃さないよう。

11/24 fri at WWWβ | RVNG Intl. – club night –
http://www-shibuya.jp/schedule/008479.php

11/25 sat at Kiageba Church | experimental rooms #27
http://www.experimentalrooms.com

11/26 sun at Marco Nostalgy (Warehouse) | RVNG Intl. Japan Showcase Osaka
http://www.newtone-records.com/event.php?eid=761

11/28 tue at WWW | Balearic Park – RVNG Intl. Japan Showcase –
http://www-shibuya.jp/schedule/008480.php

Special Guests: dip in the pool —Tokyo, Chee Shimizu —Tokyo, Ssaliva (Ekster) —Tokyo, SKY H1 (PAN) —Tokyo, 食品まつり a.k.a foodman —Tokyo, Tomoyuki Fujii —Niigata, Phantom Kino Ballet (Lena Willikens + Sarah Szczesny) —Osaka, YPY —Osaka, 7FO —Osaka, 威力 —Osaka, etc…

主催: WWW, newtone, Experimental Rooms, 協力: Inpartmaint / melting bot / scent

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Interview with HKE

旺盛な作品リリースによりVaporwaveシーンの一翼を担ってきたレーベル〈Dream Catalogue〉のオーナーであり、 以前の名義Hong Kong Expressをはじめとして、HKE、t e l e p a t h テレパシー能力者とのユニット2814などといったさまざまな名義で、100枚を超える作品を発表する。その彼はレーベルや制作活動を通じて「夢の音楽」を形作ることを目指しながら、新しいVaporwaveの枝葉であるHardvapourを経由し、モノクロームで独特の粒子感のある異郷の音楽を作り出してきた。特に今年リリースされた「Dragon Soul」は、シネマティックと形容される彼の真骨頂である抑制されたドラマ性がみごとに結晶化した、不安や昂揚といった抑揚を持つ複雑な内宇宙を旅するような作品だった。Vaporwaveが表現してきた都市固有の退屈の空気から出発し、シュールリアリズムやSFといった手法にインスパイアされつつ、その蒸気の隙間をくぐり抜けて新しい感触を持つ夢の世界を作り出そうとする、ベールに包まれてきた彼の活動について聞いた。

幼い頃から音楽に情熱を燃やしてきたそうですが、それはどのようなものでしたか? 聴くこと、あるいは作り出すことどちらに比重を置いてましたか?

フットボールとプロレスは別として、音楽は唯一、人生を通してずっと夢中になっていられるものなんだ。カセットテープを集めたり、1日中座ってラジオから好きな曲を録音したりしてた子どもの頃からずっと。僕の母親は90年代にハウスやガラージミュージックをたくさん聴いていて、僕もそういう音楽に夢中になった。子どもの頃からエレクトリックミュージックがすごく好きだったのはそのせいだろうね。トランスミュージックも大好きで、自分から聴くようになって熱中した最初のダンスミュージックのジャンルはトランスだと思う。成長するにつれて、IDM(インテリジェント・ダンス・ミュージック)、グライム、ダブステップ、ドラムンベース、そういうものも聴くようになっていった。UKの音楽シーンに登場したものはなんでも追っかけたよ。あえていえば、僕は常にすべての音楽を探求し続けてるだけなんだ。エレクトロニックミュージックという範囲はもうすっかり超えてしまってて、現在の、30歳での音楽へのアプローチの仕方につながってる。いたるところに散らばっている影響を引っぱってきて、自分の好きなサウンドやモチーフやトーンと混ぜ合わせて、新しい形を作るっていう手法にね。

未来主義やシュールレアリスムなど美術にも興味があったそうですが、Vaporwaveのなかにそうした美術運動と似たものを感じたのでしょうか?

未来主義やシュールレアリスムのようなものに対する興味は、何年も前に、生活の中の日常的なことに感じるフラストレーションから出てきたんだ。失業中で、完全に壊れていて、僕の未来にはなんの可能性もないとか、僕の音楽は自分が思っていたようにみんなに聴いてもらえないだろうっていうふうに感じてた。それで、その落胆とフラストレーションから抜け出すために、僕は未来主義のユートピアの中におぼれるようになっていったんだ。完結したことがないサイバーパンク小説をたくさん書いて、僕がその時いたところからは遠く離れた場所、宇宙のように感じてた香港や東京や色々な都市の動画をYouTubeでよく見てた。当時、日本や中国の文化音楽、映画、文字や文、精神性、歴史、そういったものにもすごく興味があったんだ。それらの都市のビジュアルや文化は、僕にとってはまさに現実逃避のエキゾチックなもので、そのドリームワールドに深くはまっていくにつれて僕自身の現実のものの見方も変化していった。ほかの誰かの夢に屈するのではなく、自分の夢に合わせて世界を変化させることができる、歴史上で人々が行なってきたようにできる、そういうことに僕は気づき始めたんだ。だから、未来主義やシュールレアリスムのような考えは、そんなに不可能なものでもないし、可能なことを抽象的に、夢のように言ってるだけだと思う。

レーベル〈Dream Catalogue〉を始めようと思ったのはなぜでしょうか? 活動の中でコンセプトに変化はありましたか?

ひとつ前の答えにも関係しているんだけど、〈Dream Catalogue〉自体が僕の夢のファンタジーだったんだ。さっき言ったように、自分が生きたいと思う自分自身の世界を作り出すことができると考え始めた時、それがそのビジョンを世の中に押し出す自信を与えてくれた。そうやって、“dream”は現実になっていったんだ。
スタートした時はかなり小さいレーベルだったし、実際、最初は自分の音楽をいろんな名義でリリースすることくらいしか想像できなかったよ。でも、SoundCloudでt e l e p a t h テレパシー能力者に出会った時、それはすぐに変わった。僕は彼にたずねたんだ、レーベルで何かリリースしてくれないかって。それに続いて、SoundCloudでどんどんほかのアーティストたちも見つかっていって、彼らみんなと、僕が以前「Hong Kong Express」の音楽でやっていたみたいな感じの、まったく新しいプロジェクトを始めた。その数ヶ月後には、レーベルはもう僕ひとりの虚栄のプロジェクトではなくなってた。新しいコンセプトで音楽を作っている、同じような嗜好を持った人たちが集まった小さなコレクティブになったんだ。ほんとに、僕たちは奇跡を起こしたみたいな気がしたよ。そして今、僕が薄汚れた貧乏人だった時に持っていた夢は現実になってる。もちろん、時が経つにつれてコンセプトは確実に変化してきてるけど。レーベルに関わるアーティストたちも一緒に進化しているからね。それに加えて、新しいメンバーが入ってきて、去っていく人たちと入れ代わっているし。でも、レーベルのタイムラインで見られる一番大きな変化は、これから数ヶ月のいつかで起こると思うよ。レーベルをリフレッシュするために計画していることがあるんだよね。

Vaporwaveというジャンルは頻繁に死を宣告されるジャンルでもあります。あなたもSandtimer名義で「Vaporwave Is Dead」をリリースしていますが、その頃はどのような心境だったのでしょう?

実は、たくさんの人がSandtimerのアルバム「Vaporwave is Dead」を誤解したんだ。アルバムの内容自体よりもアルバムタイトルに反応したVaporwaveの熱心なファンが多かったんだと思うけど。実際、あのアルバムはさまざまなメッセージとコンセプトの融合が含まれたものだった。でもその本質は、アートあるいは音楽の周期性を用いてメタファーとして人生の周期性について説くことだったんだ。この場合、そのメタファーがVaporwaveだった。でも、アルバムより先に「Vaporwave is Dead」っていうフレーズが、ばかばかしくなるくらいたくさん使い回された。あのアルバムでは、それを文字どおりの状態として前面に出してたわけじゃなくて、まったく違うことを言うためにあのフレーズを使ったんだけどね。事実、アルバムを通してVaporwaveについてたくさん細かく触れているから、あれを作っていた時、はっきりどういう意図なのかを言うよりむしろVaporwaveへのラブレターみたいになってるなって、僕は思ってたんだ。それなのに、シーンは僕がVaporwaveを破壊しようとしているっていう物語を作り上げてしまった。そうじゃなかったのに。

Vaporwaveについて僕が言おうとしているメッセージは、実質的に、シーンがそれ自体を壊してしまったし、外に向かうビジョンを失って、音楽シーンの泡になってしまったんだ。僕はそれでもVaporwaveが好きだったけど、僕自身Vaporwaveに別れを言う時期で、“Vaporwaveアーティスト”っていう肩書きで活動するのではなく、何か新しいことをやるために動く時だっていうことを感じていた。その肩書きは僕にとって妨げにしかなっていなかったから。その頃、Wolf(wosX、Wolfenstein OSX)と彼のEnd of World Raveでのhardvapourのビジョンにすごく刺激を受けた。彼は、急進的な新しいビジョンを持って、突然シーンに現れた。それは、僕が最初に〈Dream Catalogue〉を始めた時に持っていた情熱を思い出させてくれたし、その時僕がどれほどなまけものになっていたかをわからせてくれたんだ。それから、シーン全体がどうなっているのかっていうことも(あくまで僕の認識の仕方によれば、だけど)。まあ、あれは、全体としても14時間ほど座っている間にほとんどできたアルバムだったし、インスピレーションの爆発だったよ。終わり頃には僕は完全に狂ってたね。まったくばかげたおかしいアルバムだし、確かに、流して聴くためだけの楽しめるアルバムっていうより、アート作品みたいではあるけど、でも、とにかく、やっぱり作ってよかったと思ってるよ。

hardvapourの登場など、Vaporwaveは思いのほか多様な方向性を作り出していると感じます。あなたは今、Vaporwaveの未来について、どう考えていますか? 興味をいだいている方向性やカテゴリーはありますか?

僕の見方としては、その点では、hardvapourはもうほとんど関連がないし、それ自体のジャンルとスタイルをかなり確立していると思う。すごくいいことだと思うよ。Vaporwaveが型にはめられるようになって、なんでも入れものの中に入れようとする人々との「何がVaporwaveで、何がVaporwaveでないのか」っていう論争が激しくなる前の、Vaporwaveがもともと持っていた“なんでもあり”のスピリットを体現しているからね。そういう種類のものの考え方はきゅうくつで、すたれさせていくだけだって、個人的には思う。いわゆる決められたルールの中で活動するほうが好きなアーティストもいるっていうことは知ってるけど。hardvapourは(少なくとも現時点では)その考え方はほとんどないし、ほんとうにかつてのVaporwaveの真の進化系だと思う。もはや人々が音楽のスタイルとしてVaporwaveをほんとうにまだ追っているのかさえよくわからないよ。seapunkみたいに、単なるニッチなネットアートのスタイルになってしまったようにも思える。数少ないVaporwaveのスタイルのすごく熱心なファンがいることは知っているんだけどね。〈Dream Catalogue〉や僕が作るものを、僕は自分ではVaporwaveだとは考えてない。もちろん、初期のインスピレーションは残ってるし、僕自身も、たくさんの〈Dream Catalogue〉の作品も、それまで存在していなかった新しいアイデアを生み出して、僕たち自身のコレクティブの進化を通して、独自の“deram music”スタイルを事実上作り出したとは感じてるよ。

「Dragon Soul」の制作の背景についてお聞きしたいです。このアルバムはとても神秘的で、より深みが増したサウンドに進化したと感じました。あなたは「映画的」と表現していますが、その言葉はとても的確ですね。あなたの音楽は具体的な物語というより、映画に結びついた特定の気分が存在しているように思います。あなたにとってその「映画的」な感覚とはどのようなものなのでしょう?

Dragon Soulの話は、始めから終わりまでまっすぐ線が引けるような直線的な話とはいえない。実は、ここ数年での僕の内面についての話なんだ。それまでにやったことのある何とも似ていなくて、ほんとうに自分の魂をはだかにして、音楽と一緒にそこに置いた、そして、それに個人的な思いや感情を込めた。トラックのいくつかに呪文のようなものを織り込むことさえもやった。自分は誰なのかとか、自分の内側ではどんな風に感じているのかっていうことについてのアルバムを作ることは、たぶんそんなに目新しいことじゃない。アートのすべての形態において、一番よくあるインスピレーションだろうと思う。でも僕にとっては、それまでにほんとうに一度もやったことがないことだったから、新しいことだったんだ。僕は、自分自身のことについてよりも、何かほかのことについての音楽を作ってきた。もし過去にそういう感情を自分の音楽の中に込めていたとしても、ストーリーや物語性のようなもののうしろに隠しただろうと思う。でもDragon Soulでは、自分自身のすべてをその音楽に入れているような感じだった。やっている時は疲れる作業だったよ。でもリリースした時、信じられないくらいの量のエネルギーが返ってきたんだ。さっき言ったように、語るほど筋のある物語はないけど、あの中には僕の個人的な表現、愛、憎しみ、夢、悪夢、パワーや栄光の感情、不安や弱さ、ベッドに寝ころがって窓の外を見ている時の気持ち、そういったものが見えると思う。ただベールの向こうのHKEとは誰なのか、っていうことについてのアルバムなんだ。人生の中でひとりを除いては、誰かを自分に近づかせすぎることが僕は好きじゃないから、それでもまだ全体が極めてガードされているだろうけど。あれは、僕の個人的な炎の輪。世界全体から離れて、山の上からその世界を見下ろす僕と僕の愛する女の子についてなんだ。

サウンド自体への影響は色々なところからきていて、特定のジャンルやスタイルには属してない。僕が作り出したエキゾチックなサウンドのコンビネーションの結果として、それぞれのトラック個々に、僕の一部が反映されていると思う。“Dragon Blood”は、実際、僕が作った曲の中でも一番複雑な曲で、おそらく今までに作ったどの曲よりも長い時間をかけた曲だと思う。一見シンンプルだけど、実はそうでないな、って思う人はほとんどいそうにないけど。“Fire”はアルバム最後の曲で、僕のラブレター。“Love”はさらにパワフルな感情、愛自体についての曲だよ。

