Virginal Variations:
Interview with Koshiro Hino

goatのコンポーザー兼リーダーの日野浩志郎。ソロ名義YPYでのリリースや、自ら主催するカセットレーベル〈birdfriend〉も動きが活発だ。大阪のアンダーグラウンドシーンの中心人物として注目を浴びるその彼が、新たなプロジェクトVirginal Variationsを発足した。内容はメンバー20人というこれまでとは全く異なる形態で、管弦楽などクラシックな編成を中心とする。東京公演は、去る2016年3月13日に原宿Vacantにて開催され、UNITでの第2回となる公演が9月22日に控えている。
そのライブで、Virginal Variationsは多人数編成ならではの、オーガニックで厚みのある独特の音響を響かせた。持続音のレイヤーにさまざまな音色が重ねられていくリズムのないパートから、一転エレクロトロニックなサウンドと管弦楽器が複雑に交差し、インダストリアル感のある強烈なドラミングが展開していく。オーケストラ編成のインパクトもさることながら、ヴァリエーション豊かな展開に耳を奪われ、一時間ほどの演奏も一瞬に感じるほどだった。
本記事ではエネルギッシュな公演を終えたばかりで疲労困憊の日野浩志郎に新プロジェクトVirginal Variationsの詳細について直撃。インタビュー&ライブ映像とともにお届けする。

今回は日野さんの新しいプロジェクトVirginal Variationsをメインにお聞きしていきたいと思っています。昨日、Vacantでの東京公演が無事終わったばかりですが、疲れは取れました?
まだぜんぜん疲れてますね。ライブ終わってぬけがらみたいになってしまって。

関わってる人も多いですしね。まず今回のプロジェクトで目を引くのは20人というメンバーの多さですが、この編成でやってみてどうでしたか? 率直な感想は?
これだけ人数集めたのは初めてだったので、単純にひとつの音をみんなで出すってだけで、感動がありますね。でも、20人でのリハーサルは当日までできなくて。だから大阪のメンバー半分、東京のメンバー半分でそれぞれ練習を重ねました。当日の現場で音を合わせることを頭の中だけで想像しながらやってきたので、不安はずっとありました。

そうすると当日までは、ひとりの作業の割合が多かったということですか?
ほとんどひとりでした。集まる時間がなかなかなくて。大阪のメンバーと練習したのも、4回か5回。当初は服部峻くんにアレンジを加えていってもらうというのも考えていたんですが、今回は時間が取れず難しかったですね。9割くらいのベースは自分で考えて、そこからみんなで一緒にっていう感じです。初回のライブは、去年のHOPKENでやったものなんですけど、そのときは8人編成だったんです。そのライブを終えてから、しばらくは全部忘れる作業をしてて。今回の東京公演は、そこから何が必要かっていうのを客観的に聴いて、いちから組み立てていきました。

すると、メンバーを集める前に明確なヴィジョンみたいなものがあった?
いや、なかったです。もちろん、ある程度見えてる部分はあるんですけど、音を鳴らしてみないと分からないので事前のアイデアだけに頼ってしまったらまずい。Virginal Variationsは、与えられた環境の中でどういうことができるかっていうのを、やたらめったら試しまくったみたいな、そういう感じです。だから情報量がすごく多いんですよ。1時間くらいの演奏の中でも、5つのフェーズがあるし。

5つのフェーズは具体的にはどういうアイデアなんでしょう? これは5つ曲があるって考え方になるんですか?
そうですね。5つの曲っていう考えでもあるけど、基本的には全体で1曲という考え方です。

ドラムパターンがない前半から、後半にはリズムが入ってくる構成になっていましたが、そういう全体の構想は最初から?
そう。ドラムだけのフェーズは一番初めにできたんですよ。ドラムパターンを作るのが一番得意なので。でも流れはあんまり考えず、思いつくものを次々作っていき最終的にパズルのように組み込んでいきました。行き当たりばったりみたいですね(笑)。

でも聴いている方としては、そうも思えなくて。アイデアの部分がしっかりしているからかもしれませんが。今回の公演でいえば、発想の大元になったものはなんだったんでしょう?
ヒントとなった曲やアーティストはたくさんいますが、おおまかに言えばクラシック楽器の編成とエレクトロニクスを足し合わせるという単純なアイデアが根本になります。ソロだったら話は別ですが、最初にコンセプトを決めすぎるにはまだ経験が足りないと思ってたんですよ。とりあえず大人数で試したいアイデアがとにかくいっぱいあったので、まずはそれを試していく。そこで面白いアイディアや新しいコンセプトが見えてくるだろうと思って最初に決めすぎないようにしてたんです。集まった楽器と人数でどんな事ができるだろう?というそこからのスタートでした。 今回は20人揃ったんですけど、とにかく最初は菅と弦がいっぱい欲しいというのは考えてました。だから最初に、Twitterで弦楽器を募集したんですけどね。でも残念ながら応募が来なくて…。