あなたはまた自分の音楽を「夢の音楽」と言っていますね。あなたがいまそのような意味で、「夢」を感じるものがありますか?もしあれば教えてください。

2013年の後半に、最初に自分の音楽を“dream music”スタイルにするっていう進化を始めた時、僕はウォン・カーウァイの映画にかなり刺激を受けていたんだ。だから、そういう意味では、ウォン・カーウァイは影響を与えた人っていうだけじゃなく、“dream”スタイルをその作品の中に封じ込めている人だと思う。彼の映画はとても音楽的で抽象的なことが多くて、ほとんどアルバムみたいで、その一方、僕は自分自身のアルバムの多くを物語的で抽象的で、まるで映画みたいだと感じているんだ、たとえこのふたつを比べてみたところにあいまいではっきりしない部分があるとしてもね。リスナーの心の中に何か絵や情景を描くことに関して、直接的ではなく、たくさんの細かい投げかけをする、そうすれば、ほんとうにいろんなものにすることができる。Hong Kong Expressっていうアーティスト名を使っていた時の、初期の作品の多くは、僕が夢見ていたはるか遠い場所への、理屈じゃない、ぼんやりとしたビジョンを投影していたんだ。僕が音楽という形で語っていたのは僕自身のファンタジーの再構築だった。今はHKEっていう名前で、空っぽの頭文字で、音楽を作ってる。取り組めるもののビジョンの範囲がより広くなってる。2016年のアルバム“Omnia”みたいに。“Omnia”は、あのアルバムを作っていた頃に見ていた一連の悪夢や幻覚のことだったんだ。それ自体、僕のほかの作品ともまったく違っていたね。

Vaporwaveのシーンであなたのもっとも記憶に残っているリリースは何でしょうか?多すぎてあげきれないかもしれませんが、もしよければおしえてください。

さまざまな名義や変名で優に100枚は超えるアルバムを作ってきた。そのすべてにひとつひとつの目的や、できるまでの過程がある。僕は自分が作るものに関して、曲単位よりもアルバム単位で考えがちなんだ。だから、そういう意味では、自分のアルバム「Dragon Soul」と「HK」が一番満足ができるものだと思ってる。ほかのアーティストの作品に関しては、幸運なことに、僕の好きなアーティストのほとんどに〈Dream Catalogue〉でリリースしてもらえる状況になっているから、僕が好きなものは、実際のところ、ほぼ全部が〈Dream Catalogue〉で僕以外のアーティストがリリースしたものっていうことになるよ。

小説を書いているそうですが、どんな設定か教えてもらうことはできますか?また今後、Vaporwaveのシーンについてテキストを書いたりする予定はありますか?

2009年からずっと小説を書こうとしていて、何年もの間、たくさんの小説を書き続けた。フラストレーションから全部バラバラにしてしまうまではね。本を書くっていうことはもう膨大な時間を要する作業で、僕はただのアマチュア作家だけど、フルアルバムに取り組むよりもずっと長くて大変な作業だっていうことは間違いなく言える。数年前に書いていたたくさんのものは、まさにシュールレアリストのサイバーパンクものだった。どれも完成させたことがないけどね。でも、〈Dream Catalogue〉でやろうと目指してることの土台には絶対になってる。実際、「DARKPYRAMID」っていう名前で作ったアルバムのシリーズは、もともとは2011年に6ヶ月練っていたものだけど書き終えることがなかった小説についての音楽的なリアクションだったんだ。数ヶ月前に「Dragon Soul」をリリースしたばかりだし、もうすぐリリースされる「777」っていうプロジェクトを終えたばかりだけど、どれも精神的には疲れるものだった。しばらくの間は小説を書くことに戻ろうと今は思ってる。最初の小説を書き上げられるといいなと思ってるんだ。またわくわくできる何かを。前のスタイルみたいにすごくサイバーパンクになるかどうかはわからないけど、もう何年もこういう種類の音楽を作ってきていることが、小説を書くための新しくて、さらにオリジナルなアイデアを大量に与えてくれてる。いろんな名義でたくさんのキャラクターを作ってきて、頭の中にはそれらの背景の物語がある。興味を持ってくれる人たちのために、そのうちのいくつかを出してみることは、おそらく良いことなんじゃないかなと思ってるんだ。

2814 の「新しい日の誕生」や、「Dragon Soul」はレコードのリリースも果たしましたね。レコードをリリースしようと思ったのはなぜですか?

僕が初めてフィジカルで音楽をリリースしようと思った理由は、ほんとうに〈Dream Catalogue〉のファンからのリクエストをすごくたくさんもらっていて、それに応えたっていうだけだったんだ。もともとそうしようって思い描いていたことではぜんぜんなかった。でも、僕たちの音楽のファンはフィジカルなメディアで音楽を収集することを楽しんでくれてる。2814のCDのリリースから始めて、それから要望があってカセットを出した。その1年後ぐらいに2814をもう一度出したんだけど、今度はレコードでリリースした。その時以来、新しいアルバムをどれもレコードで出せるところまで成長できた。今年の夏以降も何か起こるのを見られると思うよ。最初に始めた時は、そうなると思ってもいなかったところまで、みんなに助けられてレーベルは成長してきてる。それは、すべて僕たちと僕たちの新しいリリースを応援してくれている人たちのおかげだよ。

HKE https://hkedream.bandcamp.com
Dream Catalogue https://dreamcatalogue.bandcamp.com

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Interview with Ultrafog

水面下で漂う薄白い光の群れを頭上に、粒子状の音たちは波の振動を受けながらそのリズムと融解し、海底へと潜り込んでいく―昨年solitude solutionsからリリースされた、Ultrafogによるカセット作品『Faces, Forgotten』は、そうした深海に誘われるかのようなイメージを彷彿とさせる、瑞々しさに溢れるアンビエント・ミュージックだったが、ジャンルに規定されることのない彼の自由な音楽性は、ライブ・パフォーマンスを一見すれば分かるだろう。テクノやエクスペリメンタルといった強度のある要素を内包しながらも、「踊らせる」ことには偏向せず、モジュラーシンセとエフェクターを操りながら、偶発的に音を紡ぎだしては、異なる感触をもったレイヤーを重ね合わせていく。瞬間的に更新されては姿形が変化していく場で、私たちは適度な緊張感を味わいながら、全方位的に向けられた不確定な電子音の流動と、その発生との遭遇に高揚を覚える。
今月にはスペイン・バルセロナのレーベルangoisseからスプリット作品のリリースもひかえるUltrafogに、インタビューを試みた。

音楽活動をはじめたのはいつ頃からなのでしょうか。現在のUltrafogに至るまでの自身の遍歴を教えてください。
 中学2年の時に所属していたサッカークラブをやめて、近所の友達と適当にバンドを始めたのが最初ですかね。最初は主に90年代の日本のロックを聴いていて、それからソニック・ユースやダイナソーJR、マイ・ブラッディ・バレンタインみたいなオルタナティブ・ロックに夢中になりました。バンドではギターを弾いていました。大きな変化だったのが、大学の時に入ったサークルです。僕は神奈川の海老名市出身で、高校生の時は周りに音楽の話をできる人があまりいなかったんです。おそらく同じような環境で高校時代を過ごした人たちがそこに集まっていて、みんな僕の知らない音楽をたくさん知っていて、その中でバンドを組んでは自分たちで曲を作って、を繰り返す感じでした。そこで過ごした時間は大きかったです。色々なことをやってみたんですが、人と音楽を作ることが自分には向いていないかもしれないと感じるようになって、最終的にDAWを買って一人で音楽を作り始めました。制作を始めた頃はBurialとかAndy Stott、Onepoint Ohtrix Neverとかにハマっていて、本当に漠然としたイメージからのスタートでした。大学を卒業すると、音楽を披露する場所が無くなって、同期だった友人が誘ってくれたのがきっかけでIN HAというイベントを始めました。同じ大学だったMari Sakuraiと、BOMBORIというバンドで当時はギターを弾きながらエレクトロニック・ミュージックを作っていたRaftoを誘って、今はその3人で不定期的に開催しています。僕はスタイルを定まらないままINHAという場所を先に作って、そこで色々な人と出会って影響を受けたり悩んだりして、最近やっと今のスタイルに落ち着きました。

昨年の12月にリリースされた作品『Faces, Forgotten』について聞かせてください。これはあなたにとって初のフィジカルリリースとなりますが、普段のUltrafogのライブ上のスタイルとは異なる、静謐なアンビエント・ミュージックですね。ただテープで聞くと、曲の背後にあるヒスノイズや音粒の粗さがしっかりと意図して曲に組み込まれていて、その相互の響きが非常に面白かったです。作品のコンセプトやイメージのようなものがありましたら教えてください。
 
あのEPは、「記憶」に関する漠然とした感覚のかけらと考察のようなものがテーマとしてありました。人間の記憶は何を残しておくか自分で選択できないし、実際の出来事とは必ずズレが生じると思っています。僕の中にある主観的な「記憶」をもとに、ある特定の場所やある日の出来事とか思ったことから曲のタイトルをつけて、それを音にしようと意識して作りました。どんなに素晴らしいことや悲しいことが起きても、すごく好きな人と出会っても、また新しい出来事や出会いがあって、どんどん忘れていくし、人って都合のいいように解釈していくと思うんです。何か作品を作るって行為はその勝手な超個人的な感覚を形にすることなのかもしれない。だから「忘れる」ということが前提としてあって、人は何かを残そうとするのかなと思いました。サウンド的にはちょうど作る曲がどんどんぼやけた音像のものが多くなってきて、僕が考えていたことにフィットしたような気はしています。

https://solitudesolutions.bandcamp.com/merch/kdk-11-ultrafog-faces-forgotten

モジュラー・システムを用いたライブセットが特徴的ですが、この機材がメインになるのに何かきっかけはあったのでしょうか?また作曲のプロセスやライブのパフォーマンス上で、何か変化はありましたか?
 
2016年の夏ぐらいに、これまで作曲の中心に使っていた機材をDAWから全てハードウェアに乗り換えました。以前は毎回ライブの度に、ループやセットをPC上で準備してライブに臨んでいたんですが、元々ギターを弾いていたというのもあって、自分がループやサンプルを再生するっていう行為にずっと曖昧な違和感を抱いていました。ちょうどその時誘われていたイベントで、その違和感が頂点に達して、急遽持っているシンセとシーケンサーとペダルだけでプレイをしてみたら、自分の中で手応えがあったんです。それで”感覚的に電子音を出せる楽器”が自分には必要だなと思って、モジュラーシンセを導入することにしました。僕はライブにおいては偶発性とか、反射性が欲しいんです。その場で生成された音がやっぱり好きで。

作曲に関してはライブとは違って、だいたいハードウェアにMIDIを流しこんでから、それぞれの要素にDAWで手を加えて、重ねてまとめていきます。ライブのように即興性や偶発性みたいなものを重視していませんし、決まったやり方も特にありません。iPhoneで野外の音を録って使ったりもします。組み立て方の違いはありますが、ハードウェアを使うようになってから共通して変化したことは、自分の音のソースが限定されたところです。ラップトップの中でのソフトシンセやサンプラーを使った制作は、いってみれば無限に選択肢があると思うんです。僕の場合は、出せる音を縛ることで、自由すぎることの束縛から逆に自由になったというか。今のやり方は自分にとってはバランスが良いですね。
 

音楽活動を行ううえで、何か大事にしている姿勢のようなものはありますか?
 
いろんな意味で小さくまとまらないことですかね。記号にならないように。実際、僕はアンビエント作家にもモジュラーシンセ奏者にもなりたくないです。見つかりそうで見つからないものをすごく長いスパンで探すようなイメージで活動しています。海に落としちゃったものを素潜りで探す感じとか。見つけたと思ったら違っていたり。視界が悪い中で真面目にずっと探す。それがUltrafogっていう、なんとなくつけた名前の意味なのかなと今は思っています。それでもちゃんと爪痕と足跡は残せるように。
 
次回作の予定などはあるのでしょうか。

次はm dooというアメリカ・カンザスのアーティストとのスプリットEPが、バルセロナのangoisseというレーベルからカセットで出ます。彼はRyan Leockerという本名名義でStrange RulesやLillerne Tapesからもリリースしていて、今回のレーベルのangoisseでもm doo名義で最新作の『id static』をリリースしています。サウンドクラウドで連絡が来て、一緒にやろうとのことだったのですぐにOKしました。やりとりしていく中で分かったんですが、彼は1221というレーベル、というかコミュニティのオーナーで、僕はその周辺の音楽にはとても影響を受けていました。カンザスのローカルなアーティストたちを中心に、これまで4枚のコンピレーションをリリースしています。NYのアーティストたちも参加しています。umfangとかNick Kleinとかgaul plusとかvia appとかdreamcrusherまで。angoisseのオーナーのDavidと僕はネットで繋がっていて、彼のレーベルで出したいと言ってくれてタイミングよく進んでいきました。 angoisseはバルセロナを拠点にしながらいろんな国のアーティストの作品をリリースしていてすごく挑戦的なレーベルだと思います。日本から少し前にCVNが、僕と同じタイミングでKazumichi Komatsuくんのカセットも出ます。今年は別のレーベルからもう一作出す予定です。

最近のお気に入りのアルバムなどありましたら、いくつか教えてください。

Various ‎– bblisss
M. Geddes Gengras ‎– Interior Architecture
CAN – SOUNDTRACKS
Mud Honey – Superfuzz Bigmuff
Autechere – Amber
Tim Hecker – Harmony in Ultraviolet

です。

ultrafog: https://soundcloud.com/ultrafog

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Vapor Aesthetics #3-4

“Vaporwave Is Dead” かつてはあちこちでささやかれたこの常套句も、すっかり過去のものになった現在。皮肉にもVaporwaveのリリース量は衰えるどころか年々増加を続けています。今日もインターネットのどこかで生み出されているVaporwave。この連載では “Vaporwave Is Dead” 以降の現行Vaporwaveシーンにフォーカスし、選りすぐりの作品を紹介していこうと思います。「Vapor Aesthetics」3~4月のおすすめ作品です。

  1. 骨架的 – Opal Disc / Sunset Melody

    2015年の夏、Luxury Eliteが主宰する〈Fourtune 500〉は「The Final Farewell.」という別れの一言を添えたコンピレーションアルバム『The Music Of The Now Age III』を発表してレーベル活動に幕を下ろしました。このコンピレーションアルバムに参加し、〈Fourtune 500〉の終結と共に蒸気のように消え失せてしまった骨架的が、『Opal Disc』『Sunset Melody』という新たなアルバム2作を携えて、再び表舞台へと戻ってきました。(同時に、2015年に公開されてすぐに非公開となった『Poor Homme』も『Cool Water』という題に変わり曲数も削られてリポストされています。)『Opal Disc』は2014年の録音と明記されており、『Poor Homme(Cool Water)』以降に制作されたアルバムのようです。同時にリリースされた『Sunset Melody』は2015~2016年の録音。こちらは時系列だと『Opal Disc』と地続きなアルバムのようです。2年ぶりの新作、とはいえ懐古趣味的なポップミュージックやスムースジャズにスクリューやエフェクトを施すという作風は一貫しており、相変わらずの骨架的サウンドを存分に堪能することができます。また、この2作のリリースに併せて「#vaporwave」というタグを付けることを頑なに拒んでいた骨架的が、すべてのアルバムに「#vaporwave」をタグ付けしているのを確認しました。彼に一体どんな心境の変化があったのか定かではありませんが、今回投稿された2作は、彼のキャリアの中で最もVaporwaveというミームに近接した作品群であると言えそうです。

  2. Vektroid – Telnet Complete

  3. Club Fantasy – Rainy Night in Hachioji

    「Onsen Vapour ♨」なるテーマに掲げ、日本とロンドンを股にかけた活動を展開するClub FantasyのデビューEP『Rainy Night in Hachioji』が、新鋭Vaporwaveレーベル〈Kaiseki Digital〉からリリースされました。本作は「眠らない大都市、八王子」を舞台に、4つのストーリーが展開されていく短編集のようなアルバム。新橋のシティホテルの一室で行われる情事を描いた#1 “Shimbashi City Hotel” 、爽やかな朝の何気ない至福のひととき#2 “Boss Coffee”、Jazzyな旋律とコーラスの掛け合いが雨の八王子を美しく彩っていく表題曲#3 “Rainy Night in Hachioji”は本作のハイライト。アスファルトを打つ雨音、男女の喘ぎ、自販機に硬貨を投入する音などの大胆なフィールドレコーディングや、ナレーションの導入は臨場感を生み、同時にシンセによる美しいメロディを際立たせているようにも思えます。4曲という短いアルバムながらも、聴き終えた後は映画を見終わったような余韻に浸れる、とてもドラマチックな作品です。

  4. V ▲ P Y D – フードコート ファンク [foodcourtfunk]

  5. Psychic LCD – Facade

    Psychic LCDは、18 Carat Affairとの共作などでも知られるLasership Stereoや、オフィスや公共施設に漂う清潔な空気感にアンビエンスを見出し、メロウなレタッチでオフィス・ジャムズという概念を築き上げたDiskette Romancesという名義でも知られているVaporwave作家。近未来的な仮想現実空間を想起させる『Nexxware』を2013年に〈Fortune 500〉からリリースし、それ以降、目立った動向のなかったPsychic LCDですが、およそ4年もの歳月を経て、新作『Facade』を〈Ailanthus Recordings〉からリリースしました。前作で発揮されていた審美性はより一層研ぎ澄まされ、ヴァーチャルリアリティ空間に没入していくかのような仮想現実アンビエント#5 “VR Virachey”、#7 “Data Drip” で展開されるデータ・ドリームなど、まさにデジタル世代のニューエイジといえそうな佇まい。〈Music From Memory〉や〈Melody As Truth〉などのレーベル作品を愛聴するリスナーの耳にも馴染むのではないでしょうか。

捨てアカ 島根県在住のVaporwaveリスナー

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Interview with H.V.R.F. CENTRAL COMMAND

Vaporwaveから生まれたミームミュージックの新しい支流、Hardvapour。東ヨーロッパの都市の荒廃を思わせるその暗く硬質な厳しさをたたえたサウンドは、Vaporwaveの資本主義ユートピアと同様の虚構であることには変わりがないが、明るいユーモアから暗いユーモアへの転回といった気分の転向がある。高速に消費されるこの領域では変化こそが善なのだ。〈H.V.R.F. CENTRAL COMMAND〉は、そのHardvapourを最もハードに推し進める音楽レーベル。活動一年にしてアッパーに活動を続け、100作品ものリリースを達成。活動を記念したコンピレーション「HVRF-CC 100: VARIOUS ARTISTS – SAMPLER #4」をリリースした。多くのファンを過去へのノスタルジックな逃避に誘ってきたVaporwaveに対抗する姿勢や、さまざまな世のトピックに反応するかのように矢継ぎ早にリリースされるテーマ性のあるリリース。そこから伺える姿勢は、レーベル名に違わずアクティブで攻撃的。Hardvapourとはいったいなんなのか? そのミステリアスなその活動について、レーベルのオーナに聞いた。

拠点であるウクライナのPryp’Yat’はチェルノブイリで無人になった都市ですね。ウクライナという場所について、あなたの考えを聞かせて下さい。

Hardvapourの最初のレーベル〈ANTIFUR〉はウクライナのムィコーライウを拠点として始まった、だから、僕たちもウクライナをベースにすることにしたんだ。東ヨーロッパをストーリーの出発点にしたのは、それまでVaporwaveで探求されてきたものよりもずっと“ハード”な物語性を出すという意図があって。実際にウクライナ出身だっていうHardvapourのアーティストも何人かいて、ロシアとウクライナでの僕たちの知名度を上げるのに一役買ってくれているよ。ロシアとウクライナの友人たちとは素晴らしい相互作用が数多くある。

レーベルの名前に“Resistance”という単語が入っていますが、あなた方が抵抗しているものとはどんな存在ですか?

Vaporwaveのサウンドがずっと追い求めてる現実逃避や懐古主義的な思考に対する抵抗だよ。多くのVaporwaveのプロデューサーたちがHardvapourに宣戦布告して、自分たちのRedditやFacebookのグループでHardvapourについて語るのを禁止にしたけど、彼らは負けが見えている戦いを選んだんだ。彼らのほとんどは完全にクリエイティビティに欠けていたからさ。今、Hardvapourに取って代わられつつあって、そういったVaporwaveのプロデューサーたちの多くもHardvapourっていうジャンルを受け入れ始めてる。the Kroko_Borgのことばを借りると、彼らは“吸収”されてきているということだね。

実際の出来事に関係したコンピレーションがとても興味深いと思いました。「THIS IS THE ZODIAC SPEAKING​.​.​. “I AM NOT TED CRUZ”」や、「WORLD WAR 2020 – EPISODE FOUR (2016 VERSION​)​: WIKILEAKS VS. DNC」など。レーベルのコンピレーションに、実際の出来事を関係付けるのはなぜでしょうか?

さっきの質問の答えと同じような理由になるんだけど、過去へ逃避したVaporwaveに対して、僕たちはHardvapourを今世界で起こっていることについてのものにしようとしているんだ。どのHardvapourのリリースも全部そうっていうわけではないし、本質的にかなりフューチャリスティックなものも多いけど。でも、例えば、WIKILEAKSは、人々が彼らのリーダーや政治家をどのように信用している(あるいは、信用していない)かを形にするためによく起こる、現代の現象だ。だから、この主題では多くのアーティストが超高速でその解釈をして盛り上がったんだよ。WIKILEAKSで明らかにされた事実には、ほとんどの人がある程度興味を持っているものがとてもたくさんあるからね。

加えて、PZAの騒動を扱った“PZA FILES: THE FIRST SLICE”は秀逸でした。この作品が生まれた経緯をお聞きしてもいいでしょうか?

ありがとう! PZAが他のアンダーグラウンドのアーティストのトラックを盗んで、自分のトラックであるかのようにリリースして捕まったっていうスキャンダルがあって。その中には何も変えていないものもあったんだよ、曲のタイトルが違うだけ、とか。PZA FILESの製作者は、PZAのラジオでのインタビューを見つけてきて、そこから一部を抜き出して、そこにHVRFがさらにコラージュに加えるパーツを提供したんだ。すべてがすごく速くできた。そして、僕たちの人気のリリースになった。なんといっても、スキャンダルが起きていた、まさにその時だったからさ。その後も、僕たちがPZAと一緒にやっていることに驚くかもしれないけど、彼は謝罪したし、この事件以降はオリジナルの音楽だけをつくるって約束したから。僕たちは彼が作る音楽がとても好きだし、彼はセカンドチャンスを与えられるに値するアーティストだと思ってる。それに、基本的にほとんど全部盗まれた音楽でできてるジャンルの音楽を盗んだことでPZAは悪者にされているんだから、これは皮肉すぎるよね。

非常に幅広いアーティストたちが参加していますが、どのような基準でアーティストを選んでいるのでしょうか?

すべてまったくランダムに、だよ。そのアーティストのサウンドがどんなものか知る前に依頼することも多い。(レーベルに)合ったものを作る人たちかどうか、パーソナリティだけで推測する。だからある意味、基準を持つっていうのとは正反対だね。メールで連絡してくるアーティストもいる。多いのはTwitterで知り合ったアーティスト。どんなものにも可能性はあるから、僕たちはどの人の音楽も全部聴くことにしてる。

レーベルに影響を与えたものを教えて下さい。音楽でもなんでもかまいません。

そうだな、フォローしているYouTubeのチャンネルSTYXHEXENHAMMER666、もちろん、ALEX JONES & INFOWARSも。それ以外のYouTubeチャンネルだと、LIONEL NATION。僕らはチェスゲームが大好きで、 ヒカル・ナカムラっていうプレイヤーが気に入ってる。HVRFのアーティストDJ Raj Kapoorはヴィスワナータン・アーナンドのものすごく熱狂的なサポーターのひとりなんだ。Vishy(ヴィスワナータン)を驚かせて、ワールド・チェス・チャンピオンシップの歴史上最大の失敗をさせてしまったっていう、あの悪名高い“エアホーン事件”のは彼のせいだったんだよ。それから、毎週末マラソン形式でPS4のFIFAのゲームをやってるアーティストも多い。FALLOUT 4っていうゲームも僕らの美意識のもとになってる。あとは、ADIDAS、ロックバンドのPUDDLE OF MUDD、映画『HARDWARE』もあるね。NJPW(新日本プロレス)も僕たちにすごく大きな影響を与えてる。サクラ・ジェネシスやレッスルキングダム10での、オカダ・カズチカの柴田勝頼やケニー・オメガとの対戦の素晴らしさは、僕らのレーベルの参加者についての多大なインスピレーションになったよ。

Vaporwaveという音楽が生まれてからしばらく経ちますが、現行のシーンについてはどう思いますか?

僕たちの友人であるVapor Sleuthが最近こう言ってた。

“長いことこの街にいる。今、この辺りはゴーストタウンみたいだ。でも、正しい場所を探せば、まだ酔える。昨日のことのように思い出す。――あの時、狼の一群にふり返らずに角を曲がることはできなかった。今や、狼たちは見つけた肉を全部食べつくしてしまい、街を後にしたようだ。魂の抜けた企業ロゴの光を夜の空に発している見捨てられたメガタワー、その他には何もない。そのいくつかにまだ最新の修正をしようとしている猫たちもまだここにはいる。しかし、雨は降り続けている。この行き止まりの都市はいつも雨だ”

あなたの思うHardvapourの定義はどんなものでしょうか?

ルールはない。自由だよ。〈Dream Catalogue〉のHKEが、Neon Dystopiaとの昨年のインタビューで、Hardvapourを完璧に説明している。

“君が描いたhardvapourの絵はかなりてきとうだけれど、それでいてすごい解釈だ。しかし今、ただそれだけではない、それ以上のものになってきていると思う。全世界が、社会的にも政治的にも、完全に狂気でカオスの道に向かっているということを誰も否定できない。そして、僕にはHardvapourがこの物語の高速の変化を代表する新しい世界的な音楽のような気がするんだ。それは、第三次世界大戦というゲームが始まる前のサウンドで、不幸なことに僕たちは今現在もうそれが見えているところにいるらしい。Vaporwaveが奇妙な催眠麻痺状態に入っていく80年代や90年代のアメリカンドリームのサウンドだとしたら、Hardvapourは至福の見て見ぬふりから完全に目覚め、冷たく厳しい現実の世界を見つめるサウンドだ。しかし、そういった事実の中になぐさめを見つけ、僕たちがみなこの地球上にいるということを実感しようともしている。世界を救うことができるかもしれない。世界的な新しい音楽の形、全ての世界のための。”

今後のリリースについて教えていただけますか? 

次のリリースは、#100、100タイトル目になる。1年経たないうちに100タイトルリリースすることになる。とてもたくさんのアルバムが準備できているから、#100の後は、1週間に3タイトルリリースするスケジュールになる予定。たぶん、徐々にゆっくりになってはいくだろうけど。予測するのは難しいね。2020年になる前に戦争が始まって、僕らのリリース計画が途中になってしまうかもしれないと思うと恐ろしいよ。人間は絶滅する前に表現するものがまだまだたくさんあるよね。

HVRF-CC 100: VARIOUS ARTISTS – SAMPLER #4

H.V.R.F. CENTRAL COMMAND
https://hvrfcentralcommand.bandcamp.com

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Post Internet Music Label: & Options

インターネットの人々の繋がりあいは、個人的な感覚を結合し、先鋭化させていく。その傾向が加速された結果、無数にあったマイクロジャンルはさらに細やかなものとなり、ふたたび混沌のスープの中に溶解しつつあるように見える。そうしたインターネットに特有な現象と音楽にインスパイアされ、その「後の」状況を音で描こうとしているのが、Wasn’tが運営する音楽レーベル〈& Options〉だ。そのサウンドは過去に存在したマイクロジャンルの影響を感じさせながらも、さまざまなカテゴリーから漏れ出た感覚を拾い集めようとしているように感じる。具体ではなく抽象のもつ形の美しさ、そしてどこでもない場所への逃避行。それはネットのカオスから生まれた、いまだカテゴリーに属することのない音楽である。レーベルオーナーのWasn’t、そして本レーベルから作品をリリースするFuuka ASMRの両名に話を聞いた。

Self Edit Arrangement by Wasn’t

あなたのページには“ポスト・インターネット ウェブ・レーベル”とありますが、あなたにとって“ポスト・インターネット”とは何でしょうか?