日野さんといえばgoatのセカンドのリリースもあったり、去年で一定の評価を受けたと思うですが、そのタイミングで新プロジェクトというのにびっくりしました。
いい意味で期待を裏切っていきたいと思ってるところはあります。ある程度こうやったらうまくいくということが見えた時点で新しいことをしようと思ってしまう。今年goatは基本的に海外でしかやらない方向で考えてて、3枚目のアルバムを作ったら日本でもまたコンスタントにやりたいと思ってます。それぞれのプロジェクトは1回1回しっかり作って、bonanzas~YPY~goatそしてVirginal Variationsとマンネリにならないサイクルを自分の中で保とうとしてるんです。自分がやりやすいようにやってるだけで、発表するタイミングに関してはなにも考えてないですね。

とはいえVirginal Variationsにも、goatとの共通点みたいなものがあったりとか、goatから生まれてきた部分もある気もしました。
たとえば、goatだと強度があるものを作りたいと思ったら、練りに練ってワンループをひねり出す必要がある。だけどギターのコードを100人で鳴らせば、簡単にものすごい音になる。浅はかなことかもしれないけど、人数を集めるっていうのはそれだけですごいことなんです。それだけに頼ったらダメだと思うけど、大人数だからこそできる表現だってある。 goatに関しては逆に、すごく制約を作ってる。制約のなかで作るっていう境地、そのおもしろさを求めてる。Virginal Variationsは、たくさんの要素を集めて、その中でどういう方向性があるのかっていうのを試していく。だからgoatで培ったアイデアも入ってるし、演奏の緊張感は通じるものがあるのかもしれません。

ちなみに作曲って、どういう手法でやっているんでしょう? PCとか?
PCは使ってないですね。ソロのような感じで作るなら打ち込みでできるけど、こういう弦楽器では試したことがない。それで、今回は全部ノートとペンです。

じゃあ、譜面ですか?
譜面みたいな感じ。作曲ノートにとりあえず思いついたことを全部書いて、こういうルールで、こういうドローンにするみたいなことや、ルールをこう組み合わせたらどうなる、みたいなことを書いてます。それがある程度たまっていったら、それを元にフェーズの組み立て作業をしていきました。

少し脇から見えていたんですが、不思議な譜面ですね。譜面になってるところもあるし、なってないところもあるし。これはみんなで同じものを共有してる?
全員一緒の譜面ですね。僕の合図がここであるみたいなのとか、ここからここの間はこういうルールでいきます、とか。まあなんかそういうのをこと細かに書いて渡してます。やってる方も、楽しんでくれてたみたいですね。あとはグラフィックスコアみたいなニュアンスもある。

演奏者にはどのぐらい自由度があるんですか?
ドラムはほぼ自由が無く、コードに関してもほとんど決めてる。そのコードの中で、ある程度自由を持たせるところもあります。いろんな種類の展開のさせ方があって、ドラムをこうやったら、次こういく、僕がこういう手を挙げたら、次の展開にいくとか。時間で計って進行するところもあるし、色々試してる。コードに関してはけっこうこだわっていて。goatとかbonannzasの印象で、コードが弾けないんじゃないかと思われたりするんだけど、実はコードを考えるのは結構好きなんです。コードはgoatではやれないとこだったから、その意味でも、これまでできなかったことを一回解放して、やってみるっていう面もありますね。

今回、日野さん自身は演奏せず、指揮者に徹してましたね。
そうですね。正直ミュージシャンシップというか、自分をミュージシャンだと思ってないんですよ。そこまでギターが好きじゃないし。ドラムマシンは好きだけど。だから演奏したくないんですよね、人前で。だからVirginal Variationsは理想形に近い。実際、やっててすごく楽しかった。

実際は演奏者をコントロールする立場ですけど、機材をいじくる感覚があるとか?
割とあるかもしれない。言ってしまうと、今回の演奏のランダム的な要素とか、コードを展開させてシーケンスが進んでいく手法って、機材でもできる。だけど、それを生楽器でやる意味もある。人間だからそれぞれが影響され合ってるんですよ。基本的には決まってるけど、決まってるなりにどんどんずれていく。そのずれ方によって、また弾き方が変わっていく。そこは指示しなくても、それぞれが考えてやっている部分で。みなミュージシャンだから、全体の音楽をこうした方がいいっていう共通の考えがあって、それが勝手に反響し合う。それが、新鮮というか。