Wasn’t(W) ポスト・インターネットっていう概念は、ジャンルレスで、インターネットを通じてどんな種類の音楽にも無限にアクセスできるようになった結果の音楽のこと。ブラウザを3つ開いて、マライア・キャリーとMerzbowとモーツァルトのコンチェルトを流しながら、誰も知らないようなアルバムをBandCampでダウンロードする、そういうことができる。ジャンルは楽しいものだけど、一方で折衷的なサウンドの音楽がものすごく育ってる傾向があって、それはインターネットアクセスの結果だと思うよ。

レーベルを作ろうと思ったきっかけは何ですか?

W 〈& Options〉を始めたのは、新しいやり方をする必要性とフラストレーションが混ざった気持ちから。いくつかのネットレーベルやカセットレーベルからリリースをしてみて、そのプロセスを通じて、自分自身のレコードレーベルをやるのはそんなに難しいことではないかもしれないと思ったんだ。それと、〈& Options〉は遊びのあるものにしたかった。〈& Options〉のTwitterは時々かなりふざけてて、おかしいことにもう気づいているかもしれないけど(笑)

W あと、無名だったから、他のレーベルが僕自身の素材をリリースすることを真剣に考えてくれなかったっていうこともあったね。アーティストにちゃんと支払いをして、尊重する、そういうことを進めていく小さいレーベルが欲しかったんだ。どんなに誰も知らない無名なアーティストでも。

レーベルを運営するために必要なエネルギーや思いは何だと思いますか?

W どうしてレーベルを始めるのかを説明するのは難しいだろうね。ただ楽しむためっていうこともあるし、コレクティブやアーティストのプラットフォームのためっていうこともある。僕個人としては、レーベルを運営して、そのコミュニティや社会的側面を楽しみたいと思ってる。BandCampでしかできない、新しくてちょっと変なレーベルコンセプトもあるし。それはほんとに色々だよ。ビジネス的な側面ももちろんある。レコードレーベルを運営するアーティストっていうのが、音楽で生計を立てるためのより現実的な手段になってくると思うんだ。

HardvapourやMallsoftをリリースしないと前にTwitterで言っていましたが、それはなぜでしょう?

W 多くのHardvapourは90年代のGabberをリバイバルしたものみたいだからっていうのと、あと、僕はその周辺の人たちとはちょっと色々あって。これはHardvapourへの公の対抗宣言かもしれない(笑)。Mallsoftはすごく好きなわけでもないけど、個人的にはぜんぜん反対とかではない。Vaporwaveっていうジャンルに対する僕の公然の非難の多くはだいたいじょうだんだし、〈& Options〉はVaporwaveレーベルではないってみんなに知ってもらうための手段でもあるんだよね。

あなたから見て、トロントの音楽シーンはどうですか?

W 色んな音楽シーンがたくさん進行してる。でも、めったにお互い交流がないし、トロントは興味深いよ。たくさんのインディーロックとノイズミュージックも同時に進行してるけど、それらを同じプログラムで見ることはトロントではまずない。残念だけど、こういうことがジャンルやスタイルに関して「数が多ければいい」っていう状況につながってくる。その結果として、シーンは小さめのコミュニティになりがちになるね。〈& Options〉から、地元のアーティストで友だちでもあるCARESの音楽をもうすぐリリースする予定になっているんだけど、彼はポスト・インターネットの概念にほんとにすごくぴったりなんだよ。

NXCXTC by Fuuka ASMR

NXCXTCのジャケットにマイメロディが使われていますが、あなたにとって何か特別な意味があるのですか?

Fuka ASMR(F) 数年前にサンリオのキャラクターが大好きになったから。妙な執着なんだけど、止められなくて。もともと企業マスコットとかそういう可愛いくてちょっとくだらないものが大好きだし。マイメロディは間違いなく一番可愛いからお気に入りのキャラクター。彼女にはクロミっていう名前の、彼女にそっくりで、でも悪い友だちがいて、それもすごくいいの。違う名義でも何枚かアルバムを出してるけど、どれも色んな企業マスコットのスクショをアートワークにしたものよ。私は基本的に可愛いものとずっと一緒だと思う。

2013年以から活動しているようですが、Yakuiはあなたの別名義ですか? あなた(Fuuka ASMR)とYakuiとの違いは何ですか?

F 実は、Clawdfaceっていう名義で2011年からずっと活動しているんだけど、2013年に最初のYakui EPとかその辺のものを出すまで、私のことを気にしている人はいなかった。Yakuiにはとくに意味はない。だいぶ前に、ある雰囲気に合わせるためにYakuiを作ったんだけど、それはうまくいかなくて。でも、そのままその名義でリリースしてたっていうだけ。Yakuiっていう名前を使ってるアーティストは他にもたくさんいるし、Yakuiっていう名前の2チャンネルのキャラクターもいる。だから、しばらくはその名前を使わないようにしようかとも思ったけど、結局そうしなかった。私の変名は全部Yakuiである重荷のようなものを下ろすために作ったものだったし、YakuiはClawfaceの重荷を下ろすためのものだった。だけど、それらが本質的には同じプロジェクトだと思われるのは歓迎よ。Yakuiとしての一番最近のアルバムは、私自身のレーベルでのFuuka ASMRとしてのリリースになる予定のものだったんだけど、それはしないことにしたわ。Fuuka ASMRとしてのキャラクターは演じない、だって、彼女は彼女自身のキャラクターだと思うから。Fuuka ASMRは、ASMRとは関係ないASMRビデオを作る少女。自分の音楽とそのストーリーを語ることやキャラクターを作ることが好きなの。そのストーリーやキャラクターがくだらないものだったり、直接的には何も伝えないようなものだったとしてもね。

“NXCXTC”の〈& Options〉での作品について、もう少し教えていただけますか?

F NXCXTCのメイキングみたいなのはそんなにおもしろくないから、あんまり話すことはないのよね。80%がピッチを上げたサンプルで、残りがそのままのもの。100%サンプルベース。歌を取って、オリジナルとはぜんぜん違うものになるまでマッシュアップするのが好きなの。NXCXTCは究極のリミックスアルバムといえるかも。3曲目のAna Pietyはオリジナルのバージョンにちょっと近過ぎて、あんまり気に入ってないんだけど。

あなたの名前にはASMRという文字が含まれていますが、ASMRはあなたがハマっているものですか? また、どんな種類のサウンドにひかれますか?

F ASMRは好きじゃない。その現象自体おかしいと思うし、理解できない。Fuuka ASMRのASMRは、“Fuuka ASMR”っていうトラックのひとつにつけただけ。その曲は実際ASMRのトラックだったわ。ほかのASMRのトラックはASMRとはぜんぜん関係ない。純粋に音楽を作る楽しさ、それ以外のことを考えて音楽制作に没頭することはめったにないかな。それで、そういう時、たいていは最初に考えていたアイデアはやめてしまうことになる。Fuuka ASMRの時にもそうだった。だけど、Fuuka ASMRやそのほかのこれまでにスタートさせたプロジェクトで、インターネットカルチャーの特定の側面を完全に誤解してしまうことが、その典型的な特徴になるんだって思ったの。もしインターネットカルチャーとそれが生み出す音楽に夢中になっていなかったら、こういうのはどれも作り出せなかったと思う。ASMRとかVaporwaveとか、そういうはっきりしないようなものたちがなかったら、その代わりにたぶんストレートなテクノやハウスを作っていただろうと思うわ。どんな種類のサウンドが好きかっていうことについては、私はほんとうにぐにゃぐにゃしたサウンドやねばねばしたサウンドが好き。ねばねばしたサウンドっていうのは、音響機器の雑音みたいで、でももっと有機的なサウンドのことよ。

例えば、Nightcoreのように、多くの音楽ジャンルがインターネットに出てきていますが、どのジャンルに興味がありますか?

F chillwaveとwitch houseはとても好き。そのふたつのジャンルはちょっと変な音楽を作る気にすごくさせてくれるし、それに、それらのことを考えていると懐かしい気持ちになるの。私の人生のすごくいい時期に関連しているから。たぶん、音楽を作るのが一番楽しかった時期。Vaporwaveのアイデアは好きだったんだけど、つぼを外れてる感じだった。Vaporwaveはたくさん聴いたわ。でも、何かを感じさせてくれるものはなかった、Chuck Personとスピードレーサーのアートワークのアルバム以外はね。でも、たぶんすべてのネット音楽のジャンルの中で、私に一番影響を与えているのはVaporwaveだと思う。実際、最初に作ってみようと思ったものだし、完全に私の音楽の作り方を変えてしまったものだから。最初の頃、Vaporwaveにするつもりで、Yakuiとして何枚かアルバムを作ってみたことがあるの。そのほとんどをあえて聴かなかったけど、それらは、私がVaporwaveだと思ったものについての私の考えだっただけ。/mu/(4chan)で始まったmetro-koっていうほとんど知られてないネットジャンルもある。すぐにすたれたけど。どんよりした感じのミニマルなシティミュージックって定義されてた。みんなが注目しなくなるまでに、まともなmetro-koのアルバムを私は1枚も作らなかったけどね。metro-koには、もっとたくさんの人に聴いてほしい隠れた名曲がたくさんある。でも、誰も聴かないだろうなっていうmetro-koのひどいラップもある。それがインターネットで起こってること。インターネットには音楽を作っている人は山ほどいて、みんなそのごく一部のものを聴いているだけ。どうしてみんな音楽を作り続けるんだろうと思う、正直言うとね。

*

〈& Options〉の最新リリースはmethyrの「BLOOPERS」。こちらも是非チェックを。

http://andoptions.bandcamp.com
http://yakui.bandcamp.com

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Label Interview: Hausu Mountain

Hausu mountain〉はDoug KaplanとMax Allisonの二人によって2012年に設立された音楽レーベル。電子音楽の実験的な作品をリリースし続け、深海のように豊かなその未知の領域を開拓してきました。レーベル名のもとになった日本の映画、そしてMax Allisonが手がけるカバーアートなど、彼らが作り出す世界観の底には、漫画やレトロゲーム、サイファイ文化、そのほかさまざまな領域のサブカルチャーへの愛が貫かれています。

彼らはまたGood Willsmithというトリオのメンバーとしても知られており、〈Umor Rex〉からリリースされた最新のアルバム「Things Our Bodies Used To Have」が、高評価を得たことも記憶に新しい。その音楽性は、レーベルカラーともシンクロするローファイな感覚を持った実験性。時代と空間を旅しているような幅広いムードや感情。それらを作り出している電子音から生音まで含めた、豊かな音色も特徴的です。

過激な実験性と飽くなき探求の奥に、どこか人間的な温かみすら感じさせるレーベルカラー。独自のスタイルを持つ〈Hausu mountain〉は、Good Willsmithメンバーのソロ作を3作揃ってリリースしたばかり。その彼らにレーベル設立の経緯からコンセプトの由来、バンドプロジェクトなどについて聞いてみました。

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レーベル設立の経緯はどのようなものだったのでしょうか? 二人の出会いについて聞いても良いでしょうか?

僕たち(DougとMax)はエバンストンにあるノースウェスタン大学で出会ったんだ。すぐにベストフレンドになったよ! それからThe Earth is a Manっていうバンドを一緒に始めて、2011年に卒業した後は一緒にシカゴに引っ越しして音楽を作り続けた。〈Hausu Mountain〉は、2012年に、もともとは自分たちの音楽、Good WillsmithやThe Big Shipのようなバンドの音楽をリリースするために始めたレーベルで。ほかのレーベルからリリースしてもらうのは難しいってわかったから、自分たちでやることにしたんだ。その後すぐに、友だちとか、自分たち以外のプロジェクトの音楽を主にリリースするようになっていった。Doughと僕はずっといい友だちだし、僕たちはレーベルを良いものにしていくために一生懸命動くのがとても好きだよ。

レーベル名は大林宣彦の映画のタイトルからとったと聞いたのですが、ほんとうですか?

ほんとうだよ。レーベルの名前は大林宣彦監督の映画『ハウス』からつけたんだ、ホドロフスキーの『Holy Mountain』と組み合わせてね。僕たちはこのふたつの映画が大好きだから。サイケデリック・アートのクラッシックで、とてもたくさんの不思議、ユーモア、恐怖、驚きが含まれてる。独自のルールや雰囲気があって、作品全体でその独特の世界や宇宙を描いていて、すごく好きなんだ。僕たちのレーベルでやろうとしていることも同じ。新しいサイケデリックの世界を構築することとか、シリアスにやりすぎないこととか。観るといつも楽しくて驚きがあるから、これらの映画はクラッシックになっているんだね。

Good Willsmithの活動のレーベルへの影響はありますか? その音楽性も含め、音楽活動とレーベル運営の仕事に連動している部分はありますか?

Good Willsmithを始めたのとほぼ同時期にレーベルを始めたから、Good Willsmithはレーベルのフラッグシップ・プロジェクトのようなものになったけど、Good Willsmithは〈Umor Rex〉や〈Baked Tapes〉のようなほかのレーベルとも仕事をしているし、もちろん〈Hausu mountain〉はとてもたくさんのほかの色んなプロジェクトと一緒にやってる。Good Willsmithのサウンドは僕たちがレーベルでやろうとしていることをとてもよく表していると思う。ライブ演奏の音楽、ノイズとテクスチュアが元になっている音楽、とても多様で説明するのが難しい音楽、ムードで変化して色んな雰囲気の間を素早く行ったりきたりする音楽、ヘビーでノイジーな音楽、美しくもある音楽、エレクトリックとエレクトリックでない楽器を組み合わせた音楽、即興の音楽。これはGood Willsmithにも、僕たちがやっているほかのプロジェクトのほとんどにも当てはまることだね。でも、音楽活動とレーベル運営がつながっていることで一番大きいのは、全部一度にやらなければならないってことかな! 人生には限られた時間しかないし、僕たちは忙しい。Good Willsmith、〈Hausu mountain〉の全責任、ソロプロジェクトの作業、たくさんのショウでプレイすること、そしてもちろん、音楽以外でやらなければならないほかの仕事、それらを全部やりくりするのはたいへんかもしれないけど、僕たちはそうするのがとても好きだし、ほかのやり方ではできないんだよね。

トリオであるGood Willsmithのメンバーの一人、TALsoundsことNatalie Chamiによる作品。日々の即興的なセッションの過程により生み出された、複雑で叙情的な「声」の世界。衣擦れのようなソフトさとスモーキーな気だるさ。その絶え間ない音の旅により作り出されたアンビエントノイズ。

レーベル主宰者の一人、Doug KaplanによるMrDougDoug名義の作品。Geocities MIDI CollectionでみつけたMIDIファイルで作られたという本作には、ロックやレゲエやカントリー、ヘビメタのブラストビートのようなサウンドの片鱗を聴くことができる。そのサウンドは微小な断片へと砕かれていき、スピードとエネルギーだけが抽出される。形を変えながら蠢めく靄のような、サウンドテクスチャーとビートが複雑に交錯した作品。

レーベル主宰者の一人でもあるMax AllisonによるMukqs名義としては初となるフルレングス作品。ゲームミュージックの古典に触発されたというメランコリックで叙事詩的なメロディが、オーガニックなシンセの音色と共鳴し合うアンビエント。オーバーダブなしのライブレコーディング作品。

2012年から活動していますが、レーベルの方向性には変化や進化はありましたか?

自分たちの音楽をリリースするっていうことから、ほかの人たちの音楽をリリースするっていうことへ、単に変化という以上のものがあったね。僕たちのレーベルは2012年からたくさん変化してきていると思う。スキルは向上してるし、音楽をリリースできるようになるまでも速くなっているし、それを発表して世の中に広めることも上手くなってきてる。もちろん長い間やっていて、興味を持ってくれる人の数が増えてくれば、これは自然なことで、一生懸命やってきたこと、そして決してあきらめなかったことの成果なんだ。音楽自体に関しては、たくさんのおもしろいミュージシャンたち(たいていはGood Willsmithとツアーをやってくれたり、たくさんのショウでプレイしてくれたりした人たち)に会って、時間を過ごしてきているから、以前にも増して数多くの、幅広いアーティストたちと一緒にできるようになってきてる。僕たちが今リリースする音楽のほとんどは、The Big Shipのような初期のリリースのアコースティックでギター志向のサウンドと比べると「エレクトリック」寄りになることが多い。今は、音楽を作るのにさまざまな方法を使う色んなアーティストたちがとてもたくさんレーベルにいるから。ドラムマシンやコンピューターで作るビートミュージック、アナログシンセサイザー、モジュラーシンセサイザー、機械でミックスしたボーカル(声)、あらゆる種類の作り方をね。

実験性を尊ぶレーベルカラーが非常に明確ですが、あなたは自分のレーベルのコアなコンセプトはなんだと思いますか?

僕たちはエクスペリメンタルミュージックが一番好きだよ。でも、もちろん、色んな種類の「エクスペリメンテーション(実験)」がたくさんある。自然の中で静かにやっていたり、極端にゆっくり進めることに特化していたりするようなエクスペリメンタルミュージックには僕たちはもうあまり興味がなくなってきてる。僕たちは、複雑で、多様で、ジャンルにしばられない、わくわくするような音楽に興味があるんだ。リスナーとして、僕らはすぐに飽きてしまうからね。40分間変化しないドローン・パフォーマンスや現代のノイズの多重録音にはもう興味が持てなくて。音楽を刺激的なものにするために、そして、聴く人々を楽しませるために、考えて、変えて、作業をする、そんなクリエイターの頭の中を見せてくれるような音楽が好きなんだ。流行りに乗ったり、ほかのアーティストそっくりにしようとしたりしない音楽が僕たちは好き。アーティストからダイレクトに個人的な表現、その人独自の、ほかの誰かにはできない形の表現、そういうものを受け取っているように感じられる音楽が好きだね。これが僕たちにとっての「エクスペリメンタル」の真の定義なんだ。

Hausu mountain〉の面白い部分はその時代感覚だと思います。古いようでもあり、新しいものでもあるような感じと言ったらいいのでしょうか。このような感覚はどこからくるのでしょうか?

ありがとう。その発想、とても好きだよ! 「アナクロニズム(時代の風潮に逆行していること)」っていう概念が僕たちにとって大切なんだと思う。たぶん、より潜在意識レベルでの。間違った時代にはまってしまったみたいな感じがする何かとか、時代遅れのように見える奇妙なものとか。そういったことは、テレビゲームやマンガからの素材をよく使ってるレーベルのビジュアルアートにも現れてるよ。アルバムのアートワークのテーマは「フューチャリスティック(未来的)」のことが多い。ロボットとか科学技術とか宇宙空間みたいな。ただ、未来的といっても、そういうテーマの表現方法はわざとお決まりのマンガっぽいものにすることもよくある。そうやって、過去と未来の間の境界をあいまいにするんだ。これは音楽自体にも当てはまることで。僕たちのレーベルの多くのアーティストは(Good Willsmith、Moth Cock、Davey Harms、Long Distance Poison、Piper Spray、Radiator Greysなどのようなプロジェクトも含めて)、音楽を演奏するのにコンピューターやソフトウエアを使わないで、意図的にアナログやハードの機材を使うことにこだわってるんだ。そうすることで、サウンドを過去から持ってきたもののようにすることができる。そういった機材の限界のせいでね。けど、アーティストたちは、「古い」機材を使って、新しく、奇妙で、独特に聞こえるものを作ることに成功してる。これは僕らにとってはパーフェクトなコンビネーションだね。僕たちは、未来的で、耳触りがいい、サイバーっぽいタイプのレーベルだって思われることにも興味がないから。自分たちの基準でクールな音楽だと思うものをリリースしたい、それに合ったクールなビジュアルを音楽に合わせたいだけなんだ。

デンバーの21歳Jesse BriataことLockboxによる「Demonoid」は、ローファイなビートの探求から高解像度のプロダクションへと舵を切った「Prince Soul Grenade」に続く作品。切り刻まれたサンプルと複雑なビートパターンによりつくられたデジタル雲のような音の造形が、その形態を液体のように変えながらさまざまな風景を横断していく、ノイジーな実験テクノ。

HeadboggleことDerek Gedaleciaは、〈Spectrum Spools〉、〈Hanson Records〉、〈NNA Tapes〉そして〈Experimedia〉などから60以上のリリースを行う、サンフランシスコのシンセシスト、作曲家。モジュラーシンセの音色への探求と、タブーを恐れない実験精神を特徴とする彼の最新作、「In Dual Mono」はモノラル録音が二つのスピーカーから同時に乱打されるという、電子音響の実験盤。

クリーブランドのプロデューサー、パフォーマーTim ThorntonことTiger Villageによるシリーズ作品、「Tiger Village VI: Effective Living」。濁流のように押し寄せるシンセのメロディとリズムが、コラージュのように速度を変えながら予測不能なパターンを描いていく。囁くようなどこかメランコリックな声のサンプルが、電子音響と融合し、未来の歌声のように響く。

Maxさんのアートワークも毎回素晴らしいですね。ゲームやコミックがモチーフになっていますが、そうしたサブカルチャーからの影響は強いのでしょうか?

ありがとう! Maxはレーベルのほとんどのアートワークをやっているんだ。自分で自分のリリースのアートをやったり、友だちにやってもらっているアーティストも多いけどね。でもMaxはレーベルの専属デザイナーで、マンガやテレビゲームのコラージュのアートワークは全部彼がやってる。テレビゲームとマンガはどちらもMaxの人生にとても大きな影響を与えてるんだ。彼は1990年生まれで、SNES(海外版スーパーファミコン Super Nintendo Entertainment System)、N64(Nintendo64)、Playstationのような初期のテレビゲームの頃に子どもだったりティーンだったりしたからね。ビジュアルスタイルに関して、それから、音楽に関しては特に、こういう形のアートは究極に人の心を開かせるよ。マンガやグラフィックノベル(大人向け長編のマンガ)もそうだし、アニメは特にそう。こういうタイプのアートすべてがMaxのビジュアルと音楽のスタイルに影響を与えているんだ。でも2016年の今、テレビゲームをやったり、マンガを読んだりする時間がMaxにはもうない。レーベルやバンドなどのためにやらなければならない、たくさんの楽しいことのおかげでね。だから今度は、テレビゲームやアニメやマンガのスタイルをレーベルのアートワークに取り入れるのがベストなんだ。Maxの目標は、ピクセルで構成されたテレビゲームアートのシンプルで美しい質感を復活させること、それをテレビゲームの歴史の外で、新しいやり方で使うこと。ノイズ音楽のアルバムのジャケットにテレビゲームのピクセル画っていうのは奇妙に見えるかもしれないけど、テレビゲームのイメージの認識を変える、あるいは進化させるひとつの方法なだけ。古いアートの形を懐かしむっていうことじゃない。こういった古いアートの形は決して置き去りにされたりしない、いつだってふつうに美しいし、楽しいんだって、アートワークは伝えようとしているんだよ。

最後にレーベルに影響を与えたものがあれば教えて下さい。音楽でもそれ以外でもかまいません。

すごくすごくたくさんのものが僕たちのレーベルに影響を与えてるよ。主なもののリストを書いてみた。

  • Terry Riley、La Monte Young、Steve Reichのような20世紀のミニマル音楽の巨匠たち。
  • Miles Davis、Sun Ra、John Coltrane、Alice Coltraneのような20世紀のジャズの巨匠たち。
  • Captain BeefheartとFrank Zappa。
  • Jim O’Rourkeと彼の無限のプロジェクト。
  • Sunn 0))、Boris、EarthのようなSouthern Lord(サザンロード・レコーズ)を代表するバンド。
  • the Grateful Deadに関連するすべてのこと。
  • Can、Faust、Neu!、Cluster、Harmoniaなどのようなバンドを含む「クラウトロック」の流儀。
  • 今現在アメリカのアンダーグラウンドで僕らの友だちが運営している、とてもたくさんのレーベル。〈Patient Sounds〉、〈Orange Milk〉、〈Baked Tapes〉、〈NNA Tapes〉、〈Hanson Records〉、〈905 Tapes〉、〈Haord Records〉、〈Refulgent Sepulchre〉、〈Moss Archive〉。それから、〈Umor Rex〉、〈Phinery〉、〈Singapore Sling〉のような、ほかにももっともっとあるインターナショナルなカセットレーベル。
  • Moebius、大友 克洋、Roland Topor、Brenna Murphy、Keith Rankin、Rob Beattyのビジュアル・アート。
  • 湯浅政明の映画とテレビ番組。
  • 世界中の友だち、みんな。

hausumountainmassage2

Hausu mountain

http://hausumountain.com
https://hausumountain.bandcamp.com

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Interview with toiret status

トイレの水がカラフルな音響とともに流れ出すイントロから、畳み掛けるように襲いかかる未視感の連続。変転していくリズム、引き伸ばされ縮められたサンプル音、予想のできない展開が、ダイナミックなうねりを生じさせる。三半規管がかき混ぜられるようなその独特のグルーヴを作り出すのは、山口県在住の今最も注目を浴びているトラックメーカーtoiret status。〈Orange Milk〉よりリリースされた「◎omaru◎」は、独特の表現が凝縮した傑作というべきアルバムだ。硬質なプリセット音を盛り合わせて作られたデジタルな色彩を持ったその豊穣なサウンドは、未知だけが持つ美しさと、突き抜けたエネルギーを内包している。実験の極北が反転するとポップになるという証明そのもののようなサウンド。そんなアルバムをリリースしたばかりの彼に、toiret statusやxPhone tweeted hatenaなどのプロジェクトについて聞いてみた。

toiret status “◎omaru◎”

まずは活動歴的なところからお聞きしたいと思います。toiret statusの前はバンドをやられていたそうですが、どんなバンドだったのでしょう?

いろんなバンドで活動していました。もともと高校時代にメロコアバンドのドラムを始めたのが最初なんですが、そこからいろいろと音楽を聴くようになって。ベースとドラムの二人組で即興ノイズバンドや、ギターとドラムの二人組でマスロックみたいなことをやったり。The shaggsみたいなスカムバンドをやったり、大所帯のノイズバンドでドラム叩いたり、ジャンクでハードコアなバンドでドラム叩いたりしていました。影響を受けたアーティストはいろいろいますが、特にLIGHTNING BOLTのBrian Chippendale、HellaやDeath GripsのZach Hill、Aids WolfのYannick Desranleau、この三人のドラマーの影響が大きくて、どちらかというと激しくてうるさいバンドばかりやっていました。

そういうバンドの活動から、今のような実験的なトラックメイキングをやりはじめたのは、なにかきっかけがあったんですか?