今回のプロジェクトを日野さんはプロトタイプって呼んでいますよね。プロトタイプっていうことは、今後進化していくということなんでしょうか?
もしかしたら、永遠にプロトタイプかもしれないし、永遠に成長していくってことかもしれない。Virginal Variationsはこれで完成とするには違和感があって、ある程度流動的で演奏によって変わるというものを作りたいと思っています。フレーズは決まっているものの、楽器は厳密に決まってなくて演奏者の裁量で曲を進行させていくというテリーライリーの「in C」という曲があるんですけど、Virginal Variationsでも集まった楽器によって最適なフェーズを当てはめ、フェーズの順番を変えてもいいというものにしたいと思っています。「今回のVirginal Variationsではフェーズが10あるうちの3~7で構成する」というような感じで。毎回新しいフェーズを考えるだろうし、終わりがあるのかは分からない。もしかしたら「これが完璧でそれ以上のものは無い」と思ったら流動的にしないかもしれないけど。 ただ今回「プロトタイプ」とつけたのは失敗だったかもしれません。感想を見たり聞いたりする限りでは「プロトタイプだから」というイメージが先行してしまって、はなから「まだ完成ではない」と思われてしまったのが残念で。大阪の初回の演奏はまだまだ粗削りで、はっきりとビジョンが見えていなかったので「未完成」ではあったと思います。でも今回の東京公演は成長途中ではあるけどひとつの完成した作品だと思っています。

これからの新しい展開も考えてる?
それはVirginal Variationsに限らず、いろいろあります。YPYに関しても新しい展望もあるし、goatに関してもある。これから自分のタイミングでやりたい事をどんどんやっていこうと思っています。前回とは違うものをやりたいという気持ちが強い。だから次やる時はどれでも、また新しくっていう感じですね。

日野浩志郎
goat、bonanzasという二つのバンドのコンポーザー、リーダーを務める。ソロ名義YPYでは、ダンスミュージックをリリース。また、カセットレーベル〈birdFriend〉を主宰するなど、精力的に活動。新プロジェクトVirginal Variationsを発足した。

Virginal Variations 第二回東京公演
“VERSIONS” Date: 2016/9/22 (Thu) @UNIT/UNICE Open/Start: 15:30
Line up: CARRE / Chris SSG / COMPUMA & 竹久圏 / hakobune / Hino Koshiro plays Virginal Variations / John Elliott / Madegg / 山本精一 / UNKNOWN ME (やけのはら / H.TAKAHASHI / 大澤悠大) / 行松陽介
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Eco Futurism Corp: A video for
РИЗОМА

オーストラリアを拠点に活動する〈Eco Futurism Corp〉より、最新ミュージックビデオが届いたので、紹介したいと思います。

HERBARIUMのトラック「РИЗОМА」のために作られたこのビデオは、チェコの映像集団LOLLABによる制作。パステル調のコンピュータグラフィックによるそのイメージは、人間の歴史の終わり、そして人が引き起こすかもしれない大災害を抽象的に表現している。無菌カバーに保管されているのは突発性と自然らしさの象徴で、カバーが破壊されることにより、自然と技術の進歩に新しい自由が与えられ、新たな秩序が生まれるというストーリーになっている。

Eco Futurism Corp〉はLORD Øが、最近立ち上げたばかりの新鋭レーベル。メンバーとして、HERBARIUMtropical interfaceSHYQAGem Theesouleetsなどを擁し、DJWWWW も参加のHERBARIUMのミックス「ГЕРБАРИЙ 植物標本集」や、CVNとのコラボ作などもあり、日本勢との交流もあるよう。自然主義的な音響とグライムビートの融合を、彼らは「エコ・グライム」と呼ぶ。その世界観は、バイオロジカルな未来像をベースとしていて、一貫した思想とビジュアルメイキングでその世界観を伝えている。彼らは自然回帰のユートピア思想を発掘し、それを資本主義のコマーシャリズムと融合しようとしているようにみえる。それはハッシュタグで作り出された新しい種類のファンタジーである。