今まで自分が聴いたことない音楽をはじめて聴いたときの感動が大好きで、自分も誰も聴いたことがないような音楽を作りたいと思うようになったのがきっかけです。ノイズバンドをやりはじめた当初は本当に無知で、こんなバンド世界で自分たちしかいないと思ってたんです。田舎に住んでいるので、周りに前衛的なバンドなんて全然いないですし。でもあとから、実は自分たちよりももっとすごいノイズバンドが昔から沢山いることを知って…。なんだか悔しい気持ちになったことを覚えています。

それでバンドをやりつつも何かしら新しい音楽を作りたいなぁとずっと思ってて。ひとりでサンプラーとドラムを同期させてソロでライヴをやってみたり、サンプラーだけで曲っぽいものを作ったりしていました。バンドマンだったので、DTMに対する憧れみたいなのがあったんです。それで去年から本格的に作曲を始めてみたところ、楽しくて楽しくて、一番自分に合う表現方法だと気が付いたんです。

特に三半規管を揺さぶるような変化していくグルーブ感がtoiret statusの特徴だと思うのですが、制作においてビートやリズムの構造というのはどれぐらい意識していますか?

toiret statusではかなり意識していますね。もともと僕はドラムしかできず、コード進行とか音楽理論とかも理解していないので、ビートを作るときも何かのメロディを作るときもiPadを直観的に叩いて作ることが多い。iPad上のドラムもキーボードも打楽器みたいにしているので、そういう意味では全てのトラックがリズムとして機能しているのかもしれません。あと、リズムやビートだけでなくてポップであることも意識してます。最初に例に挙げたLIGHTNING BOLTなどのバンドは前衛的で実験的だけど、どのバンドもとてもポップなんです。僕はそういう人やアーティストが好きで、toiret statusでもポップと実験性のバランスを大切にしています。

今回の〈Orange Milk〉からリリースされた「◎omaru◎」も実験性とポップさが両立したアルバムだと思います。しかもさらなる音楽性の広がりも感じました。よければこのアルバムの制作のプロセスについて教えていただけますか?

誰かと制作するとき以外は基本的にコンセプトやテーマを決めずに作っていくので、曲ごとでやりたいことをやったり、いろいろ試しながら作りました。曲作りの際には、「この小節ではキック3発まで」とか、「ビートより先にメロディを作る」とか、曲ごとに謎の自分ルールを決めてから作っています。昔からチマチマした作業にぼーっと熱中するのが好きなので、ルールを決めることで作曲を作業的にして、深く考えずに制作できるようにしてるんです。あとついつい曲の展開を多くしてしまうので、ルールを決めることで曲としてのまとまりが出るんじゃないかと。

ちなみに曲作りはどのようなセッティングで行っていますか? サンプリングと打ち込みの比率はどのような感じでしょうか?

toiret statusの作曲はiPadのアプリ「GarageBand」だけで作ってます。ミックスダウンとマスタリングはAbleton Liveでやっていますが。比率は曲によってサンプリングの音ばっかりだったり、その逆もあるのですが大体はサンプリングした音が8割で2割がプリセットの音って感じですかね。omaruに収録されている曲の生ドラムやギター、ピアノなどの音はGarageBandのプリセットを使ってます。打ち込みの比率に関しても曲によってそれぞれなんですが、iPadの画面を叩いて録音したものをそのまま使うときもあれば、ポツポツと一から打ち込んで作っていくこともあります。飽きっぽい性格なので、曲ごとに違うルールを設定し敢えて作り方を変えるようにしています。

Elevation X Toiret Status “T​.​D​.​I​.​M”

xPhone tweeted hatena名義は携帯で曲を作っているそうですが、ほんとうですか?

ミックスとマスタリングはtoiret statusと同じようにAbleton Liveを使っているので、携帯だけで作っていると言えばウソになっちゃうんですが、作曲はiPhoneのGarageBandのみでやってます。iPhoneとiPadのGarageBandはほとんど機能的には変わらないんですが、携帯さえ持っていれば曲を作れることが面白いと思って始めたプロジェクトで。いつでもどこでもフィールドレコーディングして作曲に使えるし、なんならトイレで用を足してるときにも制作できるし。携帯で音楽を作れるのって今では当たり前でも、ひと昔前からしたらすごいことだなあと。携帯でこんな曲作れるのか?って聴いてくれた人にビックリして貰いたくてやっています。あとxPhone tweeted hatenaではtoiret statusと比べて、より実験性に特化した音楽を作ろうと思ってます。

〈PEDICURE RECORDS〉の1st EPからわりととんとん拍子でさまざまなレーベルからリリースされていますね。今回の〈Orange Milk〉のアルバムでも共演されていますが、Lil $egaさんとの出会いはどのようなものでしたか?

〈PEDICURE〉に参加したある日、Lil $egaくんがメッセージを送ってくれて、それがキッカケでいろいろと一緒に制作をするようになりました。彼のことは知り合う前からメディアや音楽を見て一方的に知っていたので、メッセージを送ってくれたのがとても嬉しかったことを覚えています。当時はtoiret statusが山口を拠点にしていることも、名前も明かしていなかったのですが、山口県の二人をアメリカの〈PEDICURE〉が繋げてくれたことは面白いと思うし、すごく感謝しています。

そんな〈PEDICURE〉から1st EPをリリースした後の夏に、Lil $egaくんとToiret $egatusというユニットを組んで、彼のレーベルである〈Wasabi Tapes〉からアルバムをリリースしたことも自分にとってはかなり大きかった。こういう形でふたりでひとつの作品を作るのははじめてだったので、バンドとはまた違った共作の楽しさを感じました。そのアルバムをリリースしてすぐにSmokeのdagshenmaさんや〈Orange Milk〉のKeithとSethからリリースのオファーが来たので、自分でもものすごく驚いたし、本当に感謝と嬉しさで一杯になりました。

山口県はどんなところですか? 音楽の制作も含めて、どんな生活を送っているのでしょう?

山口県はその名のとおり、山ばかりです。自然が豊かで、萩とか角島の海とか本当に美しいところなので、ぜひ訪ねてみて欲しいです。ただ若い人たちはどんどん街からいなくなっているので、周りはおじいさんとおばあさんばかりですね…。生活は仕事から帰ってきたら曲をつくる。というのをずっと繰り返してて、仕事以外はタダの引きこもりって感じです。でも田舎に住んでいるほうが、外からの誘惑がないので制作に集中できるし、ネットで自分の作品をどんどん発表できるのでなんだかんだで今の生活を楽しんでいます。といってもやっぱり刺激が足りないので、もっと沢山面白い作品を作って自分の作品が自分をもっと面白いところに連れていってくれたらなあ、と妄想する毎日です。

この先のリリースの予定はありますか?

いつリリースされるかハッキリは分かりませんが年内にxPhone tweeted hatenaのアルバムと、toiret statusのEPをリリースする予定です。あとToiret $egatasの2ndアルバムも制作中です。それからYoshitaka Hikawaさん、Nozomu Matsumotoくん、Kenji Yamamoto(Lil $ega)くん、僕の四人でミクステを制作中です。これもいつリリースになるか分かりませんが、みんなに刺激を貰いながらゆっくり制作を進めています。

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toiret statusこと、Yorichikaさんのアートワーク。

Isamu Yorichika
toiret status / xPhone tweeted hatena / yolichika / Toiret $egatus
http://isamuyorichika.tumblr.com

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Interview with Turning Torso

刻々とループが変化していくうちに、複雑なリズムが生み出すポリリズムは溶け出して、テクスチャーのようになってしまう。エレクトロニックな音響に、みごとに融合されたアコースティックな音色。ジャズの影響を受けたというその独自の探求は新しいサウンドテクスチャーへの探求に置かれている。先日コラムでも紹介した前衛レーベル〈Squiggle Dot〉や、磨きのかかった実験的リリースで名高い〈SEAGRAVE〉からリリースされるなど、その音楽性はエクスペリメンタルミュージックの前線を走るレーベル群からも注目されている。新作「Leap」の発売に合わせ、その独特なサウンドがどのような環境から生み出されているのか。Turning TorsoことDavid Sanchezのミニインタビューをお届けします。

Turning Torso, “Leap”

音楽を始めたきっかけを教えてください。
長いこと音楽をやってきたし、たくさんの種類の音楽を人生のさまざまな段階で聴いてきた。最初はコード進行や自分で構成したものを組み合わせて、影響を受けたものを真似しようとしていた。そのあとは、出演やライブセットの必要が多くなってきて、制作の過程はループ志向のライブ構成とダンスフロアに向けたリズムに変化していったんだ。最後に結果として生じる音楽は、楽しみのための即興の瞬間が残ったものにすぎないんだ。

あなたが住んでいるのはどんな場所ですか? ローカルなシーンからの影響はありましたか?
メキシコシティは、コントラストの詰まったカオスなメガロポリスだよ。それと同時に、世界中の多くのさまざまな人がここで芸術やクリエイティブなことをやろうとしている。そこには私も追いかけている特殊なシーンやジャンルがあるけれど、主な影響はインターネットから来ている。

アコースティックなサウンドとエレクトロニックなサウンドがとても自然な形で融合していますね。このようなサウンドはどのようなプロセスで生み出されているのでしょう?
MIDIコントローラと、基本的にはドラムラックを制御する16ステップのシーケンサーとしてMax for LiveのM4Lデバイスなんかを使って、Ableton上で処理したギターをループさせてライブを行っている。

あなたの音楽はポリリズムとそれが生み出すテクスチャーが独特ですね。こうしたサウンドに影響を与えたものはなんですか?
テクノロジー、そして夢状態の意識。それが自分の音楽に影響を与えたコンセプトだね。Mark Fell、Laurel Halo、Lee Gambleの作品がとても好き。それから、〈Phinery〉、〈PAN〉、〈UIQ〉と〈Seagrave〉のようなレーベル。繰り返すこと、調和、そして新しいテクスチャへの探求が自分の一貫したサウンドだと思っている。

メキシコの音楽シーンで興味があるものはありますか?
国内の広い範囲だけど、White Visitation、AAAA、Nima IkkiとCamille Mandokiなどの電子音楽のプロデューサーはコンスタントに活動しているね。Juan Jose Rivas&Gudinni Cortinaのようなアーティストがさまざまなプロセスや自作の楽器で探求しているエクスペリメンタルなシーンもあるよ。

http://tutorso.com

creditos-mario-hernandez

live

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Flamebait Label: Interview with Assault Suits

今回もレーベルについて。2014年から活動を開始した、イギリスのネットレーベル〈Flamebait〉を設立者Assault Suitsのインタビューとともに紹介したいと思います。

〈Flamebait〉のリリースのラインナップを見てみてください。Gorgeシーンの立役者の一人でもあるhanaliやらConstellation Botsu、DJWWWWと、異常なほど日本勢の割合が際立っているのです。その特異性は、Assault Suitsの日本への情熱といえるかもしれません。

リリース数は多くはないですが、クオリティの高いリリースからは、今のサウンドコラージュ、エクスペリメンタルのカオティックな熱気を伝えたいという強い意図が感じられます。その偏りを見ていると、いよいよAssault Suitsが見ている世界観がどんなものなのか興味が湧いてきました。彼のインタビューに入る前に、〈Flamebait〉のリリース物をすこしだけご紹介します。

こちらは〈Flamebait〉の設立者Assault Suits自身の作品。2014年と少し以前の作品になりますが、最初のリリースです。自由奔放に弾む音塊がぶつかり合って、美しい崩壊の軌跡を描くような、伸びやかで解放的なシンセサウンド。

日本のノイズアーティストConstellation Botsuの作品。容赦なくズタズタにされたサンプルとノイズ音が、巨大なパズルのように組み合わさり破壊的な美しさを作り出しています。


Constellation Botsu “ちゅざけんなッズベ公!!”

最後に〈Flamebait〉の最新リリースです。こちらはAirportの作品。AirportはMiranda Pharisのプロジェクトですが、さまざまな感情のスペクトルが光の中で溶け合って無感情になってしまったような、とてもエネルギッシュな表現になっています。これはすごい。


Airport “Lilies”

ほかにもいろいろと聴くべき作品がとても多いです。ぜひいろいろ探してみてくださいね。それではようやくですが以下に、Assault Suitsのインタビューをお届けします。

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まずはあなたのレーベルではたくさんの日本人がフィーチャーされていますね。もともと日本の文化に興味があったのでしょうか?
その質問に答えるとすると、ほんとうに長い答えになってしまうんだけど、それは子供の頃のどこかで始まったんだ。アニメをみたり、日本のビデオゲームで遊んでいて、それから特に多くのインディペンデントのネットレーベルを含む、現代のエレクトロニクミュージックにたどり着いた。

日本のアーティストや作品のどんなところに惹かれたのでしょうか? また、それが〈Flamebait〉の音楽性にどのようにつながったのでしょう?
自分はいつも日本のアートやポップカルチャーへの理解に自然と繋がっていた。いつも興味をそそられ、刺激されていると思う。子供の頃から、特定のビデオゲームやアニメやマンガ、特にスーパーファミコンやファミコンゲームとアキラはとても大きな感銘を受けていたんだ。イギリスに住んでいるので、それについては「部外者」のような部分もあるけれど、自分がこれからプレイする、あるいは今日もまだプレイしているたくさんのゲームや、自分が見るだろう、そして今も見ているアニメ、その全部がありきたりに陥る事なく、クリエイティブな「カタ」をうまく回避して作品を面白くしてる。過去の日本のポップ文化とのつながりを維持しながら、ヨーロッパや北アメリカの影響を吸収しているように思う。

これが少し個人的な、でもこの質問に関して重要だと思うこと。そしてエレクトロミュージックの領域でなぜ自分が日本のアーティストに興味を持っているのかという理由。日本から生まれてくる現代のエレクトロミュージックで、何年も前に興味をそそられたいろんなものが、今また活発になってきている。つまりそれは、自由奔放ということ。〈Flamebait〉を始めたとき、自分はいつも自由奔放で自己中心的で、不道徳なものをはぐくみたいという願望を伝えている。それが目標。

日本のアーティストにリリースのオファーをした経緯は?
いま言った資質の多くを、オンラインで見つけた日本のアーティストはすでにはっきりと備えていた。それで最初にHanaliとDJWWWWにコンタクトする意味があると思って、レーベルでリリースしたいか彼らに確認したんだ。日本のオルタナティブミュージックのシーンは、盛り上がっていて、常に成熟している。ときどき、他の場所よりももっと早いペースに思える。あとからじゃなく、そこに早く接続できたのはラッキーだったかもしれないね。

レーベル外の活動があれば教えてもらえますか? 
今年、Constellation BotsuとAirportをリリースしてから、さらに多くのパイプラインができて、それだけじゃなく、アーティストや音楽批評家、DJを招いてのミックスのシリーズも始めようとしている。現代と等価値な歴史的作品を集めたり、あたらしく冒険的なやり方で、ミックスの芸術にアプローチする作品を提示するためにね。ミックスは、オンライン上に圧縮ファイルとしてアップするから、直リンクからダウンロードできるようになるよ。Assault Suitsの10の章からなるミックスとMarcel FoleyによるHYPNAGOGIC MIXがもう聴ける。音楽ライターのAdam Harperや、Dane LawとDJWWWWが同じく、参加する予定。

次のリリースも日本のアーティストだそうですが、どんなものになる予定なのでしょう?
次のリリースは、CVNのフルレングスのものになる。タイトルは「Unknown Nerves」。期間限定のカセットを日本のCVNのライブだけで売る予定。そのすぐ後、DJ ND Fleshによるミックステープが、アーティスト自身が作ったショートビデオのシリーズと一緒にリリースされる。あと、Adda KalehのデビューEP「ID」以来、彼女の初めてとなる次のオーディオプロジェクトをリリースする計画もある。Adda Kalehは賞賛を浴びたルーマニアのパフォーマンスアーティスト、Alexandra Piriciのサイドプロジェクト。まだ発表できないプロジェクトもたくさんあるよ。

Flamebait http://flamebait-label.com/

Unknown Nerves - CVN
U.S.M! - DJWWWW
End Gorge - Hanali
ちゅざけんなッズベ公!! - Constellation Botsu

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Interview with Kazumichi Komatsu / Madegg

ビートミュージックからアンビエントまで、領域を超えた独自のサウンドを生み出してきた若きトラックメイカーMadeggこと小松千倫。京都で活動する彼の初個展が、高円寺のWorkstaion.で開催された。トラックメイキングからデザイン、そしてコンテンポラリーアートとその表現領域は多岐にわたるが、多様な表現の奥には共通した核が存在しているように思う。そんな彼に展示のコンセプトを聞いてみたところ、なんと「ハウスミュージック」とのこと。最近「ハウスミュージック」をテーマにしたパーティも始めたばかりだから、それも関係しているかもしれないなと思いつつ、個展開催中の小松千倫にそのコンセプトの詳細について聞いてきた。

東京では初個展ということですが、Workstaion.で行うことになった経緯は?
京都でこれまでグループ展示はやっていたんですけど、個展はやったことがなかったんです。Workstation.の矢満田さんに以前フライヤーのデザインをお願いしたことがあって、彼らのグループ展も見に来ていたので、僕からやらせてくださいとお願いした感じです。Workstation.の人たちはとても美意識が強いので、僕でいいのかなっていう気持ちもあったんですが、是非という感じで。それが3ヶ月前。

小松さんといえばトラックメイカーとして知られていますが、サウンドアート的な方向ではなくてインスタレーションという表現手法を選んだのはなぜなんでしょう?
音楽をつくっている時も僕はわりとイメージ先行なんです。分かりやすくいうとイメージを作るのも、音楽もやっていることは同じと思っています。今でも音楽をつくっているという意識はなくて。形式的には音楽という手法を取るんですけど、イメージをつくるのと同じような質感でやっていいんじゃないかと。

アルバム「NEW」はかなりコセンプトをしっかり立てて制作されたと聞きましたが、そういう手法はまさにアートの人のやり方だなと感じました。
悪い癖かもしれないんですが、自分は作る前にそうやっていろいろ考えちゃうところがあって。そのときは音楽から「共感」を得るものはなくて、もっとちゃんと考えてやりたいという気持ちがあったからですね。

共感というのはどういうものですか?
今のアーティストってアイドルみたいなものに近くなっていっている気がするんです。音楽でも、スター性を重視すると、キャラクター性のようなものが強くなっていってる。それに対して違和感があって。むしろ僕は言っていることが全然わからない人の方が面白いと思っているんです。その人が好きなのか、それともその人の音楽が好きなのか。そうじゃないと分からなくなる。結局ほんとうには音楽を聴いていない気がするんですよ。

ちなみに今回のテーマが「ハウスミュージック」ということですが、そのテーマを選んだのはなぜですか?
ハウスミュージックに最近はまっているんです。最近はインダストリアルっぽいテクノが流行っていると思うんですが、そういうものをたくさん聴いたので、ハウスのような音楽を自然に聴くようになったのかなと。それでハウスっておもしろいなって思って。しかもカナダとかオーストラリアとかダンスミュージックの中心国じゃないところで盛り上がっていて。そういう現象にも興味があって。

ハウスはもともとウェアハウスというシカゴのクラブでかかっていた音楽のことで、それで「ハウス」と呼ばれるようになった。当時抑圧されていた社会的なマイノリティとかそういう人たちがクラブに行って現実を忘れて踊るという面があって。そうやって社会の暗い部分を、ハウスっていう楽しい音楽で隠してる。明日を生き抜くために、そのために今を楽しみたいという音楽なんだなってわかった。内部構造を隠して、そこからスタートするというコンセプトはおもしろいなと思って。

例えば自分の作品で言うと、この作品は元はGoogleストリートビューで見つけた画像なんです。それを30dpiでコンビニで印刷して、金色のマーカーで点描で描いていくということをやっています。表面をなぞることで表現するというのが、表面に特化したハウスという音楽に繋がってると思ったんです。

表面を扱ったアーティストがたくさんいる一方で、今説明していただいた作品で言うと、印刷で再現できるものをあえて自分の手を使って完成させるという手法をとっていますが、やはりそこは自分の身体を経由させたいという気持があるんでしょうか?
やっぱりありますね。表現のフェティッシュな部分かもしれませんが、これなんかは絵にしたいという気持ちがあって。印刷物ではなくて、絵にするために自分で描かなくてはならない。

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ではテーマとしては、イメージというか表面に関心があるんですね?
そうです。ポストインターネットの作品の流れで、みんなその次を探していろんなことをやっていると思うんですけど、それは共感するところがあって。ブラックボックス化してその中に何があるかを忘れるということかなと僕は思っています。記憶しないようにするというか。物の背後にあるものは盲目的に捨てて、目の前にあるものだけ、表面からスタートしようということじゃないかと。

アルバム「NEW」のときも「はりぼて」という言葉で音楽を建築物に喩えて説明されていましたね。やはりそのときもそういった問題意識を持って制作されていたんでしょうか?
そうですね。あれはあんまり覚えていないんですが(笑)。そのころはアンビエントについて考えていて。地下のクラブで鳴っている音楽が、地上に出て音が漏れているけれどどこまでが音楽として認識できるかという話だったり、タージマハルをはじめてみたときに巨大すぎて逆に平面に見えるといったような経験論のようなものを読んで刺激を受けて、たとえばそうした建築物が音楽の構造だとしたら、アンビエントのようなテクスチャーが遠くから見える風景のようなものなんじゃないかということを考えていました。

インタビューの最初でも言っていましたがMadeggの音はたしかに視覚的なところがあると感じました。展示の話にも繋がるかもしれないんですけど、音楽とか視覚表現に興味を持った原体験のようなものはなにかあるんでしょうか?
たまに高知に帰ることがあるんですけど、今になってたまに思い返すことがあって。高知はほんとに田舎なので、遠くを見るしかないんです。近くに何もないんですよ。田んぼとかトラックとかそういうものしかないから。海が近いとか。田舎だと遠くを見るしかなくて、それは言い換えると想像するしかなかったんじゃないかと。イメージするしかない。さっきのハウスの話につなげると、ハウスは構造的に言うと、ブラックミュージックのR&BとかディスコとかBPM100ぐらいのものを、BPMをあげてラテンのリズムをサンプリングして作っていたと思うんですけど、それってつまりエキゾチカですよね。異国情緒主義というか。異国への憧れみたいなものを夢想して、音楽に取り入れている。今の現実にはなにもないから、遠くを見ないとならない。そういうことなのかなと。

小松千倫
http://kazumichi-komastu.tumblr.com
https://soundcloud.com/madegg

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Nice Shop Su “Very Gois #1”

どのカテゴリーにも属さないけれど、すばらしい存在ばかり集めたらどんなことになるだろう。そういった思いつきで立ち上げられたにちがいない、ナイスショップスーはとても個性的なお店。ちょっとした秘密基地のような佇まいの木造アパートで、世界中の面白い音楽やジンなどを集めて販売し、最近ではいろいろなところに出張店舗を出店するなど、精力的に活動している。そんな彼らがこのたび、コンピレーションアルバムをリリースすることになったので紹介したいと思います。

そんなナイスショップスーのインタビューはこちら

ナイスショップスーのふたりは、自分たちが集めてきたさまざまな商品の合間に、自分たち自身のリリース物も販売するというプランを考えていて、このコンピレーションはその第一弾。自分たちの活動を通じて出会った国内外のアーティストがフィーチャーされており、まさにお店が凝縮したような構成になっている。関連イベントとして、河川敷のようなところで開催された「桜ノ宮エクスプロージョン」という野外フェスも無事終了した。

その内容はといえば、小気味よい新しい感覚が詰まっている。方向性は幅広いけれど、音源のひとつひとつに、アーティストの見ている景色が写り込んでいて、とても色彩豊かに仕上がっている。密度の高い表現が一箇所に詰まっているのだから、お得な一枚にちがいない。まだ名付けられていない音楽以前の音楽。聴くという楽しみ方自体をいちから開発したくなってしまうような、そんなコンピレーションだ。

オンライン以降、ほとんど無限に近い作品と出会えるようになったものの、蓋を開けてみたら案外わかりやすい表現に収束して行ってしまっているような気がする昨今、未開拓地に分け入る無謀さが称賛される世の中になったほうがよいと思うし、そんな宝探しのような楽しさがもっと共有されていくと未来は明るいのに、と思います。

0001 0002 0003

1. -^] – J_JJJJJJJJJJJJ
2. Secret Track
3. jnjnjnwavVRSPIUIMjnjnjnwavVRSP2 – Bug bus piano
4. sufo rabiaka bird with forbnl – துஈசிதிசி திஇல்டூ collabs
5. Acid Brain (Of Beethoven) – 脳BRAIN
6. individually designed tiny fashionable hole – cawa (カワ)
7. Art Teacher Feat. Bob Catt – Quay
8. roses – bottom dog
9. dance revolution – fri珍
10. Life Spread Sheet (Opening) – Leftover Platters
11. Canatoes ft. Burt Bacharach + Anne Laplantine – o . o துஈசிதிசி திஇல்

Price : 10USD / 1200JPN

「Very Gois #1」はナイスショップスーで発売中。また、第2弾のコンピ&リリースパーティを7月上旬に発売/開催する予定。詳細・視聴などはこちら。
http://nnnnnnnnnnnnn.web.fc2.com/verygois/01.html

問い合わせ先(ナイスショップスー)
http://nnnnnnnnnnnnn.web.fc2.com/nn.html
HP: http://nnnnnnnnnnnnn.web.fc2.com
MAIL: enuu@live.jp

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機材拝見 食品まつり
a.k.a foodman
後編

手法を変化させ続けることにより、フレッシュなままに音を作り続ける。そんな食品まつりの制作観は、このフリーフォームなインタビュー会話にも表われていた。どこまでも身軽で、多分目に入るものをすべて吸収してしまうような貪欲性、たぶんそこに形を与えるためのセンス。それらがフラットに彼の中で結びついて、これまで聴いたことのなかったようなオリジナルな楽曲を生み出し続ける。だからそれはいろいろなものに似ているけれど、そのどれとも違うものになっている。そんな彼の制作環境について聞いたインタビュー前編に続き、ここでは少し時間を巻き戻して、名古屋在住時のジュークとの出会いから始めたいと思う。インタビュー後編は、彼の制作のルーツであるジューク観について聞いていく。

名古屋出身だそうですが、どうして横浜に住むことにしたんですか?
Dommuneで「ジューク解体新書」を見たことがきっかけで、ジュークを作りたいと思ったんです。最初はSNS上で、Booty TuneやLEF!!! CREW!!!の人たちと繋がって。それがきっかけで、名古屋以外にも住んでみたいって思うようになって。横浜ならLEF!!! CREW!!!のメンバーやPAISLEY PARKSいるし、行ってみようかなと。来てよかったです。皆さんバイブスが高いっつうか。

Dommuneの「ジューク解体新書」は2011年でしたよね。トラックは、そこからつくりはじめた?
ずっと音楽は好きなんですけど、ま、ちょっとつくってみよっと思って。それまでは制作はしていたんですけど、表立ったリリースをしたことがなくって。録音して、それがどんどんたまっていくだけ。それでジュークをつくって、アップしていたら、反応が返って来るようになったんです。思い起こせば、2012年のジュークのSNSの盛り上がりが結構やばかった。北海道にジュークをつくっているやつがいるよとか、広島にひとりいるらしいじゃんとか。なんか捜索みたいになって。

それでジュークを作っていたトラックメイカー同士が繋がっていったと。
それでみんな繋がっていった。今の日本のジュークシーンは完全にSNSですね。ずっと音楽やってて、あるジャンルがはじまる瞬間みたいなものってなかなか体験できない。その音楽が根付く瞬間に出会えてるっていうことに、ものすごく興奮した。こんな経験って音楽やっててできると思わなかった。そこにみんな熱いものを感じたんでしょうね。

そのSNSからジュークのコンピが出来上がるわけですが、その経緯はどんなかんじだったんでしょうか。
「Bangs & Works」っていうジュークのコンピがあったんですけど、CRZKNYさんや、Booty Tuneの秋岡さんが、ツイッター上でその日本版が作れたらいいねっていうような会話になって。そこからメンバーを募集していって。募集したら結構な人数が集まりました。40人くらい。バックグラウンドも色々な人達がジュークやばいって思って、それぞれ思うジュークをつくった。それがまた楽しくて。