以下は、〈Eco Futurism Corp〉より寄せられたコメント。

HERBARIUMの“DIVINE HERBA”は、未来にかすかな光を提供し、デジタルユートピアを信じている、エスプレッソを飲む者たちの研究を提供する。ポストグライムとJim Ferraroのもっともテクノ楽観主義な、商品通の音色のボキャブラリーを用いて、6つの生物発光するトラックが細工された。それはクラブのリズムの刺激、静けさ、自然肉体技術のシナジーが吹き込まれた、不吉で誰も住まない重厚なサウンドデザインに生息している。Wifiがジャックされたクラブを想像してみてほしい。そこではダンサーが、環境に優しいスムージーをちびちび飲み、クロックスで歩き回り、植物が注入されたハイパーリアルな都市の景観の集合夢を共有しているのだ。」

この映像のトラック「РИЗОМА」は、HERBARIUM「DIVINE HERBA: EXTENDED」に収録。デジタルおよびテープで〈Genot Centre〉より6月5日に発売される予定。オリジナルは〈Eco Futurism Corp〉からデジタルで発行されており、今回のカセット版は、そのオリジナルリリースを再解釈したシリーズが含まれている。参加アーティストは、〈Eco Futurism Corp〉関連ではGem Theesouleetstropical interface。また、〈BEER ON THE RUG〉周辺のPercival Pembrokedizzcockなど〈Genot Centre〉関連のアーティストや友人たちも参加している。

HERBARIUM「DIVINE HERBA: EXTENDED」
https://genot.bandcamp.com/album/divine-herba-extended

Eco Futurism Corp
Soundcloud https://soundcloud.com/eco-futurism-corp
Bandcamp https://eco-futurism-corp.bandcamp.com
Blog http://eco-futurism-corporation.tumblr.com

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Emilio Gomariz: Returning Folders & Vertical Desktops

Mac上のフォルダやアイコン等をプログラムにより操作し、変容する瞬間を切り取ったグラフィック/映像作品を生み出すEmilio Gomarizの「Macintosh Lab」シリーズ。この作品は、『MASSAGE 10』のために特別に彼が作ってくれたもので、本誌にはこの動画をキャプチャーしたものが掲載された。キャプチャーは誌面のデザインに映えるように、縦長で制作されている。この作品ではディスクトップのフォルダを素材とし、そのパターンと動きを切り取ることにより美しい効果を生じさせている。動きも効果もMac OSの由来の機能を利用し、スクリーンの向こう側をサイケデリックなヴィジュアルアートへ変換する。Emilioによる解説をお届けする。

この作品はフォルダがドックへ縮小される前と、それがデスクトップエリア外に配置された時の、フォルダのウィンドウの位置を記録して再生したものである。背景色に水平のグラデーションが設定された複数のフォルダは、デスクトップの幅よりも水平に大きく拡大され、ドックから離れた位置に配置される。これにより、フォルダ画面が遷移する様が記録され、複数のフォルダをオーバーラップさせることで、フォルダが行ったり来たりするアブストラクトなアニメーションのヴィジュアルエフェクトを作り出す。今回、MASSAGE誌のために、「Macintosh Lab」から新しい作品をつくった。それが、「Vertical Desktop」だ。ここにある5枚のスクリーンショットにより、デスクトップ上でジニ―エフェクトにより様々な方向からフォルダがドックへ縮小される瞬間を切り取るだけで、アブストラクトな表現が可能であることが検証された。

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「Vertical Desktops」は複数のフォルダがドックに縮小化されるのと同時に、新しい複数のフォルダをつくりだす。このプロセスは、もともと1つのフォルダで行われていて、それが複数のフォルダになり、色々な位置のドック(下、左、右)に縮小化される。そのため、複数のフォルダはジニ―エフェクト本来の動きで、ユーザーは同時に停止させたり、感覚的に動かすことができる。
フォルダを複数化するアクションは、Macのデフォルトの機能ではなく、OS XのプログラムのTerminalのスクリプトを使っている。「Vertical Desktops」は、2011年にジニ―エフェクトでウインドウを縮小化する時にたまたま起こったエラーにインスパイアされている。それは、「Suctioning」として「Macintosh Lab」に加えられた。
フォルダを複数化して縮小化するアクションは、(例えば、デスクトップ上で)動きを止めるようなアクションは、オペレーティングシステムの仕組みと、デスクトップやフォルダの背景色、ドックの位置、最小化時のエフェクトなどといったユーザー主導型で、GUIへインタラクションできる可能性を示している。

Emilio Gomariz
スペインに生まれ、幼少より日本のアニメやゲームに親しむ。大学でインダストリアルデザインを学んだ後、「TRIANGULATION」というサイトを運営、多様なアーティストの作品を紹介する。自国の情勢悪化を機にロンドンへ移り、Macintosh Labなど一連の作品群を発表。現在はスペインで制作を続ける。

http://emiliogomariz.net

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