なるほど。
それで日本のジュークって、自分の解釈で勝手にやっちゃってるから、不思議なものになってる。結果的に本場のジュークとは違うかたちになってるのが、おもしろい。Rolling Stones誌にも日本のジューク/フットワークが取り上げられたんですけど、そういう部分を面白がってくれているのかなって。

最初のアルバムのリリースは、2012年の〈Orange Milk〉からですよね。
あれもサウンドクラウド経由で連絡が来て。ジュークっぽい曲をいくつか上げてたんだけど、レーベルのKeith Rankinってやつが、これリリースしようよってメッセージが来て。ジュークじゃないんだけど、ジューク的なものが確実にあるよねって。それが、外国の人に伝わったってのが嬉しかった。ジュークじゃないんだけど、感覚的なジューク。

そのリリースを経由して、海外の人にも知られていくという流れですか?
それがTiny Mix Tapesで紹介されて。それからちょくちょく声かけてもらって、リリースするような感じになりました。たぶんあの頃、フットワークのダンスミュージックじゃない方のおもしろさを、注目してた人がいたんでしょうね。リスニングとしてのフットワークというか。そこから結構聴いてもらえるようになって。〈Orange Milk〉のSeth Grahamは日本語を結構しゃべれるんですよ。元々関西にいたらしくて。それでやりとりができた。

これまで作った音楽はずっと温めていたけれども、ジュークと出会ったことで、やっと外の人たちに聴いてもらえる形になったんですね。
それまでは、全然反応がなかった。ジューク聴いた時に、それまで自分がつくっていた音楽に考え方が似ているものを感じて、親近感がわいたんです。ジュークだったら、俺も何か表現できるかもっていう。それまでは、ちゃんとしている音楽への劣等感があった。でも、ジュークを聞いた時に、ちゃんとしなくていいんだってわかったんです。実際はちゃんと考えてつくってるんですけど、わりと感覚だけで作ってもいい。そこからジャンルも関係なしにやればいいって。そういうやり方でも、ジュークとして聴いてもらえるのが嬉しかったんです。

ジャンルと出会ったことでジャンルレスになったっていうのは、面白いですね。
ジュークからメッセージをくらったじゃないですけど、そこからより一層やろうっていう気持ちになった。ジュークじゃない曲もあるんですけど、個人的にはジュークの発想が自分の中にある。

自由度が高い音楽とはいえ、一方で、ジュークっていうジャンルを成り立たせている要素もあるわけですよね。それについてはどう思いますか?
例えばダンスミュージックだと、だいたいどのジャンルでもフォーマットがありますよね。テクノの4つ打ちとか。ジュークって、キックの置き方とか、スネアの置き方とか、一応こういうサウンドみたいな枠組み。ただジュークは、その許容範囲が広い。本来ならこう来てこう来るだろうというのが、来なかったりする。パターンがない。あと、弾き語りとかでもジュークを感じる時がありますし。
 俺、最初にジューク聴いた時に思ったのが、初めて機材を買って音を出して、自分が作った音だって感動するじゃないですか。その時の感じがそのまま残ってるなって。ある程度やっていくと洗練されがちなんですけど、洗練されていない状態のまま高みに上っていってる。ダンスミュージックというより、宅録遊びのような楽しさ。自由な感じというか。ジュークはシカゴのものだけど、そういうふうに各自が過大解釈してもいいっていう気がしてて。

実際、シカゴからの反応ってあったりするんですか?
シカゴの人って、俺らは俺らみたいな感じがあるから。たぶんあまり他の国のジュークをそこまで聴かないんじゃないかな。自分たちで勝手にやばくなって行っているイメージがある。だから逆に、そういう人の反応は聴きたいですよね。RP Booなんかが、自分がリリースした曲をいいっていってくれたらしいんですけど。どうなんだろう。自分が作ったものを、シカゴの人達も取り入れてみようみたいになったらいいなとか思いますね。ライバル心ではないですけど、そういう気持ちはありますね。だから俺、シカゴのジュークはあんま聴いてないです。

えっ、ほんとですか。
聴かないことでリスペクトするというか。同じことをやっちゃいかんなって。逆に、インタビューとかには影響を受けます。

ジュークにも踊るっていう機能性の部分があるじゃないですか。ダンスミュージックなので。やっぱりその機能性の部分は意識しませんか?
確かにダンスのことは、たまに考えるんですよね。頭の中をぐちゃぐちゃとするイメージ。脳のしわとしわをこうフットワークのイメージにからませるというか。あと、作りながら指で踊りを真似してやったりとか。この音で踊ったらどうなるんだろうなって。
 でも、踊れる踊れないっていうことについては、昔から疑問に思ってて。何をもって踊れると言ってるんだろうって思う時がある。踊ろうと思えば、無音でも踊れる。たとえば低音がまったくない音で、踊りに行ったらやばいみたいな感じ。実際に、そういう経験ありますよ。ポクポクポクって音だけで踊ったら、いけないことをしている感じがして。こんなことしていいのかなって(笑)。

おもしろいですね。食品さんのジュークを聴いた時の衝撃は、低音があまりないっていう部分でした。
それは嬉しいですね。最初に一番食らったジュークは、ラシャドの「Reverb」だったんですけど、たまたまノートPCで聴いていたので低音がぜんぜん聞こえなかった。聴こえた音にすごく共感したんですが、そんときはジュークで低音がどうとか高速ビートがどうってのに反応したわけではなくて、そことは違う部分に反応してた。音の並び方というか。音楽の聴こえ方って、それぞれ違うはずで、みんな同じ聴こえ方してるはずないだろうと。俺は俺でこういう聴こえ方してるんだから、それはそれでいいんじゃないかって。

食品さんの音楽性って、なかなか一言で伝えるのが難しいんですが、今日もお話ししていて、奥にルーツが何本かあるのかなという気がしました。
すぐ影響を受けるタイプなんです。いろんなことを、バラバラにやっちゃってた。それがジュークでまとまったみたいな。ジュークが方程式みたいに。すべてがジュークで説明できたみたいな。そういう感じがあるかもしれない。

曲ごとに全部コンセプトが違うのに、バラバラな印象は全然ないです。
それはありがたいですね。飽き性ってのがあるんですよね。1曲つくってる途中で飽きたら次の曲つくってみたいな。同じジャンルをつくるのは苦手なのかもしれない(笑)。

食品まつり aka foodman
2012年にOrange Milkよりデビューした、横浜在住の日本の電子音楽作家。シカゴ生まれのダンスミュージック、ジューク/フットワークに刺激を受け、作品を作り続けている。 https://soundcloud.com/shokuhin-maturi

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機材拝見 食品まつり
a.k.a foodman
前編

食品まつりは、横浜在住の電子音楽作家。もし、その作品が未聴だとしたら一度聴いてみてほしい。きっとこれまで聴いたことのない感覚を見つけられるはずだから。パターンの読めないビート、異国情緒を感じさせるサイケ感、色彩豊かで新鮮な驚きに貫かれた展開。シカゴ生まれのダンスミュージック、ジューク/フットワークを独自に消化・咀嚼したという音楽性は、ジャンルという枠組みを軽く超えていく。けしてワンパターンでないのに、奇妙なポップさまで兼ね備えている。そんなサウンドには、そこいらのフロアでお目にかかることはなかなかできない。特異な作品が生み出される制作環境とは、いったいどんなものだろうか。その秘密を探りに、神奈川県に位置する食品まつりさんのお宅にお邪魔してきました。

制作はコンピューター中心ですか? アプリケーションは?
ソフトはAbletonのLiveですね。機材はKORGのELECTRIBEがメインです。ライブの時は他の機材を使ったりもします。ライブはライブの曲を作るんですよ。いちから全部つくります。ライブの曲はあんまりリリースしてないですね。

リリースした曲をライブでやることは?
ほとんどないです。リリースした曲は、ライブに向いてなさそうで。なんかくしゃくしゃってしてるだけなんで(笑)。どういうシチュエーションでやればいいのかがわからないっていう。

それはまたすごいですね。この機材セッティングで、気に入っている特性はありますか?
本当はもっとこうしたいってのはあるんですよ。モニターの低音がちょっとわかりにくいとか。オーディオ・インタフェースももっといいやつが欲しいんですが、とりあえずあるものでやってます。あと、ZOOM ST-224は一番初めに買ったサンプラーなんですけど、今これで3台目です。自分のサウンドの特徴になってるものですね。

以前、チープな機材を使ってすごい曲をつくりたいっておっしゃっていましたね。
その気持ちはあります。それもあって、いまだに曲作りのメインサンプラーはST-224を使ってます。中古で5000円くらいで買えるんですよ。madlibなんかがSP-303だけでトラック作ってるのにロマンを感じますね。そんなんでやっちゃうの? みたいな。今だと逆にソフトの方が安かったりしますけどね。

ドラムマシンは全然使わずですか?
サンプラーとシンセとPCだけです。コンピューターじゃないとやりとりとかがうまくいかないプロジェクトなんかもあるんですが、基本的にはハードだけでやりたいってのがありますね。ライブもメインの音はハードです。コンピューターはwavをポン出しするときに使うぐらいですね。あと俺、曲をつくる時、そこまで聴き返さないんですよ。

えっ、自分のつくった曲をですか?
そう。普通はつくってて、何回も聴きなおしてブラッシュアップするんでしょうけど、僕の場合はブラッシュアップはそこまでしない。できたらそこまでいじらないで次の曲にいくという。そうするとバリエーションが豊かになる気がするというか。考えないので。ハードだと一発録音だから戻れない。巻き戻しできると制作時間が長くなって、それもよろしくないなって。この制作法はmadlibのインタビューからモロ影響うけてます(笑)。

ということはやっぱり、制作時間は短い?
最近は1曲につき2~3時間くらいで作ったりとか。前は1曲に1週間とかかかったりしてたんですけど、最近は結構短いですね。バッとつくって録音して終わりみたいな。でも、今年からはもっとコンピューターを使っていこうかなって。ちょっとハードも飽きてきたし。

ZOOM ST-224
KORG ELECTRIBE
DAW環境はAbletonのLive
Roland JUNO-60

シンセとサンプリングと比率はどのぐらいですか?
結構バラバラなんですよね。思いつきでサンプリングだけつくる時もあるし。半々ぐらいですかね。自分で弾いてみていいなってやるときもあれば、サンプルをひっぱってきて、バッと切ってみたりとか。飽きないように、いろんな作り方をします。

1曲が短いのも特徴ですね。
それも飽きちゃうからっていう。当時、一日1曲2曲を絶対つくろうって自分に課してた時があって。さすがに一日1曲2曲、仕事から帰ってきてつくるのが辛くて。で、1分つくって、つくったことにしておこうっていう(笑)。

短いのに構造がはっきりあるのがすごいと思いました。
確かに最近つくってるやつは、割と展開がはっきりしてるのが多いですね。それも、飽きないようにですね。小さい絵が好きなんです。小さいけどよく見ると書き込まれているみたいなものが。そういうものが好きなので、性向かもしれないですね。

視覚的な感じがするというか。作る前にイメージがある?
ビジュアル的に考えてますね。ジュークはビジュアル的なところがあって、聴いてる時に、立体的に石が並んでて横から定期的にピュンピュンピュンってレーザーが飛んでるみたいな。

曲ごとにもイメージがはっきりしていますね。タイトルなんかも面白い。
タイトルは適当なんですけど、日常にあるものは意識してますね。日常の中のサイケデリック。ふつうに飯食ってたら、いきなりぶっ飛ぶ瞬間とか、お風呂入ってたら、そのまま違う世界にいたみたいな。そういうのが好きなんです。

最新のリリースは?
一番新しいのは、〈Patient Sounds Intl.〉からで、「Hot Rice」っていうタイトル。お米から炎が出てるジャッケのやつ。

初CD作品の「COULDWORK」はベーパーウェイブ的な感触が、これまでよりも割と前に出てた感じがしました。
〈meting bot〉の海法さんに大部分を選曲してもらったので、選曲面でそういう感じが出ているかもしれないですね。

選ぶ人の感性?
そうですね。「COULDWORK」は彼のチョイスがかなり活きてるなって。

じゃあ、曲づくりで、アルバムを作ろうっていう意識はあまりない?
そうかもです。でも、次出すのも〈Orange Milk〉からで、LPなんですけど、それは割とコンセプトがあって。タイトルは「イージー民族(EZ MINZOKU)」っていうやつなんですけど、ポンポンポンって音だけで踊れる、ジュークの発展系みたいなのをやってみようと。低音もあんまなくてスカスカしてて、っていう感じなんですけど。子どもがごはんのときに、箸とかでお茶碗にカンカンカンってするじゃないですか。それの発展したやつをやりたいなって思って。あれって民族音楽の原型じゃないですけど。音楽やってない人が、ポコポコやってるっていうのがおもしろいなって思って。誰でも簡単に民族音楽ができる。そういう意味合いで「イージー民族」ってタイトルをつけたんです。それが、5月くらいに出ると思います。

楽しみですね。
リリース自体は結構、準備してます。今また色々とつくってるところですね。

食品さんには、これまでない音を作ろうとする目指している姿勢を一貫して感じます。
聴いたことがない音楽をやりたい。音楽って、新しい手法は出尽くしていて、組み合わせでしか新しいことができないとよく言われます。だけど、気持ち的には誰も聴いたことがない音楽をつくりたい。その気持ちが大事なのかなって思います。ロマンかな。あるいは、ファンタジー。新しいものを発見したい。そういう気持ちがあるのかもしれないですね。

※後編は食品まつりさんのジューク観、そして日本のジュークシーンの形成についてのインタビューをお送りします。

食品まつり aka foodman
2012年にOrange Milkよりデビューした、横浜在住の日本の電子音楽作家。シカゴ生まれのダンスミュージック、ジューク/フットワークに刺激を受け、作品を作り続けている。 https://soundcloud.com/shokuhin-maturi

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